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警備業ヒューマン・インタビュー
――現場の声を聞く2019.06.11

植村正治さん(オリエンタル・ガード・リサーチ 代表取締役社長)

減収覚悟で契約解除

――聞くところによると、有名私立大学の施設警備業務で、値上げに応じてもらえず「解約」を申し出たそうですね。

その警備業務を7年にわたって継続してきました。働き方改革関連法の施行により、年次有給休暇の取得義務などで人件費が上昇することを先方に説明して、料金交渉を行いました。しかし、予算の都合から料金アップに応じてもらえなかったのです。

当社は隊員の技能向上を重視し、障害を持つ人への対応など独自の社内研修を行い、教育に投資しています。また、人手不足の中で定着の促進に向けて、利益を隊員に一層、還元しなければなりません。原資の確保は不可欠です。

 現行価格で受注を継続するなら、その案件の赤字状態は改善できません。全国警備業協会が策定した「適正取引推進等に向けた自主行動計画」を踏まえながら、さまざまな改善を提案をして、交渉を行いました。

しかし、赤字は解消されませんでした。長年の顧客であり身を切る思いでしたが、警備品質を保ち、隊員の福利厚生のために、減収を覚悟で契約を断りました。その案件は、別の警備会社が低価格で受注したようです。

多くの顧客は、人件費上昇による警備料金の改定について理解を示してくれます。原資を得ることで、より働きやすい職場づくり、年休を取得しやすい環境整備を進めています。年10日以上の有休が付与される隊員に、5日以上取得してもらうため個人面談を行って取得日を決めています。

――年休取得の時に、欠員の補充はどう行いますか。

大切なのは、隊員が休む時に、他の隊員に負担がかからないことです。そこで新たに「ユーティリティー隊員」を導入しました。スポーツで複数のポジションを守るユーティリティー・プレイヤーにちなみ、1人の隊員が7〜8か所の現場を必要に応じて担当するのです。どの現場に入っても即戦力となるよう、各現場の事情に即した研修を行って配置します。

――隊員のスキルアップとして、民間資格「サービス介助士」の取得をはじめ、福祉面の対応に力を入れています。

JR、東京メトロの駅構内での警備業務を受注したことを契機に、車いすの方や白杖を持つ方などに対するサポートの研修を警備員教育に取り入れて、10年以上になります。サービス介助士の資格を取得した隊員は100人ほどです。ホスピタリティ(おもてなし)の精神で安全安心を守ることが当社の強みと自負しています。

ホスピタリティを具体的に実践するため、専門の知識を身につけることが必須です。昨年の現任教育では、NPO法人を通じて講師と盲導犬を招いて、視覚障害者への対応を訓練しました。700人ほどの隊員を20数人ずつに分けて研修を行ったので、講師と盲導犬には半年間に30回ほど当社に来てもらいました。

認知症の人への接遇も重要です。新任・現任教育の中で、区役所などの「認知症サポーター養成講座」を全隊員が受講します。認知症の人の行動や、「急がせない、後ろから声を掛けない」などの接し方を学びます。さまざまな研修に共通するテーマは「気づき」です。隊員が障害者や高齢者をサポートする時に、相手のためにどんな行動が必要か、いち早く気づくかなければなりません。また、隊員が“いつもと違う、普通と違う”と気づいて、的確な声掛けや通報を行うことで事件事故、自殺などを未然に防げるのです。

私は、ビルメンテナンス会社の業務を通じて、施設警備に30年以上携わった後、当社に入社しました。警備という仕事は、さまざまなスキルを求められ、奥が深いものだと改めて実感します。

――女性警備員の制服を赤いジャケットなどに一新しました。

安藤会長から「女性が憧れるようなデザインを」とのアドバイスを受けて作成しましたが、実際に制服を着たいと応募してくる女性がいます。現在、女性隊員は30人ほどですが、当面2倍に増やすことが目標です。そのために女性のリーダーを育成し、新人の女性には面接も新任教育も女性が担当する仕組みを考えています。

