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五輪組織委 1都3県警協で説明会2017.12.21

「オールジャパン警備」JVで

東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会(会長=森喜朗元首相)は、2020年の東京大会で競技が集中する1都3県の警備業協会で「警備運営説明会」を相次いで開いた。説明会が行われたのは千葉(12月8日)、埼玉(同11日)、東京(同13日)、神奈川(同19日)の各警協。既に協会内に五輪対策委員会を設置している東京と千葉の両警協は同対策委メンバーが、未設置の埼玉と神奈川は協会役員と理事などが出席した。

大会組織委の今井勝典警備局長が大会概要や警備概要などについて説明したほか、2015年に同組織委とスポンサー契約「オフィシャルパートナー契約(セキュリティサービス&プランニング)」を締結したセコム(東京都渋谷区、中山泰男社長)とALSOK(同港区、青山幸恭社長)が今年10月4日に立ち上げた大会警備共同企業体発起人会の担当者が、共同企業体(JV)についての考え方などについて説明した。

最近の大会では、2012年のロンドン、2016年のリオの両大会で、当初は民間警備会社が警備を担当したものの、警備員不足や警備の質への課題などから、大会直前に警察や軍を中心に警備態勢が再編されるなど警備でのトラブルが相次いだ。このため東京大会では、スポンサー契約に基づく警備業務の優先供給権を持つセコムとALSOKを中心に“オールジャパン”の態勢を目指す考え。民間警備会社がJVを編成して五輪・パラリンピック警備に当たるのは史上初の試みだ。同発起人会は来春にもJVを設立して参加企業を募る予定だ。

警備業今年のニュース102017.12.21

2017年は警備員不足が深刻となり、自家警備問題が波紋を広げた。一方、2号業務の労務単価が上昇傾向にあることからユーザーから適正料金への理解が得やすくなり、またAPSA広島大会が成功するなど明るいニュースがあった。「2020東京大会」まであと2年半、来年は警備業への準備が迫られる。今年の警備業に関わるニュースを紹介する。

自家警備問題 業界に動揺広がる

国土交通省は6月、総務省との連名で「交通誘導員の円滑な確保」を全国の自治体や建設業団体などに通知した。

通知内容は、適切な積算や適切な工期設定、施工時期の平準化に加え、発注者(自治体)、建設業者、警備業者、警察などが参画した「交通誘導員対策協議会」の設置を求めるというもの。なかでも同対策協には、交通誘導警備員が不足し公共事業執行に支障が出てきていることから、建設会社職員による交通誘導「自家警備」実施のための条件整理を求めた。

同通知を受けて全国、特に交通誘導警備を行う警備会社では仕事が失われるのではないか、と動揺が広がった。一連の警備業界の動きを受け、9月に国交、警察の両省庁が「6月通知は自家警備を奨励するものではない」とする補足通知を出した。

「警備の日」取り組み広がる

「11月1日・警備の日」の広報活動は、業界の認知度アップが課題となる中、各地で活発に行われた。制定3年目を迎えてPRの方法も多様化。2回目となる岐阜警協の「作文・写真コンクール」に続いて、群馬警協は初の「書道展覧会」を開催。関係機関の協力を得て小・中学生から276点もの応募があった。愛知警協の青年部会は、アイドルを起用して商店街でイベントを開き、集まった人にクイズ形式で警備業をアピール。また、福井警協は、路線バス4台に横断幕を取り付けて約3週間にわたって広報した。警察と連携して「振り込め詐欺防止&警備の日」を同時に呼び掛ける取り組みも広がっている。

APSA広島大会 日本、初のホスト国

「アジア太平洋警備業協会(APSAインターナショナル、ワロップ会長)は9月13〜15日、広島市内で「第24回APSA国際会議広島大会」を開いた。

日本支部(青山幸恭支部長)が初めてホスト国となり、7か国が参加した。同大会の国際会議オープニングで、安倍晋三首相と小此木八郎国家公安委員長がビデオメッセージを寄せた。APSA支部による活動報告や基調講演、アトラクション、ブース出展、オプショナルツアーなど、盛り沢山の3日間となった。広島警協(橋本満会長)や全警協などスタッフの尽力により、盛会のうちに終了した。

警協が警察、自治体と協定

山口警協は県警との間で「テロに強い安全・安心まちづくり協定」を結んだ。茨城警協は「安全なまちづくりの推進に関する協定」を、栃木警協は「地域安全活動に関する覚書」を、鹿児島警協は「ドライブレコーダー記録データ等の情報提供に関する協定」を、県警と締結。岡山警協が県警と結んだ「犯罪の起きにくい社会づくりの推進に関する協定」には、特殊詐欺の被害を防止する活動が盛り込まれた。

また、群馬警協は前橋市と「災害時における地域の安全確保等の協力に関する協定」を、千葉警協と栃木警協は鳥インフルエンザ発生時の対応などの「防疫協定」を締結。防犯・防災に警備業が担う役割は大きく、官民連携による取り組みが進む。

