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クローズUP

プロ野球キャンプ警備2021.03.01

沖縄・琉球保安警備隊

琉球保安警備隊(沖縄県名護市、宮里和政社長)は2月6日から28日まで、「沖縄セルラースタジアム那覇」(沖縄市)で行われたプロ野球・巨人の春季キャンプを警備した。

県内では、巨人を含む9球団がキャンプを実施。新型コロナ感染予防のためいずれも無観客で行われ、県内の警備会社が警備を行った。巨人はキャンプのあと、他球団と「練習試合」の名目で6試合を行い、琉球保安警備隊が引き続き警備を担当した。

同社の警備員は、球場とブルペン、サブグランドの入場口で、関係者以外の入場がないようチェックした。警備体制は、15日まで警備員8人、16日以降は22人を配置した。

警備の統轄責任者を務めた同社警備部・清水勉課長は「当社のプロ野球春季キャンプ警備は8年目になります。県内の感染者数は落ち着いてきていますが、油断しないで全国警備業協会の感染予防対策ガイドラインに沿って取り組みを徹底しました」と語った。

同社は「吉の浦公園ごさまる陸上競技場」(中城(なかぐすく)村)で行われたJリーグのガンバ大阪、川崎フロンターレの春季キャンプの巡回警備も実施した。

特集ワイド2021.03.01

内勤者の感染対策

警備会社にとって、人事や総務などの内勤者の感染予防は、警備員同様極めて重要である。ウェブ会議システムを会議や採用のための面接などさまざまな場面で活用し、人との接触をできる限り回避している。どうしても対面せざるを得ない場合は場所を選びリスクを軽減させるなど、さまざまな警備会社の取り組みを取材した。

KSP(東京都墨田区、三角栄二郎社長)は内勤者向けの感染対策として、ウェブ会議システム「Zoom(ズーム)」を採用している。「Zoom」導入により、会議を実施する本社や営業所のような拠点への移動がなくなったことや、在宅勤務が可能になったため、同社の内勤者にこれまで感染者は発生していない。

三角社長は、ウェブ会議システムを採り入れた理由を「当時はまだ国内での感染は限られたものでしたが、危機管理の基本的な考え方である『大きく構えて小さく収める』に則りました。社内では会議は一堂に会して行うべきだとの意見もありましたが、事務所内で感染が拡大すれば現場を管理することができなくなり、事業活動が止まってしまいます。影響の大きさを考えると、採用にためらいはありませんでした」と述べた。

「Zoom」を用いる対象は、役員会や幹部会、各支店の営業担当者が集まる営業ミーティング、支店内会議など、これまで集合して行っていた全ての会議。同社では内勤者の出社比率を5割に抑えており、自宅から会議に参加する従業員もいれば事務所から参加する人もいる。各自が社内で使用しているノートパソコン、もしくは全ての内勤者に貸与しているスマートフォンを用いて行う。

三角社長は「コロナ禍以前から、在宅勤務や週休3日など当社ならではの『働き方改革』を行いたいと考えていました。これまでは社内の賛同が得られなかったのですが、この機会にできることから着手しました」とも語っており、業務に支障がないため、コロナ収束後もウェブ会議と在宅勤務制度を継続する予定だ。

感染対策だけでなく移動時間の削減や発言が簡潔になるといった効果を上げている。対面ならではの“空気感”や“熱量”を感じることはできないが、感情的にならず冷静に議論できるようになり、会議に要する時間が大幅に短くなったという。特に役員会や幹部会はさいたま支社(さいたま市桜区)で行っていたため、本社(墨田区)と横浜支社(港北区)からの参加者は時間を大幅に節約することが可能となった。

「Zoom」で面接

セキュリティ(埼玉県所沢市、上園俊樹代表取締役)は2月から、警備員の採用面接に「Zoom」を導入している。2度目の緊急事態宣言の期間延長が決まり、解除の見通しも立たないことから、できるだけ非対面による採用活動を行いたいと考えたためだ。

同社ホームページや求人募集サイトを通じて連絡のあった求職者に、採用担当者と求職者の感染を防ぐことを目的に「Zoom」による面接を提案。これまでに20〜40代の3人に対して面接を行った。

対面での面接と質問内容や所要時間は変わらないが、警備業務は立ち仕事が多いため、応募者に立ち上がってもらい軽く運動してもらう。面接の合否は「Zoom」による1回で決める。

同社で採用を担当する藤根路子取締役は「昨年から『Zoom』を使って社内会議や朝礼を行ったところ、画質と音質が非常に良く、面接にも使用できると考えました。若い世代の応募者の面接はできるだけウェブで行う予定です」と述べた。

ウェブ会議システムに不慣れな年配者の面接は、採用担当者が応募者の居住地の近くまで出向いての“出張面接”を行っている。出張面接自体は2019年から行っているが、感染を恐れて外出や電車移動をためらう人が多いこともあり、昨年は19年の50回から80回に増加、10人を採用した。

対象となるのは、横浜市保土ヶ谷区の大規模マンション建設工事現場や東京都港区の大規模マンション建設工事現場など、多数の交通誘導警備員を必要としている現場近くからの応募者だ。同社は採用効果を高めるため、それらの現場近隣の住宅に警備員募集のチラシを配布する採用活動を行っている。

面接会場は応募者の希望する駅近くの喫茶店で行っていたが、首都圏の感染者が大幅に増えた夏以降は不特定多数の人が集まる喫茶店での面接は中止。現在は市役所の会議室や民間の貸会議室を借りて実施している。

会社負担で緊急通報装置配布
広島のリライアンス・セキュリティー

日常生活での感染や健康不安を取り除く――。2019年から「社員の健康と命を守る経営を貫く」を経営スローガンに掲げるリライアンス・セキュリティー(広島市、田中敏也社長)は3月1日、コロナ禍をきっかけに健康不安に対して敏感になった従業員に安心して生活してもらうため、大手警備会社が提供する24時間緊急通報装置を希望する20人に配布した。契約は各人で行うが、料金はリライアンス・キュリティーが負担する。

きっかけは、田中社長と高齢の警備員との会話だ。警備員から「感染症による死亡や後遺症の報道に接し続けた結果、自分も突然、体調に異変をきたして倒れてしまうのではないかと不安です」と聞き、採用を決めた。

装置を希望した人のほとんどは60歳以上の「高齢警備員」だ。

装置は高度な位置検索システムを備えた手のひらに収まるサイズ。押しボタンを押すと大手警備会社が発信者の名前と位置を確認し、リライアンス・セキュリティーに連絡。同社は緊急通報した従業員に電話連絡して状況を確認。必要があると判断した場合は、本人もしくは同社が大手警備会社に駆け付けを要請する。

2月14日には、内勤者と警備員の外出機会を減らして感染を防ぐため、200人の全従業員に3300円相当の冷凍食品を自宅へ配送した。内容は、五目いなりと肉巻きおにぎりなど、ご飯もの32個だ。

同社が業務を手掛けている広島、岡山、兵庫では感染者数は減っているが、依然として飲食店で感染するケースが多い。田中社長は従業員にはできるだけ外出は避けて外食しないように要請しているが、一人暮らしの人も多いため、少しでも力になればと考えて配布を決めた。

田中社長は「冷凍食品を配るだけで感染を防ぐことができるとは思っていません。しかし、会社が従業員の感染予防に知恵を絞っているというメッセージを出すことで、日常生活でも注意してほしいと思いました。実際に従業員の外食回数は減っているようです」と述べた。