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「警備員憲章」を作成へ2017.6.21

全警協 平成29年度総会開く

全国警備業協会(青山幸恭会長)は6月7日、都内で平成29年度の定時総会を開いた。同協会は今年度、警備員の守るべき規範を定めた「警備員憲章」(仮称)や「価格交渉ノウハウ・ハンドブック」(仮称)などを作成し、警備員の資質向上や適正警備料金の確保を支援していく。

青山会長は、今後の課題として社会保険未加入問題、2019年のラグビーW杯や2020年の東京五輪・パラリンピック大会の警備、労働災害防止――などを示し、「都道府県警備業協会と双方向のコミュニケーションを図り、課題解決に取り組んでいきたい」と述べた。

議案審議では、福島克臣専務理事が29年度の事業計画として、次の事項への取り組みを報告した。

▽警備業務適正化と経営基盤強化への対応

社会保険加入状況の全国調査と加入促進を継続的に行うほか、制服の適切な扱いや警備員としての心構えなど、警備員の守るべき規範を定めた「警備員憲章」(仮称)を今秋にも作成、全警備員に周知する。

従来から行ってきた関係省庁への働き掛けでは、これまで同様、警備業界の意見や要望を伝えるとともに、特に労働基準法の改正動向など労働法制の厳格化に適切に対応するための取り組みを強化する。

▽適正な警備料金の確保

中小企業庁や運送業界など他業界の資料などをモデルに「警備業者のための価格交渉ノウハウ・ハンドブック」(仮称)を年内にも作成。加盟員や関係団体に普及啓発し、適正警備料金の確保を支援する。

労働関係法令や経営基盤の構築、税制・金融支援などに関する経営者向けの研修会を行うためのコンテンツを作成し、都道府県協会に対し必要に応じて講師派遣などの支援を行う。

▽2020年東京五輪・パラリンピックへの対応

大会組織委員会などと連携し、大会開催へ向けた各種準備を進めるとともに、警備員とセキュリティボランティアへの教育について検討する。

▽警備員不足への対応

ハローワークを訪れる人に配布する「警備業紹介パンフレット」を早期に作成するとともに、退職自衛官の採用について防衛省との協議を進め、退職自衛官を対象に行われる就職説明会への参加を目指す。

▽広報活動の充実

警備業界をPRする「マスコットキャラクター」を作成する。

役員人事では、全警協理事で同副会長の白川保友氏(東京前会長)と松本圭一氏(愛知前会長)が退任し、後任の理事・副会長に鎌田伸一郎氏(東京副会長)と小塚喜城氏(愛知会長)が就任した。また、小塚氏は松本前理事の後を受けて総務委員会委員に就任した。

各国の警備業を実態調査 待遇改善、共通の課題2017.6.11

米英独仏の4か国「社会安全研究財団」が報告書

公益財団法人の日工組社会安全研究財団(会長=伊藤滋・早稲田大学特命教授)は5月30日、イギリスなど4か国の警備業の実態を「外国の警備業に関する調査研究報告書」として取りまとめた。

同調査の目的は、2020年の東京五輪・パラリンピックを見据え、今後の警備業に係る施策の検討に生かすこと。ロンドン五輪を開催したイギリス、比較的最近にFIFAワールドカップの開催経験があり日本の法制と近いドイツ、このほかフランス、アメリカの4か国と、警備業者や警備員数が多いニューヨーク、カリフォルニア、ワシントンDCの各州の警備業に関する法規制や活用状況、大規模警備の状況などを、警察庁の協力を得て文献や現地で調査した。

調査項目は、(1)警備業の営業要件や警備員の権限・役割、労務環境などの「警備業の法制」(2)警備業者数や警備員数、市場規模、警備員の平均賃金などの「警備業の経済状況」(3)五輪をはじめとした「大規模警備の状況」など。

報告書は、現地調査を行ったイギリス、ドイツでは警備員が3K(きつい、汚い、危険)的な状況にあることが確認されたと指摘。調査対象の4か国の警備員の賃金は、平均賃金の概ね6割程度、アメリカでは州により平均賃金の4割強の低さで、警備員の待遇改善や質の向上は各国に共通する課題だった。

大規模警備については、イギリスとドイツの警備方法は、わが国と類似。具体的には、警察はテロ対策や犯罪抑止活動で広く国民の生命・身体などを守る業務を担い、警備業は発注者との契約に基づき特定の場所の巡回や手荷物検査などを任務としていた。特にイギリスでは、警備員の育成や警察の目や耳となる人材を育成するテロ対策「プロジェクト・グリフィン」が警察主導で行われ、役割は異なるものの、情報共有のために無線の一本化や指揮所同士での連絡などの措置が講じられていた。

警備の再委託については、イギリス、ドイツともに、個々の契約で禁止・制限される場合はあるものの、法的な規制はなく、元請けから下請けへの指揮命令は法により認められていなかった。これに対し、ロンドン五輪の警備を受託した「G4S社」(世界110か国以上で警備業務を行い従業員数約62万5000人)は、詳細な作業指示書を作成、同指示書の中で下請けの業務内容と責任範囲を明確にしておけば、下請けに指示を出す必要はないと回答した。一方、ドイツでは、警備対象エリアが広範囲であれば区域分けし、一区域一業者で業務を行う方法を採用していた。

同報告書は、財団のホームページで公開中だ。

労働災害死者数、過去最高に2017.6.1

警備業は「死傷」増える

厚生労働省は5月19日、平成28年(1~12月)に全国の職場で発生した労働災害の状況を公表した。死亡者数は全産業計で928人。前年の972人に比べて44人減少し、2年連続で過去最少となった。しかし、死亡災害と休業4日以上のけがや病気などを合わせた「死傷災害」は11万7910人で、前年の11万6311人に比べて1599人増加した。

死亡者数928人を業種別にみると、最も多いのが建設業の294人(対前年比33人減)。次いで製造業の177人(同17人増)、陸上貨物運送事業の99人(同26人減)の順。警備業は23人で前年に比べて6人減少した。

事故の型別では、警備業は「交通事故(道路)」が最も多く13人。次いで「激突され」が4人、「墜落・転落」と「おぼれ」がそれぞれ2人だった。

死傷災害11万7910人を業種別にみると、最も多いのが製造業の2万6454人(対前年比63人増)。次いで建設業の1万5058人(同526人減)、陸上貨物運送事業の1万3977人(同92人増)の順となっている。警備業は1472人で、前年に比べて71人増加した。

事故の型別では、警備業は「転倒」が最も多く540人。次いで「交通事故(道路)」の228人、「動作の反動・無理な動作」の188人、「墜落・転落」の167人などの順で、特に「転倒」は対前年比67人増という大幅増となった(「交通事故」は7人減)。原因として高年齢警備員が増えたことによる転倒の増加に加え、加齢による負傷の重傷化・長期化などがあるとみられる。

同省は現在、平成25~29年度を期間とする「第12次労働災害防止計画」を展開中。同計画は期間中(24年比)に死亡者数と死傷者数を、ともに15パーセント以上減少させることが目標だ。28年の発生状況を見ると、死亡災害は15.1パーセント減少したが、死傷災害は1.4パーセント減。このため同省は、計画最終年度の今年度、災害の多い第3次産業対策や死傷災害の2割以上を占める転倒災害対策などを強化する。