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配置基準、教育、検定、見直しへ2018.4.21

警察庁「検討会」が報告書

警察庁は、今後の警備業務のあり方を検討してきた“有識者検討会”が取りまとめた報告書を受け、(1)配置基準(2)大規模イベントでの警備員の業務(3)警備員教育(4)検定制度――など現行制度の見直しに着手する。人口減少時代を見据え、就業促進や生産性向上を図りつつ、社会の安全安心に寄与し続けられる新しい警備業を目指す。

検討会の正式名は「人口減少時代における警備業務の在り方に関する有識者検討会」で、警察庁が昨年9月に設置した。

メンバーは、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会の警備局幹部や経営コンサルタントなど全4人。慶応義塾大学大学院法務研究科の橋本博之教授が座長を務め、警備業界からは全国警備業協会の福島克臣専務理事が参加した。

人口減少時代を見据え、今後も警備業が生活安全産業として社会に寄与し続けるために必要な施策を検討してきた会議は計3回開かれ、その間、警備業者へのアンケート調査やヒアリングなども行われた。

検討は(1)ICT、IoT、ロボットなどの技術活用による警備業務の生産性向上(2)大規模イベントでの警備員とイベントスタッフやボランティアとの連携(3)警備員教育・検定の合理化(4)中小規模業者の付加価値向上への支援――の4テーマについて行われ、報告書では警察庁と全国警備業協会など業界団体両者の今後の取り組み内容や方向性が示された。

警察庁が取り組むのは、(1)検定合格警備員の配置基準の見直し(2)大規模イベントで警備員が行う業務の明確化(3)警備員教育の合理化(4)検定制度の見直し――などで、今年度から作業に着手する。当面の目標は2020年の東京五輪・パラリンピック大会とし、警備業法など関係法令の改正に拘らず、運用も含め制度全般を見直す。

東京2020大会「警備JV」を設立2018.4.11

共同代表にセコム、ALSOK

「東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会警備共同企業体」が4月3日、設立された。共同代表にはセコム(渋谷区、中山泰男社長)とALSOK(港区、青山幸恭社長)が、理事会社には東京、埼玉、千葉、神奈川の1都3県に本社を置く12社(別掲)がそれぞれ就任した。同JVは今後、参加企業100社・動員警備員1万4000人の“オールジャパン”の大会警備体制の構築を目指す。

千代田区内で行われた共同企業体(大会警備JV)の設立式では、セコム・中山、ALSOK・青山の両社長が壇上で「設立宣言」を読み上げた。続いて、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会(森喜朗会長)の武藤敏郎事務総長との警備業務委託へ向けた「覚書」の締結が行われた。

覚書の内容は(1)大会警備JVが構成員の加入推進を行う(2)組織委がJVに警備業務を委託する(3)JVが体制整備を行う(4)組織委とJVが警備業務委託に関する基本的枠組みを定めた契約締結に向けて協議する――の4点。今夏に基本的枠組みに係る契約を締結し、2019年末に警備対象ごとの詳細を定めた個別契約を締結する。

想定される警備業務は、スクリーニングと呼ばれる入場者の手荷物検査などのセキュリティーチェック、会場やその周辺の巡回警備、交通誘導、雑踏整理などの人的警備業務。警備業務に必要な人員は、2013年の五輪招致の際に公表された“立候補ファイル”に示された「従事民間警備員1万4000人」を当面の目標とする。

監視カメラなどの警備資機材を含め総額約1000億円の予算を見込んでいる組織委発注の警備業務は、大会スポンサーのセコムとALSOKが優先供給権を持つが、必要人員の確保には「両社以外の警備会社との“協働”が不可欠」(覚書)。このため大会警備JVは今後、東京、埼玉、千葉、神奈川の1都3県を中心に全国の警備会社にもJV参加を呼び掛け、100社・1万4000人の警備体制の構築を目指す。

大会警備JVの本部は、台東区内の東京都警備業協会が入居するビルの別フロアに置き、JV参加希望企業への当面の対応は共同代表のセコム、ALSOKが行う。また、1都3県を中心に参加希望企業向けの説明会も開く。

JV参加企業に対しては、警備業法に基づく新任・現任教育は各社に任せるが、大会警備のための専門教育は「e―ラーニング」で行う予定。

武藤事務総長の話

理事会社の14社に加え、日本中の警備会社に参加を求めて、オールジャパンの警備体制を目指すことを心強く思う。大会まで2年3か月、JVと手を携え大会成功に尽くしたい。

中山社長の話

2020年への新たなスタートを切り、身の引き締まる思いだ。人材確保の難しさには厳しさが増し、協議の末にJVにたどり着いた。(JVは)機動的・包括的警備運営への新たなチャレンジで、今後の五輪の“レガシー”になると確信している。

青山社長の話

人手不足、相次ぐ自然災害、国際テロの脅威など、安全安心のニーズは多様化している。2社が一体となり、さらに理事会社を含めて輪を広げ、業界を挙げてオールジャパンで取り組んでいきたい。これがスタートだ。

厚労省「パワハラ」検討会が報告書2018.4.01

措置「義務化」で紛糾

昨年5月から検討を行ってきた厚生労働省の「職場のパワーハラスメント防止対策についての検討会」(座長=佐藤博樹・中央大学大学院戦略経営研究科教授)は3月27日、報告書(案)を取りまとめた。法律に基づく事業主への措置の義務化か、強制力の弱いガイドラインの明示か――労使の溝は最後まで埋まらず、労使双方の見解が“両論併記”され、今後の対応は労働政策審議会に委ねられた。

検討会は、牧原秀樹副大臣も出席した報告書を取りまとめる最終会合にもかかわらず、最後まで労使の見解が折り合わず紛糾した。

最終的に文言には、「現状の取り組みよりもパワーハラスメント(パワハラ)防止対策を前に進めるべき点で検討会委員の見解が一致した」とした上で、「事業主に対してパワハラ防止のための雇用管理上の措置を義務付け、違反があった場合には行政による指導を法律に規定すべきとの意見が多くあった」と明記した。

一方で、パワハラに該当する行為には不明確さも残り、企業の現場で労使が判断できない中で事業主に措置義務を課すことは、(1)上司による部下への指示や指導の躊躇(2)上司と部下のパワハラへの認識のズレによる必要以上の摩擦――などが懸念されるとし、行政による強制力の弱い「ガイドラインの明示による取り組みの推進が望ましい」との意見も併記した。

同省は今後、議論の場を労働政策審議会に移し、措置義務の法制化やガイドラインの必要性の有無、パワハラへの対応内容などを詰め、早期の防止対策の実施を目指す。

また、議論の中で顧客や取引先からの暴力やクレームなども、パワハラと同じように無視できない状況にあることが明らかになったことから、更なる実態把握と対策の検討を求めた。

同省の実態調査によれば、企業が社内に設けた相談窓口に寄せられた相談で最も多いのはパワハラの32.4パーセント。一方で、パワハラは行った側と受けた側との認識にズレがあるために、その予防や解決に向けた取り組みを困難としている。しかし、パワハラは相手の尊厳や人格を傷つけ、放置すれば職場環境の悪化をはじめ、メンタルヘルス不調など従業員の生産性や労働意欲の低下、企業イメージの悪化、訴訟による損害賠償責任追及による経営的損失など、労使双方に大きな影響を与えかねない。