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クローズUP

〝夏祭り〟を守る2019.7.21

埼玉・桶川

これからの季節、毎週末のように全国各地で行われる夏祭りや花火大会。これら地域のイベントを“縁の下の力持ち”として支えているのが警備業だ。7月15・16日の両日、埼玉県桶川市内で行われた「桶川祇園祭り」では、2010年以降、新日警備保障(志木市、脇川清治社長)が警備を担当。今回は2社の協力会社の助けを借り総勢21人で祭りの安全を担った。

警備開始当初から隊長として現場で指揮するのは黒田和夫警務課長。「約2か月前から実行委員会と打ち合わせを行うなど準備を始めました。場所は毎回同じですが、事前に必ず下見をしています」と、常に万全の体制で臨む。

当日は酔客にも上手に対応できる経験豊富なベテラン隊員を配置するとともに、隊員の熱中症予防のためにイオンウォーターを全員に配布、配置前に強制的に飲むよう指導する。

桶川祇園祭りは、江戸時代の元文3(1738)年から始まる、旧中山道・桶川宿に伝わる伝統ある夏の風物詩。5つの町会の神輿、3町の山車がJR桶川駅近くの旧街道を練り歩く。隊員は神輿の前方と山車の前後に就き、誘導と見物客との接触防止に努める。

最大の見どころは、駅入口交差点に全ての神輿と山車が一堂に会する「神輿担ぎ合わせ」と「山車ひっかせ(曳き合わせ)」。警備の最大の山場でもある。

空港の保安を強化2019.7.21

検査スキルを競う

東京五輪・パラリンピックに向けて空港保安の強化とスキル向上を目的とする「保安検査コンテスト」(主催=国内定期航空保安協議会)が7月9日、羽田空港国際線旅客ターミナル内で開かれた。各地の空港で保安検査を行う12の警備会社などが技量を競い、一般財団法人航空保安事業センターが優勝した。

JAL(日本航空)、ANA(全日本空輸)は個別に保安検査コンテストを行っていたが、昨年から航空会社14社が加盟する同協議会が開催。今回は新たに、X線のモニター画像を見て手荷物を検査する「モニター業務審査」が行われた。

全国65の空港から、15空港16チームの保安検査員が、案内担当と接触検査担当の2人1組で出場した。ライターなどの禁止品を機内に持ち込もうとする旅客、車椅子の利用者、外国人などに臨機応変に対応する様子が「確実・迅速・丁寧」の3つの基準で審査された。

モニター業務審査は、各チームから1人が出場し、手荷物のX線モニター画像を確認して機内持ち込み制限品を正確に発見するスキルを競い合った。

特集ワイド 「自主行動計画」を改訂2019.7.21

全国警備業協会(中山泰男会長)は今年2月、約500社を対象に「警備業における適正取引推進等に向けた自主行動計画」のフォローアップ調査を行い、その結果を受けて6月5日、自主行動計画の改訂版を策定した。全警協総務部次長・小澤祥一朗氏が6月28日に岐阜県警備業協会(幾田弘文会長)経営者研修会で行った説明を元に、同計画の改訂内容を紹介する。

全警協が行った自主行動計画フォローアップ調査の結果、次の実態が明らかになった。

「9割以上の警備業者が人手不足のため仕事を受けられない状況にある」「求人広告など人材確保に向けた取り組みを行っても成果がない」「交代要員がいない、離職者の穴埋めによる勤務時間の増加、業務の合理化の検討がないなどの理由で長時間労働を余儀なくされている」――などだ。

また全警協の調査とは別に、警察庁と国土交通省が警備業者約500社に向けて交通誘導警備業務に関する実態調査を行った結果、1割超の警備業者から「発注がキャンセルされ、人材確保に要した費用が支払われなかったなど、不当な給付内容の変更があった」「約6割の取り引き先との間で、警備計画の確定時期が前日、または定めていないため人材確保に苦労している」――などの声があり、業界にはびこる“取引慣行”が浮き彫りとなった。

2つの調査結果を踏まえ分析した結果、次の取り組みが必要との結論を得た。

▽警備業者が発注者と警備員の処遇改善に要する費用を含めた警備料金の契約ができるように、“価格交渉力”の向上を図る。

▽契約内容のうち“警備業務の変更”に関する事項が明確にされていないことが見受けられたことから、「契約時に盛り込むべき事項」をまとめて活用することも検討の余地がある。

▽警備業者は発注者の需要に応えるためには、警備員の定着化を図ることが大切。

▽働き方改革関連法が施行され時間外労働の上限規制が設けられたことを受けて、休憩時間の問題など見直す必要がある――などの取り組みだ。

これらを推進すべく、全警協は自主行動計画を次のように改訂した。

契約内容に変更が生じた場合の費用が支払われない、契約外業務の無償提供が行われているなどの下請法・独占禁止法違反となる可能性の高い問題の改善に向けて、全警協で契約対象業務の範囲の明確化やキャンセルポリシー(キャンセル時に発生する料金や注意事項)など、業界全体として契約時に盛り込むべき条項をまとめ、活用を促進することを明記した。

具体的な追加項目として、「警備料金の決定方法の適正化および警備業者の価格交渉力の向上」という項目を設け、次の内容を加えた。

▼契約内容の明確化=契約内容(契約対象業務、警備業務の計画の確定日、変更が生じた場合の支払いなど)の明確化を図るため、当協会(全警協)において、別途見積関係書類記載例を作成するので、それを活用する。

▼協議による解決=契約交渉や契約内容の見直し協議に当たっては、発注者側において権限を有する者に対し、問題点を伝えた上で取り引き上の課題の解決を図る。

定着率アップめざす

フォローアップ調査で約93パーセントの警備会社が「警備員が不足しており仕事を新たに受注できない状況にある」と回答した。またクレームによる精神的な負担により、警備員が退職するケースも見受けられた。「人材確保と定着」の事項に、警備員の定着率アップを図るため、次の取り組みを追加した。

▼体力、年齢、家庭の事情等の警備員の個性等に応じた多様な働き方(勤務日数、時間等)の提供に努める。

▼クレームへの対応については、個人任せにせず、組織的に対応するなど、警備員の精神的な負担の軽減に努める。

働き方改革に対応

警備員は、休憩時間中でも出入管理や緊急事態への対応を求められた場合、そのほとんどを拒否できない実態があり、長時間労働を誘発しているだけでなく労働基準法違反となる。働き方改革関連法で時間外労働の上限規制が設けられたことを踏まえて要請する必要がある。

付帯業務を強要された場合、警備員個人では断れない状況が多い。付帯業務をサービスの一環として容認する場合は、契約書に明記して料金アップの材料とすることが大切だ。「長時間労働の是正」の項目内容で、次の取り組みを記載した。

▼警備会社が休憩時間と定めていても、警備員が来訪者や電話に対応せざるを得ない場合は、労働基準法上、休憩時間とは認められないことを踏まえ、発注者との契約内容や警備業務の計画について、確実に休憩時間が取得できるものとなっているかなどを点検し、問題がある場合は、契約内容や警備業務の計画の見直しを要請する。

▼警備会社は、警備員の人数や労働基準法上の労働時間規制から、受注可能な時間を把握するよう努める。

▼警備業務の現場について、現場の判断で契約外の業務を行っていたり、不要な居残りを行っていないかなどを点検し、問題がある場合は発注者側と協議する。