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視点

人材急募 「企画力」で求職者呼びこむ2017.8.21

これから年度末にかけて、公共工事の繁忙期を迎える。2020東京五輪・パラリンピックをはじめとする国際イベントに向けた工事ラッシュによって、交通誘導警備員が昨年以上に不足すると懸念されている。「自家警備」問題が警備業界に波紋を投げ掛けており、警備員不足は一刻も早く解消しなければならない最重要課題となった。

各都道府県の警備業協会は、さまざまな取り組みを進めている。愛知警協は、「ハローワーク名古屋中」の人材確保対策コーナーと連携し、施設常駐警備の現場見学会・説明会を行った。

神奈川警協は9月に、横須賀市の主催で3年以内に退職予定の海上自衛官、陸上自衛官を対象に行う「合同企業就職説明会」に参加する。自衛官の定年は53歳で、一般企業と比べて早期退官することから、「ハローワーク横須賀」などが共催して就職説明会を開く。神奈川警協と県内の警備会社7社はブース出展して、警備業への再就職者を募る。

一方で、イベント開催の中で効果的に人材確保につなげる取り組みも始まっている。福島警協が7月に開催した「第2回セキュリティ・ジョブ・フェア」の成功は、業界にとって好事例となった。初開催の昨年は特別講習講師による模範演技が中心の内容で、全国的に減少している特別講習の受講生が県内で増加する成果があった。今年は模範演技は継続しながら、広く一般の来場者に向け警備業のイメージアップを図った。

大会実行委員の福島警協と「しゃくなげ青年部会」は、フェアの目的として“警備員確保”を掲げ、事前にハローワーク郡山に出向いて大会ポスターやパンフレットの設置を打診した。同ハローワークではフェアの趣旨に共感し、話を聞いた福島労働局からは「慢性的な人手不足に悩む業種の参考にさせてほしい」との要請があったそうだ。

フェア当日は、趣向を凝らした企画で盛り上がった。警察音楽隊の協力による生演奏や「ウルトラ警察隊パトカー」展示、防犯用ネットランチャーの試し撃ち、カラーボールの投てき体験など、大人から子どもまで楽しめる内容だ。模範演技を行った警備員の家族は招待され、子どもたちはお父さんの警備服姿を見るよい機会となった。そして会員10社が専用コーナーに「会社案内」を置き、警備業に興味を持った人に業務の説明を行った。

同様に、宮城警協が10月に開催する「第8回警備業セキュリティー・フェア」では、「青年部」が中心となり人材確保に向けた新たな取り組みを予定している。県内大学の学生に警備業を体験してもらう企画で、これをインターンシップ実習と位置付ける検討もされているという。大学とのコラボレーションにより新卒者確保を図る、業界初の画期的な試みになりそうだ。

これから一層進む少子高齢化により、業界内ではなく業種同士で人材の奪い合いが加熱していく。そこで勝ち残るためには、東北2県協会による「イベントで盛り上げながら募集を図る」など、柔軟で型にとらわれない発想を基に知恵をしぼった「企画力」が勝負の鍵を握る。

「11月1日・警備の日」はそのチャンスである。社会に向けた警備業のアピールと共に、人材確保への積極的なアプローチを期待したい。 

【瀬戸雅彦】

若者確保 警備業の認知度を高めよう2017.8.1

10.3パーセント――これは警備員に30歳未満が占める割合だ。警察庁が7月に公表した「平成28年における警備業の概況」によると、警備員54万3244人のうち、30歳未満は男性4万6943人、女性8794人で合わせて5万5737人となっている。

前年に比べて警備員の総数は0.9パーセントの微増(4897人増)となった。しかし30歳未満に限っては2210人も減少している。各業種で若い人材が奪い合いとなる中で、若年層を1人でも多く警備業に振り向かせる取り組みを一層進めなければならない。

取り組みの一つに<警備業のアピール>がある。福島県警備業協会は7月に、2回目となる「セキュリティ・ジョブ・フェア」を開き、警備業務のデモンストレーションを行って地域の人々にPRした。今回、同警協の「しゃくなげ青年部会」のメンバーが事前に高校を訪問してポスターやチラシを配布し、来場者を増やしている。

宮城県警備業協会が10月に開く「警備業セキュリティフェア」は新たな企画として、学生が参加して警備員の制服を着たり護身術を学ぶなどの“警備業体験”を検討中だ。清水俊弘青年部長(コスモ警備代表取締役社長)は、「もっと警備業について知ってもらうことが必要です。特に安全を守る職業、警察官や消防官などを志望する学生さんが警備業に目を向けて、職業選択の幅を広げてくれたらと考えています」と意図を話す。

就職情報会社の調査によれば、若い求職者は“自分が知っている仕事”に応募するという。例えば店舗での販売となれば、働いた経験がなくても身近な仕事で内容がわかる。その点で警備業は、まだまだ知られていないと言えるだろう。警備は施設、交通誘導、雑踏、貴重品運搬、身辺警護などの種類があり、警備員は法定教育を受けて専門の知識と技能を身につけ、警備業務検定という国家資格を持つ人がいることを、より多くの人に知ってほしい。

求職者は応募を検討する際に会社のホームページを確かめることが多い。業務の紹介に加えて現場で働く隊員の言葉、働きがいなどを掲載することもアピールになる。逆に、ホームページを立ち上げていなかったり、内容が簡素すぎては求人面で遅れをとるだろう。

警備員に寄せられた外部からの評価をホームページで紹介する会社もある。日本信託警備(愛知県蒲郡市)は、ユーザーや一般の客から警備員に寄せられた“感謝の言葉”などを随時、更新している。例えば、市民病院に入院して怪我のリハビリのため松葉杖で歩行練習する男性から同社に届いた葉書は、次のような内容だ。

「救急外来の窓口の前を通るたびに、いつも警備員さんから『こんにちは』と明るく声を掛けられ、『頑張っていますね』と激励されます。めげそうになる自分に元気を与えられます。早く退院して仕事に復帰したいです」。

同社の梅田重則代表取締役社長は、「警備員がどのように人の役に立っているか、情報発信を重ねることで警備業に対する理解が深まってほしい」とホームーページの趣旨を話した。

人手不足の対策に“特効薬はない”と言われる。警備業についての認知度を地道に高めながら、警備員の処遇改善や職場環境の改善を着実に進めていくことで、振り向く若者は増えるに違いない。

【都築孝史】