昨今、警備にはAIなど最新技術の導入は加速しています。こうした中でも当社は今後も、人と人が触れ合う警備業務を大切に行っていきます。

警備業ヒューマン・インタビュー
――働きやすさ支援2019.06.1

石井一史さん(金星 代表取締役)

「理想の制服」めざして

――長期予報では今年の夏も暑くなりそうです。熱中症対策の新製品を開発・発売しました。

警備業の“働きやすさ”を支援する一環として、当社は夏場の過酷な環境で働く警備員の方々の熱中症対策に、数年前から取り組んでいます。

昨年発売した「クールホルスター」は、脇の下の太い血管を保冷剤を使って冷やすことで、全身をクールダウンする製品です。制服の中に装着するので目立ちません。今年はその改良版として、保冷剤を入れるケースの生地をメッシュ状にしました。空気層を作ることで冷たさが体に直に伝わらないようにし、保冷剤の持続時間を長くすることができました。

もうひとつの熱中症対策製品は爽やかな冷気を制服の中に送り込む「コンパ」です。今年は新たに4世代目の「コンパO(オー)」を発売しました。従来は装備を背負う「バックパック型」でしたが、新型は動きやすさを考慮した「腰付け型」です。パーツ点数が少ない一体成形で、3Dプリンターだからこそ可能な性能・形状です。

――備品だけでなく、制服も新デザインのラインアップを発表しました。

若年層や警備業に興味がない人も着てみたくなる今までにない斬新なデザインの制服を、今年の夏を皮切りに順次発売していきます。夏服のポロシャツタイプは、熱中症対策を考慮した風通しがよい生地・構造で、速乾性もあります。男女どちらが着ても違和感がないデザインで、すべて「男女共用タイプ」としました。在庫管理面でも効率的です。

――制服については販売だけではなく、「管理面のサービス」も提供しています。

制服や備品など、お客さまの資産の運用を最適な形でフォローする「マネージメントコントラクトサービス」です。制服はICタグ(ICチップを内蔵した荷札)を生地内に入れ込み、当社サーバーのデータベースと関連づけて、「誰に・いつ・何を・何点・貸与しているか」明確に管理する業務を請け負います。制服をお預かりすることで、人件費や倉庫スペースの有効転用ができます。

このサービスは、お客さまから「制服を無駄なく運用したい」「制服のセキュリティー性を向上したい」などの声を聞いて対応したものです。「東京2020大会」の開催が決まって「制服をしっかり管理しなければ」という機運が高まり、導入を決めたお客さまもいます。経営者の世代交代が進むにつれて、PCやソフトウエアによる在庫管理の需要はさらに増していくと予想しています。

――警備業以外の分野でも、独自の技術開発を行ってきました。

その一例として、最新技術で微細な泡「ウルトラファインバブル」を発生させ、その力でよごれを落とす「ピュアット」という装置を開発しました。「対物用」は昨年から販売していますが、「対人用」は今年国の認可がおりて、販売を開始しました。体にやさしく環境にもやさしいことから、特別養護老人ホームなどで好評です。

当社は昨年7月、フランス東部に営業所を設けました。「ピュアット」を欧州市場に向けた商品の第一弾として販売する予定です。

――先代から経営を引き継ぎ、まもなく2年が経ちます。

私は当社に入社する前、生産から流通までの全工程を体感しておこうと、さまざまな仕事を経験しました。当時社長だった父が体調を崩し、海外に新設した当社工場に行って父の代わりに対応したことがきっかけで入社しました。

私自身が大学でデザインを学んだこともあり、今後は“理想の制服”をめざして、品質や機能のみならずデザインにも一層注力したラインアップを増やしたいと思っています。

研究開発の分野も広げていきます。警備業の人手不足に対応するため、VR(仮想現実)やAIを活用した製品を、技術者の話を聞きながら企画検討しているところです。

――「単に商品を販売するだけの会社ではない」という想いを企業の特長として打ち出しています。

お客さまがどういう業務でどのような商品を望んでいるかを明確にし、それに合った提案をしていきます。それがもし世の中に存在しないものであっても企画・研究開発を進め生み出していきます。人々の充実した生活のために、これからも「自然」「社会」「生活」の3つの環境改善に取り組みます。