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「自家警備」問題 「対策協議会」長崎県で活動2017.8.21

警備業優先は担保

長崎県と県警備業協会、県建設業協会、県ほ装協会の4者が立ち上げた「交通誘導警備員対策協議会」が本格的な活動を進めている。6月に国土交通省が全国の自治体などに示した通知〈交通誘導員の円滑な確保について〉で明記された「交通誘導員対策協議会」のモデル的取り組みとなるもので、建設会社職員による交通誘導「自家警備」実施のための条件整理を行い、年度内にも自家警備が実現する見込みだ。

「協議会」立ち上げのきっかけは、県内での交通誘導警備員不足の深刻度が増したことだ。九州新幹線や西九州自動車道建設に伴う警備需要の増加に加え、近年の「大型クルーズ船」の相次ぐ来航がこれに拍車を掛けた。県建設業協会の調査では、半数を超える約55パーセントの会員が「警備員不足により着工遅れなど工事に不具合が生じた」と回答している。

このため、県と建設業協会は昨年12月に「何らかの対応が必要」と、ほ装協会、長崎警協の4者による事務レベルでの協議をスタート。今年1月には、県幹部と各協会の会長がメンバーの協議会を正式に発足、初会合を開いた。

協議会では、交通誘導警備員がひっ迫している原因は、警備員の人材不足にあることで見解が一致。「交通誘導警備員の人材確保・育成方策の検討」を協議会の基本方針に据えた。

しかし、人材の確保・育成には時間を要することから、“当面の対応”として交通誘導での安全性の確保や警備業の優先性を担保した上で、警備員ひっ迫に対処するための方策が必要とし、自家警備についても検討を開始した。

その結果、県公安委員会が指定する路線(指定路線)以外の路線での自家警備実施へ向けて次の枠組みを取りまとめた(指定路線は検定合格警備員の配置が必要)。

まず、県発注の公共工事を受注した建設会社が、交通誘導警備業務を警備会社に依頼する。そこで、警備会社が人手不足を理由に「交通誘導警備員の現場への配置が一部または全部不可能」と回答した場合、建設会社は同警備会社の交通誘導警備員不足について、同社と近隣の警備会社2社の計3社から「ひっ迫の証明」を得て長崎警協に報告する。長崎警協は県内の他の警備会社に業務受託を打診し、それでも警備業務受注者がいないと、建設会社は発注者である県(土木部事務所など)と自家警備について協議する。その際、現場の状況を県担当者が確認し、「交通量が少ない」「歩行者のみの誘導」など危険リスクが少ない場合に限り、県が「自家警備」を認める――というものだ。

また、自家警備で交通誘導を行う建設会社職員には、建設業協会が行う「安全講習会」の受講が必要となる。受講できるのは、建設業協会加盟社の社員で、講習時間は3時間。内容は県発注工事での交通誘導業務の取り扱いや自家警備制度の概要と留意点、交通誘導の基本事項などで、講義には長崎警協も協力するが、講習に伴う「瑕疵担保責任」は建設業協会が負う。講習は既に県内6か所で開催され、受講者数は800人を超えている。

「自家警備」問題 国交省、警察庁が補足通知へ2017.8.1

警議連の会合で説明

「警備業の更なる発展を応援する議員連盟(警議連)」(会長=竹本直一衆院議員)は7月28日、衆院第2議員会館で会合を開いた。6月8日に国土交通省が自治体や建設業団体などに行った通知「交通誘導員の円滑な確保について」で示した“自家警備”が、警備業界に波紋を広げていることから、国交省と警察庁に同通知について説明を求めた。

国土交通省の青木由行・建設流通政策審議官は、通知の背景や内容を説明した。通知の中で示した“自家警備”については、「警備業界に不安の声が上がっていることは、業界新聞などで承知している。通知文には舌足らずの部分もあり反省している」と述べ、交通誘導員不足が顕在化または懸念される場合の対策という通知本来の主旨が伝わるよう、「補足文書」を出すことを明らかにした。

警察庁の小田部耕治・長官官房審議官(生活安全局担当)も、「自家警備は、警備業者が交通誘導警備員不足で業務を受注できない際に、工事での安全上支障のない場合に限定した“やむを得ない”ときの例外的な措置」と述べ、国交省同様、補足の通知を出すことを明らかにした。

会合に出席した全国警備業協会の福島克臣専務理事は両省庁の説明を受け、「(6月8日の国交省の)突然の通知に戸惑っている」とし、交通誘導警備業務に関する警備業界の考え方として(1)交通誘導警備業務の社会性(2)警備員の専門性(3)交通誘導員対策協議会の協議事項(4)中央レベルでの検討の必要性――の4点について見解を述べた。

交通誘導警備業務の社会性については、「交通誘導警備業務の与える影響は、クライアント(発注者)だけにとどまらず、一般交通を利用する全ての人に関わる。多くの労災も交通誘導警備業務中に発生し危険な業務だ」と指摘した。

警備員の専門性については、警備員になるには警備業法で「未成年者でない」「一定の犯罪歴がない」など各種制限があること、警備員には国家資格者の警備員指導教育責任者から継続的な教育が必要など、警備員の要件や教育体制などを説明。「自家警備で軽々に交通誘導ができるのか」と疑問を呈した。

交通誘導員の確保について検討するために、関係者で設置することを求めた「交通誘導員対策協議会」の協議事項については、「自家警備を行うための条件整理のみがテーマとなっている」と指摘、「警備業者の約70パーセントが交通誘導警備業務を行っている。自家警備は、これら警備業者のビジネスチャンスを奪うもの」と疑念を述べた。

中央レベルでの検討の必要性については、「協議会は各地域で検討するものとしているが、大原則については中央レベルで検討した上で地方に示さないといけない」と訴えた。

警議連会長代理の礒崎陽輔参院議員は「通知には曖昧な部分が多く、警備業界に不安が広がるのは当然」と、通知に不満を表明した。