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クローズUP

「2017広島」へ
全警協・青山会長がアピール2016.10.21

APSAインドネシア

アジア13か国の警備業協会と団体で構成する「アジア警備業協会」(略称APSA、ワロップ会長=タイ)は10月11~13日の3日間、インドネシアのジョグジャカルタで「第23回・APSA総会及び国際会議」を開催した。日本からは全国警備業協会・青山幸恭会長を団長とする8人(表参照)がAPSA日本支部代表として出席した。

日本がAPSAに正式加盟して3度目の参加となった今回は、開催国インドネシアのほか、タイ、インド、マレーシア、シンガポール、中国、ベトナム、新たに加盟したネパール、マカオの計10の国と地域、各々の警備業界を代表する約90人が参加した(韓国、フィリピン、香港は欠席)。

会合のメインとなる総会は初日に開催された。日本支部の青山団長は、映像を使って「日本の警備業の概要」と「APSA広島総会」などについて英語でアピールした。

「2017年APSA広島総会」の概要

【開催日】2017年9月13日(水)~15日(金)

【会場】グランドプリンスホテル広島(広島市)

【スケジュール(予定)】

1日目=総会、ウエルカムカクテル(歓迎会)

2日目=オープニングセレモニーをはじめとした基調講演、セミナーおよびガラ・パーティー(祝宴会)

3日目=オプショナルツアー、世界遺産「安芸の宮島」など視察

チラシで「広島総会」をPR2016.10.21

APSA

インドネシアで開かれたAPSA総会。議事は以下の順で進められた。

(1)エイブラハム氏(APSAインドネシア会長)の歓迎スピーチ。

(2)ワロップ氏(APSAインターナショナル会長=タイ)による開会挨拶。

(3)ネパールとマカオの両会長から新規加盟の挨拶。

(4)会計報告(各国の会費納入状況など)。

(5)APSAインターナショナル新会長と新役員の選挙、同新会長の就任挨拶。

(6)各国の活動状況報告。

(7)問題提起と議論。

(8)2018、2019年のAPSA総会開催国。

(9)APSAインドネシアから各国会長へ記念品(民族衣装・パティック)贈呈。

(10)各国の記念品交換。

日本支部は、青山会長が映像を使って日本の警備業の概要を説明した。来年の「APSA広島総会」についてはチラシを配布し、概要を紹介。各国から一人でも多くの関係者が参加するよう、呼び掛けた。

各国代表による議論の中で、APSAの定義変更が行われた。従来のAPSAは「Asian Professional Security Association」の略称。これを「Asian Pacific Security Association(アジア太平洋警備業協会)」に改定することが検討され、決定した。今後は環太平洋地域を含む広範囲の国・地域が対象となった。

来年の日本総会以後の開催国として、2018年にタイ、2019年はネパールが立候補し決定した。

役員改選については、昨年、任期(3年)満了となったAPSAインターナショナル会長ついては選挙の結果、ワロップ氏の2期続投が決まった。その他のAPSAインターナショナル新役員は次の通り(敬称略)。

【新副会長】エイブラハム(インドネシア)【監査】シブ(インド)、ジョセフィン(マレーシア)【事務局長】ノーマン(中国)【会計】パットチャラジャン(タイ)

セミナーと展示会も

12日・13日の2日間にわたって各分野の専門家によるセミナーが別会場で開かれた。演題は「サイバーセキュリティー」「国際テロ対策」などに関するもので、初日に基調講演と5セミナー、2日目に6セミナーが開催された。セミナー会場の隣りでは4社がブースを出展し、監視カメラなどセキュリティー機器の展示会を行った。

特集ワイド 最近の労働事件から学ぶ 警備業労務管理のポイント2016.10.21

「休憩」「仮眠」適正に

東京地裁判決での警備員の休憩時間についての新たな判断、36協定を上回る時間外労働の実施による送検――。最近の労働事件から、警備業の労働時間管理など労務管理の留意点を考える。また、警備の現場で活躍する社会保険労務士の髙木雄太氏(キステム)に、専門家の立場から労務管理のポイントを聞いた。

「協定」超えで送検

今年7月、静岡・浜松労働基準監督署は、県内の警備会社と同社社長を労働基準法違反の容疑で書類送検した。

同社は従業員との間に時間外労働に関する労使協定(36協定)を締結し、法定労働時間を超える時間外労働を可能としていた。しかし、協定で定めていた時間外労働の延長時間を超える時間外労働を行わせていたことから、労基署は会社と社長を労働基準法第32条第1項の違反の疑いで書類送検した。

