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「働き方改革」我が社の取り組み2017.11.21

鴨志田聡さん(東関東警備保障 代表取締役社長)

問題は会社に報告し解決

――「働き方改革」を政府が進めていますが、警備業も対応が求められています。

当社の経営理念は「会社に関わる全ての人の幸せを創造する」です。仕事とは「人生を豊かにする糧」であるべきと思います。休憩時間や休日の確保、長時間労働の是正など、最重要課題として現在取り組んでいるところです。

警備業が社会全体の働き方改革と同様に対応することは、なかなか難しい状況と感じています。今後はお客さまの理解を得ながら、適正な料金で適正な業務ができる業界を会員が一丸となって構築していく必要があります。

――克服すべき課題は?

当社のメイン業務である1号に関していうと、競争入札の際に低料金で落札する業者もいて、経営者の意識改革が必要です。最低制限価格の設定や総合評価方式の導入など、取り組むべき課題は山積しています。「働き方改革」というと「就労時間の短縮」に結び付ける風潮がありますが、それ以外にも改善すべき点はあります。

――例えばどんなことでしょう。

「高齢者の継続雇用」を推進していて、定年を過ぎても退職しないで雇用延長する社員が多いです。人材確保が厳しい状況ですが年齢に関係なく社員の定着率はよく、その理由は会社が大きく変化しないで、安定を続けてきたからだと思っています。

賃金が「完全月払い」という点も安心できる要素かもしれません。正確には従業員の3分の1が月給で、ほかは日給換算の月払いです。創業以来、日払いや週払いは1回もありません。利益は年度末に給与の3分の1を上限に社員に還元しています。賞与も多額ではありませんが年2回、出しています。

――現場は安心して働ける環境でしょうか。

お客さまは大切にしないといけませんが、あまりに理不尽な要求に従う必要はありません。社員に伝えているのは「問題があれば自分で解決しようとしないで、会社に報告してほしい」ということです。そうすれば会社としてお客さまと話し合い、その結果、料金改定や環境改善につながる可能性も出てきます。

――福利厚生面はどうですか。

社員の半数以上が結婚して家庭を持っていますから、レクリエーションとして「家族参加のバーベキュー大会」を企画したことがあります。

社会保険については、未加入問題が業界の課題となっていますが当社は全員が正社員で、創業時から一貫して加入率100パーセントです。ただし、雇用延長した社員の中には社保加入の条件である月13日に満たない勤務日数に制限をして、未加入で年金を受けながら月10日ぐらい働いている社員はいます。逆に65歳をすぎても希望すれば入ることができ、72歳で加入している社員もいます。

――雇用条件を改善するため、原資が必要です。適正な料金は確保できていますか。

1号業務は、2号と比較して警備料金が上がっていないのが現状です。しかし昨年末、約10年ぶりに値上げ交渉を行ったところ、ほとんどのお客さまに了承していただきました。

私は地域の商工会議所の役員も務めており、他業種の経営者とのつながりがあります。お客さまに困りごとがあればその内容に合った会社を紹介し、頼っていただくことで結び付きを強くしています。もちろんお金をいただくのは警備の仕事だけで、警備員には警備の仕事しかさせていません。地域の仲間と横のつながりを持って仕事するのも、一つの方法です。

――社用車は全て、目立つ配色でオリジナルのペイントが施されています。

10年ほど前に社用車10台にカラーリングを施しロゴマークを大きく表示して、一目で当社の車両とわかるようにしました。評判はよく、広告費をかけるなら“走る看板”の方が宣伝効果は高いと実感しています。

「働き方改革」我が社の取り組み2017.11.1

櫻井実さん(ルミネクリエーツ 代表取締役社長)

営業所で「労務管理」勉強会

――時間外労働や休憩時間の扱いが、警備業でも問題になり始めています。

当社はJR東日本グループの商業施設の管理運営を行う「ルミネ」の子会社として、主にルミネの施設警備を行っています。JR出身者が多いことから時間に厳しく、時間外労働は基本的にさせていません。

各営業所には勤怠管理システムを導入し、休憩時間も含め本社で一括してチェックし管理しています。また営業所に「勤務担当者」を置き、年2回の勉強会を通じて労働基準法など労務管理の知識を学ばせています。勤怠管理は、“管理者の意識”が何より重要ではないでしょうか。

――労災事故の対策は?

転倒などの労災事故を含め、施設内のシャッターやエスカレーター、エレベーターの扱いなど、危険が伴う作業については、定期的に「業務総点検」を行って、チェック項目に従い基本通りに作業を行っているか確認します。

当社は昨年、「警備スキルマニュアル」とその携帯版「警備スキルハンドブック」を作成し、警備を行う社員全員に持たせました。基本に沿った業務を徹底させることで安全確保に務めています。現在は、過去のトラブルとその対策をまとめた「事故事例集」を作成中で、事故の再発防止を図ります。

――求人の状況はいかがですか。

今まではJR東日本からの再雇用が多かったのですが、JRの社員数は減少傾向にあることから一般採用の比率が上がってきています。そこでハローワークで一般社員の応募を始めたのですが、人手不足の状況下で思うように人材確保に至りません。今後は募集ツールを増やすなど、求人方法を検討する必要性を感じています。

――定着に向けた取り組みは?

長期間勤めてもらうためには、何といっても賃金をはじめとする処遇が大切と思います。当社は年定期昇給や年2回の賞与を定めて安定した生活を約束し、一方で昇進・昇格など努力が報われる体制を構築しています。

福利厚生面でいうと、社会保険には当然100パーセント加入していますが、団体生命保険の加入や、JTBの「えらべる倶楽部」に加入しており、社員の家族も含め旅行や福利厚生サービスの特典があります。健康管理に関しては、定期健康診断以外に人間ドックやインフルエンザ予防接種の補助金制度もあります。

年次有給休暇については、社員のモチベーションや健康に関わることですから、しっかりとるよう指導しています。消化率はよく、年20日の年休をほとんどの社員がしっかりとっています。

社員相互の親睦を図るレクリエーションとして、本社や営業所主催のボーリング、バーベキュー大会や、年一回の社員旅行を楽しんでいます。

――現在の定着率は?

75パーセントぐらいです。残り25パーセントのうち15パーセントは、仕事が体力的にきついとか、商業施設という職場の雰囲気が苦手とか、処遇以外の“業務とのミスマッチ”が退職の原因となっているようです。

モチベーションアップのために、当社で開催している防災機器の取り扱いや応急救護のスキルを競う「防災スキル競技会」や接遇を競う「CS実務大会」などで優秀な成績を残したり、表彰を受けた社員など年間40人を、北海道や九州など遠隔地の研修旅行へ行かせています。また毎年1人を、JRやルミネ本社の社員と一週間ほど、米国や欧州など海外の研修旅行に同行させます。

警備員指導教育責任者や1号・2号警備業務1級・2級検定、サービス介助士、上級救命などの各種資格を会社で経費を負担して取得させ、合格すれば手当を付けて資質と意欲の向上につなげます。

――警備料金は、適正に確保できていますか。

原資の確保は社員の処遇に直接関わり、今後は採用にも経費がかかることから値上げ交渉をしたいところですが、発注元の事情もあり、料金アップは簡単ではありません。

――業界で問題となっている「自家警備」に感じることは?

当社の業務は施設警備がメインなので交通誘導には直接携わっていませんが、人手不足を解消できても一番大事な「安全安心」が損なわれ、信頼を失っては何もならないと思います。