「働き方改革」千葉地裁判決に注目

政府の「働き方改革」へ向けた動きが本格化した。厚生労働省は、労働基準法など全8本の関連法の改正へ向けた作業を進め、年明けの通常国会に提出する予定。なかでも、週40時間を超えて可能な時間外労働の限度を、原則月45時間かつ年360時間とし、労使協定を締結しても上回ることのできない時間外労働時間を年720時間(月平均60時間)とする時間外労働の“上限規制”は今後の警備業界の課題だ。一方、5月には千葉地裁が、1人勤務の夜間警備などでは「休憩時間と仮眠時間も労働時間」という判断を示した。労働時間への関心が高まる中、警備業の動向が注目される。

厚労省が人材確保支援 雇用管理改善事業も

厚生労働省は3月、都道府県労働局に対して警備業への人材確保対策の実施を通達した。同省が警備業の人材確保への支援策を打ち出したのは、昨年2月に続き2回目。求人者(警備会社)への支援では、都道府県労働局の筆頭ハローワークなどで就職説明会(セミナー)、就職面接会と事業所見学を同時に行う「ツアー型面接会」を行い、特に「ツアー型面接会」は、4半期ごと1回の年4回の実施をハローワークに求めた。これを受けて愛知や熊本などではツアー型面接会が行われた。

また、雇用管理改善事業に警備業を追加、全国の警備会社19社に対する労務管理改善へ向けた支援を開始した。

施設警備の労務単価 全警協が改善に着手

全国警備業協会(青山幸恭会長)は作業部会を設置し、施設警備業務の建築保全業務労務単価改善に取り組んだ。

国交省は業務提供に実際にどの程度の経費をがかかるのか把握するため、5年に1度の諸経費実態調査を行った。保全業務の積算基準に関わる重要な調査であることから、全警協はコストを漏れなく確実に回答するよう会員各社に連絡した。

ここ数年、2号業務の公共工事設計労務単価は上昇傾向にあるが、建築保全業務労務単価は停滞状況にある。全警協は今月、警備業務適正化小委員会を立ち上げ「施設警備の標準見積書」作成を進める。

各県警備業協会が法人化30周年式典開く

宮城県、新潟県、福島県、長野県、茨城県、和歌山県の各警備業協会は法人化30周年を迎え、記念式典を開催した。各警協会長は次の主旨で抱負を述べた。

▽宮城警協・千葉英明会長「困難には正面から堂々と取り組む」

▽新潟警協・野澤慎吾会長「一致協力して課題に取り組み安全産業の使命を果たす」

▽福島警協・竹田憲吾会長「より質の高い安全・安心の提供を図る」

▽長野警協・竹花長雅会長「会員各社がレベルアップし団結してハードルを超えていく」

▽茨城警協・島村宏会長「時代の要請に対応し一層安全で安心できる警備業務を提供する」

▽和歌山警協・山﨑雅弘会長「課せられた共通の課題に協会員が心を一つにして取り組む」

青年部の設立進む 女性警備員に愛称

青年部会設立の動きは今年も各地に広がった。1月に鹿児島、4月に東京と山形、6月に山梨、11月に沖縄の各警協で発足し、全国で17を数える。深刻化する人手不足対策の一環として警備業のイメージアップ、業界の魅力発信に向けて若い感性と新しいアイデアに期待が集まる。

女性警備員の愛称は「警備なでしこ」に決まった。これは東京「すみれ会」、大阪「ひまわり会」、福岡「あやめ会」の3女性部会が、初の合同会議を7月に大阪で開くなどして進めてきたもの。警備現場に女性のニーズが広がっていることを周知するとともに、雇用拡大につなげる環境づくりが急務となる。

春の叙勲 警備業から2人受章

平成29年度・春の叙勲が4月29日に発表され、警備業から前愛知警協会長の松本圭一氏(70)と幾田弘文氏(70)が旭日双光章を受章した。松本氏は「この上ない栄誉であり、改めて身の引き締まる思いです」と感想を述べた。幾田氏は「警備業協会での与えられた役割を果たすべく、これからも警備員の地位向上のために尽力していきたい。感謝の気持ちでいっぱいです」と語った。警備業からの叙勲受章者は21人となった。

  

東京オリ・パラ 足踏み続いた組織委

東京オリンピック開幕まで「あと946日」(12月21日現在)――カウントダウンは日一日進むが、警備業界のもどかしさはカウントアップするばかり。「1000日を切れば具体策が見えてくる」の思いはどこへやら。組織委は年末にようやく1都3県警協で「警備運営説明会」を開催。来春にも「JV」が設立され参加企業の応募が行われる予定になった。

組織委は来年の初夏をめどに、各競技会場の必要警備員数を通知できるという。組織委会長、五輪担当相、都知事さんには、現状を把握してリーダーシップを発揮してもらいたい。深刻さを増す人手不足のなか、警備業界の五輪警備は「隔靴搔痒」のうちに年越しと相成った。