会社が、従業員に法定労働時間(1日8時間、1週間40時間)を超えて時間外労働を行わせることができるのは、労使が労働基準法第36条で定められた協定(いわゆる「サブロク協定」)を締結した場合のみ。たとえ会社が従業員に対して、時間外労働についての割増賃金を全額支払ったとしても、同協定がなければ労基法違反となる。

36協定締結によって延長できる時間外労働は、一般的の従業員は1か月45時間・年間360時間、3か月を超える1年単位の変形労働時間制の対象の従業員は1か月42時間・年間320時間などといった具合に、延長時間の限度が定められている。

ただし、年末や年度末のような業務繁忙期など「臨時的」に、限度時間を超えた時間外労働を行う場合には、「特別条項付きの36協定」の締結で、限度時間を超えた時間外労働が可能となる。

36協定の締結に際しては、(1)時間外労働の実施が必要な具体的な理由(2)時間外労働の実施が必要な業務の種類(3)時間外労働の実施が必要な従業員の数(4)1日ついて延長できる時間(5)1日を超える一定の期間について延長できる時間(6)有効期間――など詳細な事項(特別条項付きの場合には、さらに詳細な要件あり)を、従業員の過半数で組織する労働組合と、そのような労組がない場合には、管理監督者などを除く過半数を代表する従業員と協定し、有効期間の開始までに労基署に届け出ることが必要だ。

東京地裁が「新判断」

東京地方裁判所は7月、長時間労働で脳内出血を発症した警備員の労災認定で、休憩時間について新たな判断を示した。

発症した警備員は、休憩中に敷地内の食堂や喫煙室へ行くことは可能だったが、緊急時の対応のために敷地の外へ出ることが許されず、常に無線機を携帯することが求められていた。

裁判所は、「常に無線機を携帯させ、敷地外にも出さないのは、労務提供が義務づけられている実質的な待機時間」とし、休憩時間を労働時間として認定。発症1か月前に100時間を超える時間外労働の実態が判明したため、裁判所は警備員の脳内出血発症と長時間労働との因果関係を認め、労災認定が妥当との判断を下した。

同裁判で注目すべき点は、「休憩時間が労働時間」と見なされた、脳内出血の発症が長時間労働に起因するとし、労災として認定された――の2点。

「休憩」について労働基準法は、第34条で労働時間が6時間を超える場合には少なくとも45分、8時間を超える場合に少なくとも1時間の休憩時間を、労働時間の途中に与えることを義務付け、(1)原則として一斉に与える(2)休憩時間は自由に利用させる――と、その付与方法についても規定している。

しかし、現場での緊急時の対応がある警備業では、休憩時間や夜勤での仮眠時間をめぐり、過去、さまざまなトラブルが発生してきた。

仮眠時間を労働時間と認めた判例には「大星ビル管理事件」がある。同事件では、仮眠時間中であっても、警報が鳴った際に直ちに必要な業務実施が義務づけられていたため、実際に作業がない仮眠時間も含め、使用者の指揮命令下に置かれた労基法上の労働時間に当たると判断された。

一方、休憩・仮眠時間を労働時間として認めなかった判例に「ビソー工業事件」がある。同事件は、複数の警備員が交代で休憩・仮眠をとる勤務体制をとっており、突発的な事態にも勤務に就いている警備員だけで対応可能だったことなどから、仮眠・休憩時間は労働時間に当たらないと判断された。

今回の事件では、休憩時間の無線機携帯の義務付けが、〈実質的な待機時間=労働時間〉と見なされた。今後、休憩の与え方には十分な留意が必要だ。

健康への影響に留意

長時間労働が“過重労働”として社会の非難を浴びる理由の一つに「心身の健康への影響」がある。

いまや世界的にも有名となったわが国の「過労死」。直接的な死因は、長時間労働など過重な労働によって発症する脳梗塞や心筋梗塞などの「脳・心臓疾患」だ。加えて、長時間労働で発症する「うつ病」などの精神障害と、これに起因する自殺(過労自殺)がある。

そもそも人間は、主に睡眠によって心身の疲労回復を図ることができる。しかし、長時間労働によって十分な睡眠が得られないと、疲労の蓄積が進み、脳・心臓疾患や精神障害を発症する可能性が高くなる。

これまで多くの労災認定においても、脳・心臓疾患などの発症直前の労働時間が重視されている。特に100時間を超える時間外労働があった場合に、「過労死」や「過労自殺」などの労災と認定されてきたのはこのためだ。

厚労省が平成18年に出した通達「過重労働による健康障害防止のための総合対策」では、月100時間超または2?6か月平均で月80時間超の時間外・休日労働で、健康障害のリスクが高くなると指摘。会社に対して、時間外や休日労働時間の削減に加え、これら従業員のうち、申し出を行った人には、医師による面接指導を行うよう求めている。