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クローズUP

東京警協に「青年部会」2017.4.21

全国で14番目の発足

東京都警備業協会(白川保友会長)は4月7日、「青年部会発足式」を協会内で開催した。東京五輪・パラリンピックを見据えながら、人手不足など警備業界の諸課題への対策を講じることを目的に活動する。部会長の安見竜太氏(43、シンテイ警備常務取締役)以下17人の部会員に、中山泰男副会長=総務委員長=が委嘱状を手渡した。青年部会の発足は1月の鹿児島県警備業協会(上拾石秀一会長)に続いて全国で14番目。

東京警協は昨年12月の理事会で青年部会の設置構想を承認、4月1日に発足した。都内8地区の担当理事が推薦した17人は、平均年齢が39.8歳だ。世代交代が進み、人材の確保と定着、職場環境の改善や対外的な警備業のアピールなどがより重要となる中で、阿部秀樹担当理事(JTS代表取締役)のもと、<若い感性を活かす新たな取り組み>がスタートした。

安見部会長は、次のように決意表明した。

「半世紀余の中で大きく発展してきた警備業が、今後もユーザーや国民の期待に応えて社会の信頼を確保していくためには、業務の見直し・改善や将来に向けた先行対策の推進など不断の努力が必要不可欠です。私たちは行動力と柔軟な発想、熱い情熱を持ってさまざまな課題に向き合い、期待に応えられるよう精進します」。 

〝総会〟シーズン始まる2017.4.21

関東地区連、まず先陣

新年度入りしてからの3か月間、全警協をはじめ各地の地区連、都道府県警協の総会が相次いで開催される。向こう1年の<取り組むテーマ>と<問題解決の指針>などを共通認識して警備業のステータスを高めることを目指す会合だ。そのトップを切って4月13日、関東地区警備業協会連合会(島村宏会長)の「29年度通常総会」が長野県千曲市であった。

会議には10県の警協会長と専務理事が出席。全警協から福島克臣専務理事、小澤祥一朗総務課長が出席した。島村会長(茨城県警協会長)は、今春の3月末が期限となった「社保加入」と「適正料金の達成」に言及して次のように述べた。

「社保問題は各社の努力がうかがえるが、全てが達成とは言えず道半ばではないか。引き続き真摯に取り組んでもらいたい。適正料金は、まだまだ満足すべきものではない。職場環境と処遇の改善を推進しなければならない」。

3年後の東京五輪・パラリンピックについて「会場の大半が関東地区にある。出席の皆さんには、リーダーシップを発揮して安全で安心な大会の運営に寄与してもらいたい」と述べた。

福島専務理事は「社保未加入社は4月以降、多くの警備業務の受注から排除されることが予想される。厚労省は未加入の取り締まりを一層強化する意向だ。警備料金の適正化による経営基盤の強化が不可欠であり、皆さんのご協力をお願いしたい」と呼び掛けた。

また、全警協の基本問題諮問委員会の〈社会的地位向上策・警備員不足対策〉の最終報告書を6月7日の定時総会で諮ることを報告。全警協として、可能な限りの支援を行うことを明言した。

特集ワイド 料金交渉の成功例2017.4.21

岐阜県警備業協会(幾田弘文会長)が4月14日に開催した「警備業営業担当者研修会」では、協会加盟員4社の営業担当者が料金交渉の成功事例を報告した。各社では、交渉相手の圧力に屈せずにどのような手法で適正料金の確保に成功したのか、4人が発表した内容を紹介する。

美和警備保障 代表取締役 渡辺英治さん

当社は多治見市で、1号・2号業務を行っています。私は平成12年に建築業から警備業に転身し、その時の第一印象は「建設業に比べて単価が安い」でした。疑問を感じて発注元と料金交渉をしましたが「他業者より高かったら発注しない」と言われ、立場の弱さを痛感しました。

