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「働き方改革」我が社の取り組み2017.12.21

金澤慶太さん(旭警備保障 代表取締役社長)

3か年計画で賃金見直し

――警備業界で今、働き方改革が求められています。

業種に限らず全ての企業は「法冷に基づいた経営」を目指すべきで、警備業においては「経営者の意識改革」が重要です。しかし一企業のみの努力では、なかなか変えていくことが難しい問題であり、業界を挙げての取り組みが必要です。当社は2号警備が主業務ですが、長時間労働、非正規・正社員の格差、警備員不足・高齢化と、現在3つの課題に取り組んでいます。

長時間労働の改善に向けて、お客さまと業務時間・休憩時間について地道な交渉を続けています。格差是正に関しては、「同一労働同一賃金」を実現すべく、非正規社員から正規社員への登用を積極的に図っています。

――3番目の課題「警備員不足」は、全国的に問題になっています。

警備業だけでなく全ての業種で人手不足は大きな課題であり、来年は更に加速しそうです。人口減少が進むなか若年層の確保は限界があることから、当社では高齢者の就業促進を図り、雇用延長に取り組んでいます。具体的には、定年制を廃止する方向で手続きを進めているところです。

――募集しても応募がない状況では、会社を辞めさせない努力が必要です。

ハローワークを中心に募集を行っていますが、効果が薄いのが現状です。そこで社員の定着を図るため、賃金は高齢者も含め年齢によって差をつけないこととしています。また昨年から3か年計画で賃金の見直しをかけています。

――ベースアップのためには原資が必要です。適正な警備料金を確保できていますか。

当社は営業活動を全く行っていません。営業すると他社とバッティングして価格競争となり、警備料金が下がる悪循環に陥ります。警備員の資質向上に力を注ぎお客さまに評価していただくことで、適正な警備料金の確保に結びつきます。さらにお客さまの横のつながりによって、口コミによる受注拡大を目指しています。

――そのためには、充実した警備員教育が大切です。

警備員が会社の看板となるわけですから、常にお客さまや通行する人たちから「見られる仕事」という意識を持つよう指導しています。教育時には「警備員一人ひとりが営業マン」と伝え、身だしなみから所作に至るまで全てにわたり徹底させています。

警備員教育は、創業当時から「基本動作を大切にすること」を原則に、反復練習に重点をおいています。

――「自家警備」が業界で問題となっています。

愛媛県内では交通誘導員対策協議会は実施されていませんが、警備員不足で公共工事の進捗に支障が出て、3年ぐらい前から建設会社の従業員による自家警備が始まっています。

自家警備は推奨できません。しかし、まだ一般的には行われていない現状では業界にとってむしろプラスと感じています。建設業の関係者に警備業務の重要性を認識してもらい、警備料金の交渉がしやすくなるからです。これはあくまで現時点での話で、浸透してしまうと大きな問題となります。適正料金を確保できる今のうちに各警備会社で経営基盤を整え、人材を確保しておくことが重要です。

――交通事故や転倒などの労働災害が後を絶ちません。何か取り組みは行っていますか。

労働災害防止には力を入れています。職場の潜在的な危険性や有害性を見つけ出して除去・低減するため手法である「リスクアセスメント」を実施しています。当社独自の「危険予知活動表」を各現場で記入し、お客さまにも確認のサインをもらっています。警備員とお客さまの安全への意識が高まり、熱中症対策や休憩時間短縮防止など、業務環境によい影響を与えています。

――金澤社長は学生時代、サッカーに打ち込んでいたそうですね。

高校時代はサッカー部に所属して県大会の決勝まで行き、そのときの相手チームが全国優勝を果たしました。当時はまだプロがなかったことから23歳で当社に入社し、以後、警備業一筋です。

警備員不足もあって現在2号業務の需要は高く、警備料金は上昇傾向にあります。今年は国体が行われ警備業の気運も盛り上がっています。これらの追い風を受けて、新たな年も課題克服に取り組みます。

