警備保障タイムズ下層イメージ画像

視点

家族の応援 広がれ“婚活の輪”2017.3.21

大阪市にある東洋テック本社の駐車場で、今春に小学校へ入学する丹下隼斗(はやと)君が「父の仕事」を真剣に見つめている――やや旧聞に属するが2月18日、同社グループの4回目となる「業務実技大会」が開かれ、警備や監視センター、清掃など8つの部門で出場者が技能を競い、駐車場では貴重品運搬警備部門の審査を行っていた。

隼斗君の視線の先には、ヘルメットと警備服に身を包み「18」のゼッケンを付けたお父さんがいる。警送部輸送課の丹下智仁さん(35)。妻のいづみさんが、隼人君の隣でデジカメを構える。丹下さんは第1回と3回の優勝者で、毎年母子で応援に来ている。

周辺を警戒しながら、車両から降ろしたジュラルミンケースを、同僚とともに運搬するお父さん。そこへ武器を持った暴漢が飛び出した――訓練だとわかっていても隼人君はドキドキしただろう。

警戒棒を構えた丹下さん。同僚が別の暴漢に襲われ足を負傷して倒れたという設定で、丹下さんは同僚の安全を確保しながら警察に通報し、犯人の特徴や逃走方向などを迅速に伝えた。

実技が終わった後、感想を聞いてみると、隼斗君は少し照れている様子。いづみさんは、こう言った。「パパは一番カッコいいね」。隼斗君はうなずいた。

いづみさんによると「息子はお父さんのことをヒーローと思っていて、将来は、<パパみたいに人を守れる人になりたい>と言っています」。今回惜しくも入賞を逃したが丹下さんは、「家族に応援してもらうと、より一層の励みになります」と話した。

警備業に限らず、あらゆる職業で家族の応援や支えがもたらす力は大きい。家庭を持つことで仕事へのモチベーションが更に高まり、健康管理にも留意する。

あこがれる職業に

家族を養う上で、警備員という職業は処遇や雇用の安定性などで厳しさに直面するケースもある。そもそも異性と出会う機会が少なく独身者も多い業種。そこで警備員のために婚活パーティーを開催しているのは宮城県警備業協会の青年部だ。

参加する男性は、事前に開かれるセミナーでファッションモデルの女性と会話して、マナーや会話術など“男子力”を高めるアドバイスを受けて自分を磨き、自信を深めてからパーティーに臨む。単にイベントとして出会いの場を提供するだけでない、本気の婚活支援である。

3月2日に全警協で開かれた初の「全国青年部会長・女性部会長合同会議」では、各地の部会長から、このパーティーへの質問が集まり、関心の高さがうかがえた。

「警備業は安全安心を守って社会に貢献する重要な仕事でありながら、“結婚して家庭を持ち、家を建てる”ことが給与面でままならない現状もあります」と清水俊弘青年部長(コスモ警備)は指摘した後、思いを語った。

「警備業をもっと盛り上げて、将来、<子供たちがあこがれる職業ランキング>の上位に来るようにしなければならない、というのが宮城警協青年部の思いです」。警備をしている父は(母は)誰よりカッコいい――そう感じる子供たちが、もっと増えてほしい。警備員の家族や身近な人を通じて<警備業の魅力発信、認知度アップ>が広がることも期待される。

【都築孝史】

青年・女性部会 未来に向けて挑戦しよう2017.3.11

「青年・女性部会」の皆さんには、3つの言葉を贈りたい。「挑戦(チャレンジ)」、「少数(マイノリティ)意見」、そして「尊敬(リスペクト)の念」である。

警備業は50余年の年輪を重ねた。〈未来を見据えたテーマとは何ぞや〉と問われたら、私は<社会的なステータスを高める挑戦>と答えたい。 

そこでは、これまでの慣習にとらわれない柔軟な若者の感性、女性ならでは発想が求められる。青年と女性の出番である。次の半世紀に向けて一歩を踏み出した今、貴方たちは、警備業の「働き方改革」の担い手になってほしいのだ。

ここで言う挑戦とは、失敗を恐れず、新しいものを作り出す創造と受け取ってもらいたい。

例えば、労働力需給の目安とされる有効求人倍率。警備業のそれは、「6」を超えるという。若い人たちは、警備業に何を求めているのだろうか。どんな業界であってほしいのだろうか。

昨秋、愛知警協の青年部は、30周年記念式典でアンケート調査を発表した。その中の一つに「離職理由」があった。「賃金に不満」、「ストレスが大きい」、「仕事が面白くない」など、極めて参考になる結果が出た。

それでは、賃金を上げるには? ストレスを解消するには? 仕事を面白くするには? 若者が警備業を就活の職種にするには?――同青年部会には、調査結果を受けた次の段階、具体的な方策の提言を期待すること大である。

