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視点

ICT 先端技術で五輪警備を2016.8.21

リオデジャネイロオリンピックは、連日繰り広げられた日本選手の活躍を、眠い目をこすってライブで応援した人も多かったと思う。各競技会場、およびその周辺では、懸念される国際テロなど不測の事態に備え、8万5000人の警察官や兵士による警備体制が敷かれている。しかし、パラリンピックの閉会式が終了する来月18日まで、油断は禁物だ。

これから、2020東京オリンピック・パラリンピック警備に向けての準備が、本格的にスタートする。最大の課題は、何といっても警備員不足だ。組織委員会は警備全体で5万800人、うち民間警備1万4000人の動員を計画している。

東京警協は7月の理事会で、「オリンピック等警備対策委員会」(白川保友委員長=東京警協会長)を設置した。協会・警視庁・組織委員会の3者とオブザーバーによる「オリンピック等警備業務連絡会」も間もなく始動する。大会の安全を守り抜き、成功させるための深い議論を期待したい。

セコム、ALSOKのオフィシャルスポンサー2社と全国の警備会社が企業間の垣根を払い、オールジャパン体制で団結するときだ。「JV(共同体)設立準備事務局」も間もなく動き出す。

技術開発は日進月歩

2020東京五輪警備の切り札に「ICT(情報通信技術)」がある。

セコムは、3次元の立体地図を使ってイベント会場の警備の死角を検出し、効率的な人員配置に役立てるシステムを開発した。警備員不足を補う意味からも、おおいに期待が持てる。

東京五輪スポンサーであるメーカー各社による、大会を見据えたセキュリティー技術の開発も日進月歩だ。

ALSOKとNECは3月、新しい警備サービスの提供に向けて、“協業”を発表。NECは東京マラソン会場で、群集映像から不審な動きを見つけ出す「群集行動解析技術」を警視庁に提供し、検証した。混雑した状況で起こる、人の目ではわかりにくい異変をリアルタイムに検知できる世界初の技術だ。

またNECは、リオ五輪の日本選手の記者会見会場に「ウォークスルー顔認証システム」を設置した。これはカメラの前で立ち止まることなく歩きながら顔認証できる技術で、セコムも独自に開発を進めているところだ。

パナソニックは成田空港で2月、空港やイベント会場などで発生するテロ犯罪や雑踏警備の警備強化を目的に、ウェラブルカメラやスマホを活用し警備員の位置と現場映像を防災センターで集中管理する警備システムの実証実験を行った。

同社は6月にALSOKとガンバ大阪の協力を得て、吹田サッカースタジアムで競技場警備の実証実験を行った。ウェラブルカメラを装備した警備員を配備し、異常を検知した場合に監視設備との連動で場所や状況を共有することで的確な対処を行う。

ロンドン五輪、ソチ冬季五輪、そしてリオ五輪と、近年に開催された大会はいずれも、警察と軍隊による厳戒体制がとられた。東京五輪では、日本独自の<民間による高品質の警備と先進技術の融合による新しいスタイル>を世界に示してほしい。

【瀬戸雅彦】

警備の日 11・1を広める効果2016.8.1

「警備」と「寿司」と「紅茶」には意外な共通点がある。それぞれの業界団体が定めた「警備の日」「寿司の日」「紅茶の日」は、いずれも11月1日なのだ。寿司の日は実りの秋・米への感謝として昭和36(1961)年から同日に決まり、紅茶の日はロシアに漂着した船主がエカチェリーナ女帝に招かれて日本人として初めて紅茶を飲んだ日(1791年)に由来する。

警備の日は警備業法の施行が昭和47(1972)年の同日であったことにちなむ。経営者にも警備員にも常に「法令遵守」が求められる業界にふさわしい記念日の設定となっている。

制定1年目の昨年は、各地の協会でポスターやのぼり旗を作成したり、ポケットティッシュを駅前で配り、青パトの出発式を行うなどして街行く人々に警備業のアピールを行った。2年目となる今年、全警協は警備の日に合わせた広報・啓発活動の活発化を打ち出し、11月2日に秋季全国専務理事会議に代えて「警備の日」全国大会を千代田区のホテルで開催する。

人手不足が慢性化し、警備員の高齢化も進む中で、警備業の認知度向上、イメージアップに向けた取り組みが一段と重要さを増している。

警備の日に向けて岐阜警協は、「私のお父さん(お母さん)は警備員です」「町で見かけた警備員さん」など警備業をテーマに小学生による絵画・作文コンクールの作品を募集している。併せて協会加盟会社の従業員からも、同様のテーマで写真を募集している(7月11日号)。

警備業に従事する人の子供たちだけでなく、他業種の親を持つ子供たちもコンクールをきっかけに「警備員さん」を意識する機会を持つことになる。子供の感性を通じて文や絵で表現される警備員はどのような姿だろう。

警備の日をはじめ業界からのさまざまな情報発信は、求人に結びつくことも期待される。より多くの人に警備業に興味を持ってもらうアピールの方法としては「警備業務の具体的な説明」がある。

福島警協が6月に一般の人や就職活動を行う高校3年生を招いて開催したイベント「セキュリティ・ジョブ・フェア」では、施設・交通誘導・雑踏・貴重品運搬など各警備業務のデモンストレーションが行われて参加者から“警備の仕事の種類や方法を初めて知った”という感想があった(7月21日号)。

日常の生活で警備員は身近な存在だが、そのわりに警備業の内容は正確には知られていないようだ。業務が1・2・3・4号に分類されること、教育を重んじる業界で教育時間が法に定められていること、警備員検定は国家資格であり取得すれば職場でステータスを上げられること、さらに東京五輪・パラリンピックに向けた人員・女性確保の切実さなど、どれも業界外の人には耳新しい話題であり“もっと知りたい”と関心を示すかもしれない。

各社のホームページやSNS(ソーシャル・ネットワーク・サービス)なども使いながら、業界に携わる人々が警備業の話題を日頃から草の根的に発信して広げることで、警備業の認知度を高める効果を生むはずだ。

11・1は警備の日――外部へのアピールと並行して業界内に浸透させることは、警備員の意識を高めることに結びつくだろう。

【都築孝史】