「働き方改革」我が社の取り組み2017.12.11

若原邦弘さん(奈良保健衛生社 代表取締役)

〝警備とビルメン〟共同で

――警備員の時間外労働や休憩時間の扱いについて、各所で問題となっています。

これは避けては通れない問題であり、警備業は早急に取り組まなければなりません。当社は警備業務のほかにビルメンテナンス業務も行っており、私自身も奈良県警備業協会会長と奈良県ビルメンテナンス協会副会長を務めています。そうした立場に身を置いて感じるのは、「2つの業界が連携する必要がある」ということです。全国警備業協会と全国ビルメンテナンス協会が、解決に向けて共同で取り組まないといけない課題だと思います。

――連携するメリットは何でしょうか。

ビルメンテナンス業の監督官庁は厚生労働省であり、まさに働き方改革の実現に向けて取り組みを進めている省庁であることから理解を得やすいでしょう。

法改正により時間外労働の上限規制などが導入されたことで、警備業についても業務内容の仕様変更が必要です。国に業務についての理解を求め、休憩時間や仮眠時間の扱いを明確にしていくことが求められています。そうしないと近い将来、中小規模の警備業者で働こうとする求職者はいなくなるでしょう。AIを使った“ロボット警備”への移行が加速し、警備員が働く場所が少なくなるかもしれません。

――今年、警備員の休憩時間や仮眠時間の取り扱いについて、訴訟事案がありました。働き方改革を進めるためにはユーザー側の理解も必要です。

まず国の理解を得てから、協会として県や市に要請することが効果的と思います。全警協や県協会が会員各社に周知し、業界全体で連携をとりながら適正料金を得る努力を進めることが大切です。

――そのためには、質の高い警備を提供することが絶対条件になります。

当社では充実した警備員教育を行うことや、検定資格を積極的に取得することに力を入れています。その際に注意していることとして、警備員としての自覚が逆に“上から目線”になったり、言葉がきつく受け取られたりすることがあります。お客さまと同じ立場や同じ目線で見る・考えることの大切さを社員に伝えています。また質問を受けてわからないことは無理に返答せず、担当者に連絡することを指導しています。

――働き方改革には、労働環境を整備して求職者に提示し、人材を確保する目的もあります。

今は募集してもその効果が薄いことから、当社では人のつながりで紹介を受けて、入社につなげているのが現状です。

長く働いてもらうことが重要ですが、会社を辞める理由として最も多いのが「人間関係」であることに着目し、本人の希望を聞きながら可能な範囲で一人の現場、または大勢で勤める現場など勤務地を考えて決めています。

――会社には歴史があります。

当社は来年創業70年を迎えますが、当初から社員の社会保険加入率は高く、処遇面の充実を図っています。

戦後まもなく、警察官だった祖父と父が共同経営者となり、当社を創業しました。消毒を主業務としてスタートし需要に合わせて業務を増やして、今では施設警備・ビルメンテナンス・消毒防除業務のほかに、一般廃棄物・産業廃棄物処理やエコロジー業務、病院等の機械設備管理など、幅広く対応しています。

――若原社長は音楽活動が趣味だとか。

学生時代からバンド活動を行っていて、もはや趣味を超えつつあります。1991年には奈良市の協賛を受けてチャリティーライブを行い、小学校に分別タイプのゴミ箱を寄付させてもらいました。今はボーカルとギターを担当してプロのミュージシャンとライブ活動をしたり、作詞作曲なども行っています。

――奈良県警備業協会は今年、法人化30周年を迎えました。

当協会では特に式典は開催しませんでしたが、6月の定時総会後に30周年記念行事として講師の表彰式を行いました。

私は常々、講師の皆さんにもっとスポットを当てるべきと感じています。11月には講師を集めて慰労を兼ねた忘年会を開きました。私は2年前、おかげさまでビルメン業の永年講師として厚生労働大臣賞を受賞しました。警備業の講師に対しても、今以上に評価される場を作るべく努力しています。