警備保障タイムズ下層イメージ画像

クローズUP

特集ワイド リオ五輪警備レポート㊦2016.9.21

東京五輪オフィシャルパートナー2社が視察

セコム(東京都渋谷区、中山泰男社長)、ALSOK(東京都港区、青山幸恭社長)は、それぞれリオデジャネイロ五輪の視察を行った。「2020TOKYO」のオフィシャルパートナーである2社は、4年後を視野に競技会場の警備状況や街の様子などを多角的に確かめた。

セコム 「上空からの警備」主力に

セコムは、Tokyo2020推進本部マネージャー・岡田勇一氏、コーポレート広報部主任・梶谷忠氏を含むメンバーが、競技会場や街などの状況を視察した。

バルーン型カメラ

岡田氏は8月10日に出発して26日に帰国、現地に14日間滞在した。マラカナン競技場をはじめ20の会場に共通する印象を「軍と警察によるマンパワーを最大限に活かす警備体制だった」と総括する。

先進的な技術として“バルーン型カメラ”が採用されていた。高解像度のカメラを搭載して100〜150メートルの高さから会場を俯瞰するもので、岡田氏は選手村に近いエリアとゴルフ会場の2か所で見かけた。

「障害物がない場所で活用されていたようだった。2014年のソチ五輪でもバルーン型は展開しており、上空からの警備はスタンダードになりつつある」と岡田氏はいう。

警備員巡回が有効

会場の防犯カメラは関係者や一般観客が入場するゲート付近を見下ろす形で設置され、入場管理に使われていたようだ。会場を囲む仮設フェンスには、センサーと組み合わせて“侵入検知”を行うようなカメラは見当たらなかった。

しかし軍と警察が頻繁に巡回し、フェンスを乗り越えての侵入は困難な状況だった。岡田氏は「制服部隊によるけん制、抑止効果が最大限に発揮されていた」と振り返る。

こうした固定カメラの死角やフェンス際の状況などを警備側が常時、把握するためには「ウェアラブルカメラを装着した警備員による巡回が有効なのだが」と岡田氏は指摘した。

出入り自由の場

梶谷氏は8月10日に出発し16日に帰国。主にマーケティング面からリオ市街や会場での広告などの様子、オリンピックパークにある「ライブサイト」(大画面の生中継やイベントが行われるパブリックビューイング会場)などを確認した。

ソチ五輪では同様のライブサイトはフェンスで囲まれて入場管理が行われていた。しかしリオでは、兵士と警察官は多数配置されていたが出入り自由だった。

梶谷氏は「誰でも気軽に入れることで場が盛り上がり、物販や展示の効果も上がるように感じた」と話す。

ALSOK 日本選手団施設の警備にも参画

ALSOKはリオ五輪の開催期間中に役員、幹部ら12人が現地で視察した。同社は日本選手団関係施設等の警備業務に、ブラジルの民間警備会社を通じて一部参画するなどの運営支援を行っている。同社営業企画部長兼東京オリンピック・パラリンピック推進室長・吉田浩儀(ひろよし)氏と営業企画部東京オリンピック・パラリンピック推進室課長代理・高山明氏を中心に、リオ市内4地区(マラカナ、バッハ、デオドロ、コパカバーナ)にまたがる競技施設の状況をくまなく視察した。

すぐれた競技場設計

8月5日、開会式が行われるマラカナン競技場の周辺道路は封鎖された。通行できる車は関係者のみで、一般の観客は公共交通機関を使った。開会式が始まると、吉田氏らの席の周囲でブラジルの人々が陽気に踊り出した。やがて“お祭り騒ぎ”が広まり、観客席の通路は踊る人々でふさがれた。「万が一、この状態で非常事態が起きた場合、どのような避難が行えるか」と吉田氏は考えた。