ある経営者から「単価を上げたら受注先が2割減ったが売上は上がり、管制業務が楽になった」と言われ、“ここが勝負”と開き直って交渉することにしました。国交省のサイトから資料をダウンロードし、ほかの経営者からいただいた資料も併せて持参し交渉したところ、料金アップに漕ぎ着けたのです。多治見市は地方都市で、激戦区の岐阜市に比べて交渉しやすかったのかもしれません。

社会保険未加入が問題になったときに当社は加入促進を進め、社会保険事務所へ足を運び社員全員の資料を出して、加入率100パーセントの“お墨付き”をいただきました。今はそれを武器に、「当社は多治見市で一番料金が高いですが、社保に全員が加入しています」と話すと、発注を受けられるようになりました。

売上は直近5年間で変わっていません。しかし社保の会社負担分を支払った上での数字ですから、実質上がった状況です。繁忙期に人手がなくて仕事を断ることもありますが、「人がいません」ではなく「その料金では受けられません」と断ることで状況が変わっていくことも実感しています。

今は地元の東濃地域で、警備料金の具体額までは出しませんが可能な範囲で他社と情報交換をしています。そして、他の地域にも広くつながりを持つようになりました。ネットワークができることで県内全体の警備料金が上がり、よい状況になると思います。

セキュリティー 執行役員警備総括部長 後藤公一さん

昨年9月から、当社ではあるクライアントとの取り引きを続けるべきか、検討を重ねてきました。作業が継続的にある点は有り難かったのですが、現場では一人一台の車両を使用することが基本で、一日に現場を何か所も移動し100キロ以上も走行することから車両全般にかかる経費が大きく、交通事故などのリスクもありました。そうした状況にもかかわらず、警備料金は当社として低い単価でした。検討の結果、平成29年度以降は「継続しない」という結論に達し、書面で通知しました。

しばらくして先方の担当者から「単価を上げたらまたお願いできますか」という申し入れがありました。そして時期を一か月遡った今年2月21日から20パーセント、3月21日から10パーセントと、料金は2段階で30パーセント上がり、作業を継続することになりました。

営業活動する中で「料金アップをお願いしたら仕事が来なくなるのでは?」という不安があると思います。しかしそれを恐れていたら永遠に単価アップにつながりません。

技研サービス 警備事業部次長 早川裕子さん

当社の業務は、施設警備70パーセント、交通誘導警備30パーセントです。交通誘導に関しては労務単価が上がった、社会保険に加入する、などの名目で交渉しています。昨年10月から短時間労働の従業員であっても社会保険の加入が義務化され、会社側の負担分を考えると単価を5000円上げないと合わないのですが、せいぜい2000円しか上がっていないのが実情です。

新規のお客さま、特に繁忙期は若干高い料金でも納得してもらえますが、既存のお客さまはアップすると契約を切られる恐れがあって言い出せないことがあります。既存のお客さまに対し、継続して料金交渉を続けていくことが今後の課題です。

施設警備については官公庁の競争入札で、最低賃金から割り出した適正金額を提示していますが、十分な警備員教育を行っているのか、社会保険に加入しているのかと疑うほど、安い金額で落札されることがあります。

努力が実って高い警備金額で契約してもらえた場合に、それに見合う“質の高い警備”を提供できないのであれば、交渉のスタート地点に着くべきではないと思います。料金交渉の前に警備員の育成やフォローを十分とれる体制を作ることが、まず先決です。

アイ・エイチ・アイ 取締役支店長 小鳥治さん

私は交通誘導警備員として現場を経験し、現在は支店長として約20年間、料金交渉を続けてきました。

交通誘導警備員の公共工事設計労務単価は、平成8年まで「軽作業員」の枠で約1万3000円でしたが、「交通誘導警備員」の枠となって約8000円まで落ち込みました。以後、安くしないと仕事をもらえないと自分たちの首をどんどん締めていった“負の歴史”があります。

警備会社にとって追い風は社会保険未加入問題を含め、何度かありました。警備業法改正で配置基準が設定され、交通誘導業務に付加価値を設けていただきました。労務単価は、長く続いた下落からここ数年上向いたことはありがたく、国交省から出ている数字なので営業ツールとして説得力があります。