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建築保全業務の労務単価公表2017.12.21

「施設警備」の低さ、浮き彫り

国土交通省は12月8日、施設警備の労務単価である平成30年度の「建築保全業務労務単価」を公表した。新潟を除き、警備員A、B、C全てで前年度を上回った。交通誘導警備員との比較では、警備員B、Cが全ての地域で交通誘導を下回り、全国警備業協会(青山幸恭会長)が現在、作業部会を設置して取り組んでいる「施設警備の労務単価改善」の必要性を裏付ける格好となった。

国が施設警備を委託する際の積算に用いる「建築保全業務の労務単価」は、全国平均で警備員A(施設警備1級の検定資格を保有、もしくは警備業務に高度な技術力や判断力、作業の指導などの総合的な技能を持ち実務経験6年以上程度)が対前年度比230円増の1万2960円となった。警備員B(2級の検定資格を保有、もしくは警備業務に作業の内容判断ができる技術力と必要な技能を持ち、実務経験3年以上6年未満程度)は同210円増の1万990円。警備員C(警備員Aや警備員Bの指示に従って作業を行う能力を持ち、実務経験3年未満程度)は同170円増の9770円。宿直単価は昨年度と同じ3800円となった。

公共工事設計労務単価(交通誘導警備員)との比較では、全ての地域で警備員B、同Cの労務単価が交通誘導警備員の労務単価を下回った。

同単価は基本日額に相当する「日割基礎単価」(所定労働時間8時間当たりの基本給相当額と家族手当や住宅手当、通勤手当などの基準内手当、所定労働日数1日当たりの賞与などの臨時の給与の合計)、時間外単価の「割増基礎単価」、現場に宿直する場合の1回当たりの定額単価「宿直単価」――の3種類がある。法定福利費の事業主負担額や研修訓練に要する費用などの業務管理費や一般管理費などの諸経費は含まれていない。

栃木警協「自家警備には反対」2017.12.11

研修会開き対応方針示す

栃木県警備業協会(青木勲会長)は11月28日、宇都宮市内で研修会を開いた。テーマは「自家警備問題」。警備業界に大きな波紋を広げた同問題について、会員の正しい理解と今後の対応を協議するのが目的。国土交通省の通知で自家警備実施の前提となる「交通誘導員対策協議会」への対応が議論され、対策協では安全上の問題を主張し、自家警備には反対する方針が示された。 

栃木警協の永井正専務理事が、自家警備問題の今までの経緯を説明した。その上で「問題がこれ以上大きくなると、警備業を根底から揺るがす問題に発展することを認識してほしい」と研修会開催の趣旨を説明した。

県警本部生活安全部生活安全企画課の別井則崇課長補佐が「当面の諸問題について(自家警備問題)」の演題で講演した。同課長補佐は「県警は、協議会への参画要望があれば積極的に参画し、協議会の場において公共工事の進捗に関するひっ迫具合とのバランスをみて関係団体と協議し、結論を出すと承知している。ただ県警としては、自家警備を積極的に建設業者に推奨する立場はとっていない」と述べ、県警のスタンスを明らかにした。

講演後の質疑では、会員から次のような意見が寄せられた。

▽「警備業を営む者にとって深刻な問題だ。今後、建設業が自家警備を行う事例が県内で1件でも出れば、それに続く流れになるかもしれない」

▽「日本の警備は過去、自家警備で問題があったために警備業法が施行され、検定資格制度も整備されて警備の質が高まっていった。ここでまた自家警備に戻すという選択は、安全を考えれば明らかに間違っている」

▽「現在の法律は、自家警備を禁止する内容になっていないことが波紋を呼んでいる理由だ。自家警備は違法ではないが“脱法行為”だ」

質疑を受けて永井専務理事は「もし当協会に協議会参画の要請があれば、協議会に参画することになると思う。しかし、安全上の問題を積極的に主張して、基本的には反対の立場をとりたいと思っている」と述べ、会場からは大きな拍手が沸き起こった。

処遇改善こそが第一義2017.12.1

中国地区連 「警備員不足」対応、話し合う

中国地区警備業協会連合会(橋本満会長=広島警協会長)は11月20日、鳥取県米子市で「役員会」を開催した。「警備員不足」への対応は、警備員の処遇改善こそが第一義であるとした上で、各県警協は(1)公共工事を発注する自治体に対して年間を通じた発注の要請と現状の広報活動(2)交通誘導警備だけでなく施設警備の労務単価是正に取り組むべきだ――などの発言があり具体策を検討することになった。

会議には5県の会長と専務理事、全警協からは福島克臣専務理事と小澤祥一朗総務課長が参加し、自由討論形式で意見を述べ合った。

橋本会長は「業界で問題になった2号警備を中心にした自家警備は、警備員不足が発端だった。加えて警備員の処遇の改善、今年3月で終わった社保未加入問題への今後の対処など課題は山積している」と忌憚のない意見の交換を求めた。主な項目の会長発言と全警協・福島専務理事の応答は次のようなものだった。

〈自家警備〉「(建設会社による)自家警備の要望は山間部で顕著。中国電力の原発廃炉警備の発注は賃金が高く警備員が流れて人手不足が加速している」。「建設業界も作業員不足だと聞く。教育の必要性など自家警備に人を振り分ける余裕はないのではないか」

全警協・福島専務理事「9月末に通知した自家警備・対策協議会への対応については4項目を明記している。適正な警備料金の確保、交通誘導員“ひっ迫”の認定判断、危険性の高い指定路線は自家警備から除外することになっているなどである。長崎警協の対応は参考になる」

〈施設警備〉「交通誘導警備員(2号)の賃金はアップしているが、施設警備(1号)は下落している。30年ほど前に比べ半額といってよい」

福島専務理事「1号については国交省が11月末から5年に一度の建築保全業務の実態調査を行う。対象は首都圏、中部、近畿地方の1000余社。全警協は1号の労務単価改善に向けて作業部会を設置して取り組んでいる」

〈社保未加入問題〉「2号の労務単価が上がれば、1号も付随して上がるのではないかと期待する向きもある」

福島専務理事「国交省が決めた2号の労務単価の増額は、社保加入のための加算であって、いわば“政策的”なもの。実態調査で上がったわけではないことを認識しなければならない。期限が切れた来年度からのアップは不確定だ」

このほか、「自治体の幹部に、警備業界の人手不足と賃金水準を話したところ、『そんなに大変なのですか』と驚いていた」、「警備料金で厚労省の答申した〈最低賃金額〉が目安になる業界の体質そのものが恥ずかしい」などの意見が交わされた。