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視点

遅くない 社保加入、今からでも2017.1.21

国土交通省が示した社会保険の加入期限まで残り3か月を切った。同省は昨年末、都内で「社会保険未加入対策推進協議会」を開いた。

同協議会は平成24年5月、建設業での社保未加入対策を検討する場として設立されたもので、同省に加え厚生労働省、ゼネコン団体、専門工事業団体など建設業に関わる全ての関係機関・団体から構成。国交省は同協議会を中心に約5年間にわたって社保対策を進めてきた。

国交省担当官によれば、年度内の同協議会の開催はこれが最後とのこと。〈行政としてやるべきことはやった。あとは静かにゴールを待つだけ〉ということか。

>一方で、同省幹部は席上、「もうすぐ目標期限が来るが、これで取り組みが終わる訳ではない」と述べ、4月以降も社保加入促進対策を継続的に実施していく意向を明らかにした。

4月になったら社保は騒がれなくなるよ――。

そんな声が一部の建設業や警備業の経営者から聞こえていたが、どうやらその甘い期待は外れたようだ。

それよりも、目標未達成の企業には、公共建設工事からの排除に加え、〈企業努力が足りない〉とペナルティーに近い指導が行われるだろう。なぜなら、これまで社保加入のために設計労務単価の毎年大幅アップなど、国民の血税を投入した手厚い支援が行われてきたのだから。

5年前、協議会の初会合で国交省幹部が「われわれは“パンドラの箱”を開けた。後戻りはできない」と、不退転の覚悟を示したのが思い起こされる。

当初、建設業関係者の多くが“不可能”だとしてきた社保だが、現在は大きな前進を果たした。その原動力となったのが、社保対策の目的である(1)若い担い手が業界入りしてくれるための体制整備(2)社保未加入企業によるダンピング受注という不公正・不公平な市場の競争環境の是正――に多くの経営者が賛同したことに他ならない。

4月以降はどうなる

好むと好まざるにかかわらず、警備業も社保という大きな“渦”に巻き込まれてきた。

かつては「警備員に社保なんて」と頭から否定していた経営者も多かった。しかし、いち早く社保に取り組み、適正な警備料金や若年労働力などの確保に成功し、業務拡大を実現した企業は多い。

4月以降、そう遠くないうちに世間一般は、警備業に対しても「社保は当たり前」という見方となるだろう。言い換えれば「未加入は脱法」という厳しい目が注がれることになる。

果たして、そんな機運が醸成された時に、社保未加入企業に都道府県公安委員会はどのような姿勢で臨むのだろうか。その答えは火を見るより明らかだ。

さらに、“社保の先”を見据えた取り組みも始まった。

東北地区警備業協会連合会(千葉英明会長=宮城警協会長)の「経営健全化推進」だ。社保加入が迫られる今を、業界を変える最大のチャンスと捉え、ダンピングが染みついた経営者の意識改革と、警備員の処遇改善に東北地区を挙げて取り組んでいる。

残された時は少ないが、「今からでも遅くない」と信じ、社保への取り組みが進むことを期待したい。

【休徳克幸】

「少しずつ」の頑張りを2017.1.1

旧年中は、ニュース取材・購読・広告出稿など、大変お世話になりました。

新しい年が警備業に携わる皆さまにとって、公私ともに良き年となりますよう心よりお祈りいたします。

小紙は、今春「3・11号」で創刊5周年を迎えます。これも皆さまのご支援とご協力があってこそ積み重ねることができた「紙史の節目」であります。

これからも警備業界発展の一助となりますよう、鋭敏な感覚で情報の発信を心掛ける所存であります。

本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

年の初め。今号と次号は、恒例となっている業界と地域のリーダーの皆さんに「年頭にあたって」心に感ずるところを寄稿していただいた。それぞれに、警備業の発展を願う心情が溢れ、今年にかける決意のほどが伝わってくるのです。

視点の先を2号警備に向けたい。警備業を支える経営者の皆さんは、今年のビジョンを如何ように描かれているのでしょうか。旧年に続き、社保加入、適正料金の導入、従業員の確保という“トライアングル課題”に思いを致されていることでしょう。

行きつくところは、老若合わせて働く社員のやりがいを担保する報酬と待遇の改善です。

課題の克服は、一朝一夕に叶わないこと、誰もが身に沁(し)みて感じています。でも、今年は、改革に向けて、もう少しの頑張りの一歩を踏み出してもらいたい、と切に思います。

100%の達成などできるはずがない、と思わないでもらいたい。身の丈に合った目標を一段一段とクリアする継続こそが大切なのではないでしょうか。

新春号の当欄の習わし、読者のみなさんの琴線にふれる<記憶に留めたいことば>の今回は、米大リーガー・イチロー選手の2つの言葉を引いてみました。

「(メジャー3000本安打は)今シーズンで達成できないと考えたことは一度もなかったですよ。<できなくてもしょうがない>は、終わってから思うことであって、途中でそれを思ったら、絶対に無理だったでしょう」――

「“イチローは人の2倍も3倍も頑張っている”と褒めてくれますが、そんなことは全くありません。みんな(選手)も頑張っているから分かると思うけど、頑張れば自分の限界が見えてくるよね。そのとき、自分の中で、もう少しだけ頑張ってみる。そのことを続けていくと将来、思ってもみなかった自分になっていきます」――

前者は昨夏のこと。私はフロリダのマーリンズパークにイチローを訪ねた。この日はデーゲーム。すでに一大金字塔を打ち立てたあとで、試合前にリラックスして久闊を叙すことができた。試合後には、車で球場に迎えにきた弓子夫人も交えて懇談した。

そのとき、こちらは「予想を超えて、早い達成。すばらしいヒットの量産だった。代打でヒットを重ねることは、しんどい仕事だったのじゃないの?」と、いささか不躾な問い掛けのボールを投げた。紹介した言葉は、イチローの返球である。

後者は昨年暮れ、故郷の愛知県豊山町であった「第21回イチロー杯争奪学童軟式野球大会」の閉会式でのこと。参加199チームの激戦を勝ち抜いた上位3チームの選手たちに祝福の言葉とともに語りかけたもの(スポーツニッポン12月24日紙面から)。

筆者は、しばし想いを巡らせた。今年1年、折にふれて2つの“イチローことば”を思い起こしてみよう。自分自身が何をやりたいのかを忘れないために……ときに自戒の糧とするために……それは、小紙が少しでも読者の皆さんの役に立つ“紙価”を高める手がかりになると考えるから……。

【六車 護】