さまざまな課題を議論するうえで大事にしてほしいことがある。少数意見、少数派に対する対応だ。「何、それ?」と多数決で埋没した突拍子もない提案であっても、実は、将来の警備業界にとって、貴重な課題克服のヒントになるやもしれない。

少しオーバーに言えば、民主主義の歴史を見ると、かなりの部分において、正しさは少数によって始まったのではないかと思う。要は異端的な少数意見発表の自由を認め、そうした意見を引き続いてのテーマにしてほしい。

先日の合同部会後に行われた意見交換会は、本音を交わすことができ、大変に面白かった。参加メンバー、とりわけ青年部会長の各氏は、二代目の経営者が多かった。私はこんなことを言った。

「皆さんの父上は会社創業のころ、脇目も振らずに“飛び込み営業”。寸暇を惜しんで業容の拡大に励まれたはず。その労苦があっての今日じゃないでしょうか」

次のような言葉が返ってきた。「オヤジのことは、リスペクトしていますよ」、「僕らは、今の会社を土台に、時代に合った警備業を目指したい。焦らずやります」。頼もしい思いが胸に広がる一夕だった。

【六車 護】

小紙は「3月11日号」で創刊5周年を迎えました。“紙齢”は166号を重ねました。

平成24年の早春、会社が設立されたときが思い出されます。東日本大震災から、間もなく1年を迎えようとしていました。

国民の安心と安全を担う警備業界新聞の創刊号は「3・11」。この日をおいてほかにはない、そう決めたものでした。

そして今日。皆さまのご支援とご協力があってこそ、積み重ねることができた“紙史”であります。ありがとうございました。

これからも業界発展の一助となりますよう、鋭敏な感覚で情報の発信を心掛けます。よろしくお願い申し上げます。

労働時間 働き方が問われている2016.3.1

「労働時間」をめぐる議論が活発だ。

きっかけは、言うまでもなく、大手広告代理店「電通」で発生した、若い女性社員の自殺。昨秋、労働基準監督署は、これを「長時間労働による過労自殺」と断じ、労災支給を認めた。この“事件”により、「長時間労働 NO」の声が高まった。

議論の場の中心は、「働き方改革実現会議」。安倍政権の“最重要課題”のひとつとなった。

現行の労働基準法では、1日8時間、週40時間を超える労働(残業)を禁止している。これを超えた残業のためには、労使による“36協定”の締結が必要だ。

しかし、その残業時間には「月45時間以内かつ年360時間以内」と“枠”がはめられているものの、法的な強制力はなく、これが残業時間の“青天井”を可能とし、長時間労働の温床となってきた。心当たりのある警備業経営者も多いはずだ。

そこで政府は、36協定で可能な残業時間「月45時間以内かつ年360時間以内」を法律に明記し、これを上回った場合には罰則を課す。特例として残業時間を延長する場合でも、年間720時間・月平均60時間を“上限”と定め、労働時間の総量を規制する考えだ。

さらに、この大枠の中で、年度末や棚卸など繁忙期の〈臨時的な特別な事情〉がある場合の更なる残業時間の延長を認め、その時間は使用者団体と労働組合側が「月100時間」で合意しつつある。

警備業と生産性向上

長時間労働の是正と同時に議論されているのが「労働生産性の向上」だ。例えば、これまで10時間要していた仕事を、8時間で収める訳だから、仕事の進め方・やり方の見直しは欠かせない。

警備業の生産性の向上はどうか。

内勤部門の生産性向上は可能だろうが、現場の警備の生産性向上には大きな壁が立ちはだかる。だからと言って、「午後5時以降の交通誘導はできません」「午後8時以降は駆け付けられません」「日曜日のイベント警備お断り」――では、事業は成り立たない。

長時間労働の是正は、全産業に突き付けられた課題であり、「警備業はムリ」は通らない。

施設警備では、新たな警備機器の開発や既存機器の活用などによる省人化、交通誘導警備では、短期間で一括施工される工事への対応など、あらゆる可能性・事態を想定し、備えておくことが必要だ。労働時間の削減が可能な警備計画の提案も欠かせない。今こそ業界を挙げて知恵を出し合う時だ。

また、忘れてならないのが賃金体系の見直し。〈長時間の残業なしでは生活できない〉賃金体系では、労働時間の削減も生産性の向上も実現できない。

大手企業の中には、残業代の減少を、基本給見直しなどでカバーしている例もある。警備業では、業務に更に付加価値を付け、それに見合う警備料金を確保、賃金減少に対応していくことが現実的だろう。ただでさえ、「長時間労働と低賃金」と揶揄される警備業。放置していたのでは、業種間格差がますます大きくなり、若者から見捨てられてしまう。

現在、議論されている長時間労働是正の根底にあるのは、働き方の改革。警備業の新たな働き方、あり方が問われていることを忘れてはならない。

【休徳克幸】