同競技場には幅20メートルのスロープが2か所に設置され、緊急時には約8万人の収容者を15分で会場の外へ避難させられる仕組みとなっている。

開会式が終わった午前0時過ぎ、人々はスロープを歩いて一斉に地下鉄の駅へ移動したが、混乱は起こらず「すぐれた設計に感嘆した」と吉田氏は語った。

目立たぬ“英語”

案内を行うボランティアの言葉はポルトガル語がほとんどだったが、中には「I can speak English」と首にかけたパスに書いてあるボランティアもいた。しかし、この英文は小さいため目立たなかった。

高山氏は「ボランティアは奮闘していたが、全体的な印象としては、観客対応のホスピタリティーの面で課題が感じられた」と印象を語る。

リオ市内には2014年のサッカーワールドカップで安全を守った実績のある民間警備会社などがある。また、ブラジル国民は免許制で銃の所持が認められており、現金輸送などの警備員は銃を携行する。

吉田氏らは空港、駅などで民間警備員を見かけた。自動小銃を持たず制服が軍や警察と違うので確認できたという。

リオ五輪では、当初1万6000人の民間警備員の活用を予定していた。しかし開催直前になって急きょ、予算削減を理由に民間警備員は大幅に縮小された。

実績を重ねていく

警備に関して、想定されたような新しい技術の導入は各会場などで特に見受けられなかった。

吉田氏は「警備の新手法が採用されるまでには、やはりその新手法による警備実績の積み重ねが不可欠になるようだ」との見方を示す。

同社は警備員とウェアラブルカメラなどのICT技術と連携させた同社独自の高度な警備「ALSOK ゾーンセキュリティマネジメント」の取り組みを進めている。「将来に向けて警備の実績を重ねることが大切と思う」と吉田氏は述べた。

警議連会合 積算価格上昇を確認2016.9.21

「警備員費用は直接工事費」

「警備業の更なる発展を応援する議員連盟(警議連)」(会長=竹本直一衆院議員)は9月14日、千代田区永田町の議員会館内で会合を開いた。

竹本会長は「参院選の最中に全国を回った。その際に警備業界の皆さんに集まっていただき、各県の実情・要望を聞いてきた。<公共工事設計労務単価の引き上げが地方で徹底していない、東京五輪の警備に参画したい、社会保険への全員加入という目標をどうこなすか>などの意見が聞かれた。警議連としては、これら問題について業界のことを念頭に役所との調整を図り、“良かれかし”の方法を選んでいく。警備業法の改正も、手を付けざるを得ない状況ではないか」と述べ、警備業界が直面する課題の解決へ向けて、警議連として積極的に取り組んでいく意向を示した。

今回のテーマは、国土交通省が今年4月から行った「公共事業における交通誘導警備員の設計項目変更」について。同省大臣官房官庁営繕部計画課の柊平(くいびら)健・営繕積算企画調整室長が、公共工事での交通誘導警備員の費用計上を、“共通仮設費から直接工事費”に変更したことを説明した。

 柊平室長は「これにより積算価格が約10%上昇した。設計労務単価の引き上げと合わせると、平成28年度は27年度に比べ積算総額が約15%増加した」。また、同変更の発注者や建設業界への周知のため、「発注機関向けや建設業界向けの説明会を全国で開催し、現在まで約8000人が参加した」と述べた。

これに対して全国警備業協会(青山幸恭会長)の福島克臣専務理事は「計上方法の見直しは警備業界にとっては画期的なこと」と、見直しを後押ししてきた警議連と見直しを実行した国交省に感謝の言葉を述べた。

また、福島専務理事は同見直しを受け、都道府県警備業協会と傘下加盟員に対して、4月5日と9月12日の2回にわたる周知、同見直しを加味した適正な警備料金の確保へ向けたユーザーへの働き掛けの指導――などを実施していることを明らかにした。

このほか、警議連メンバーからはさまざまな意見が寄せられ、国交省・柊平室長や警察庁の鈴木三男・長官官房審議官(生活安全局担当)、同生活安全局生活安全企画課の野地章・犯罪抑止対策室長が、それぞれの省庁の対応を説明した。