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視点

人手不足 イメージ向上、工夫が必要2018.5.21

警備員不足が深刻だ。「保安の仕事」の有効求人倍率は3月、6.83倍と昨年同月の6.37倍を上回っている。「警備員」に限定すれば7倍を超えるだろう。

本紙既報のとおり国は今年度、警備業への支援を強化した。全国12か所のハローワークに設置していた「人材確保対策コーナー」を84か所に拡大した。警備業協会と連携した会社説明会やミニ面接会、現場見学会などの取り組みが各地で始まった。

東京警協は、東京労働局に呼び掛け「人材確保対策コーナー」を設置している都内7か所のハローワークの担当者に向けて、警備業の仕事内容について説明を行う。担当者に理解を深めてもらい、警備に関心がある求職者の就業につなげるためだ。

大阪警協は今年2月、労働局と連携して人手不足が深刻な建設・福祉・運輸の3業種とともに、大阪市内の高校1年生を対象に業務説明会を実施した。就職まで期間がある今のうちに警備業について知ってもらい、就職先の一つに検討してもらう取り組みだ。

厚生労働省が4月から順次、都道府県労働局に設置している「働き方改革推進支援センター」は、業種を問わず中小企業や小規模事業者に社会保険労務士が課題解決の支援を無料で行う相談窓口だ。「人手不足を解消するためにどうすればよいか」、「賃金アップに活用できる国の支援制度を知りたい」などの相談に無料でのってもらえる。

また厚労省が昨年度、人手不足が課題となっている警備を含む4業種を対象に社労士による無料コンサルティングを行った結果をまとめた「人材確保に効く事例集」は、ネットで自由に閲覧できる。警備会社の事例としては「1号が主業務の警備会社A」と「2号業務が主業務の警備会社B」の2社が紹介されている。社労士がどのような分析と提案をしたか参考にしてもらいたい。

こうした雇用促進に向けた取り組みとともに、人手不足改善のために業界として取り組むべき課題は、警備業のイメージアップだ。「3K(きつい、汚い、危険)+K(給料が低い)の4K」と言われる悪いイメージを変えていく方策が求められている。

「11月1日・警備の日」の各協会による社会への業界の広報活動は定着してきた。東京警協は青年部会が企画・運営の中心となり、10月28日に都内の校舎を会場にした“警備フェア”を計画している。 こうしたイベントは、子供や家族ぐるみで参加してもらい、体験コーナーを設けることが効果的だ。工夫を重ねたインパクトのある企画と、メディアを巻き込んだ広報が勝負どころとなる。

全警協は警備業のマスコットキャラクターを企画していて、デザインを募集中だ。11月2日「警備の日・全国大会」で結果を発表する予定で、最優秀賞には30万円の賞金が用意されている。警備業のイメージアップにつながる斬新で親しみが持てるキャラクターの誕生が期待される。

人手不足対策は、ハローワークと連携した雇用促進、業界のイメージアップ、そして適正料金を確保し経営基盤を固めて職場環境を改善する努力が肝心だ。各地でスタートした定時総会は、会員が一堂に会する絶好の機会だ。有益な情報を交換し、意識を共有して、なんとしても警備業界に人材を呼び込みたい。

【瀬戸雅彦】

新入社員 「孤立させない」先輩の役割2018.5.01

4月初めに各地の警備会社の入社式を取材して、新入社員の声を聞いた。

「人を助けたり、役に立てることを目指して、安全を守る仕事に取り組みたい」(福島県郡山市・高卒男子)。東日本大震災の時に自衛隊の救援活動を見たことをきっかけに、地域の人々や暮らしを守る職業に関心を持つようになったという。

「旅行して無事に目的地に着けることをありがたいと感じ、空港の保安検査の仕事に興味を持った。1号から4号の警備業務について知ると、安全安心は、世の中のあらゆることにつながっているとわかります」(東京都・専門学校卒女子)。専門学校で有機農業を学んだが、中学生の時から空港で働くことに憧れがあり、得意な英語を生かして空港の“警備なでしこ”として頑張ると話した。

ほかにも「人に感謝される仕事をしたいと考えて、父の意見も聞いて決めました」「柔道部女子マネージャーの経験を生かし、内勤者として警備現場の人を支えたい」など、皆それぞれの思いを胸に張り切っていた。

人手不足に悩む企業にとって切実なのは、新入社員に長く定着してもらうこと。全国各地で新人は、新任教育をはじめ各種の訓練、初の業務などに緊張して取り組んでいる。ゴールデンウイーク明けは、新しい環境に適応しようとした心身の疲れが出やすい時期で、職場でのケアに注意が必要だ。

今の20代は、ゆとり世代の後を受けて“さとり世代”と呼ばれる。あまり欲がなく、現実を悟ったように見えることに由来し、考え方は合理的で大きな夢を持たない傾向がある。また、ツイッターやLINEなどSNSを介する人間関係に慣れている。上司が年の離れた新人を指導する際は、こうした世代の特徴と本人の性格をつかむことが大切になる。

新入社員の早期離職や職場でのトラブルを防ぐ方策の1つに「孤立させない」ことがある。例えば警備先のチームで新人が、父親あるいは祖父の世代の高齢者にこまめに声を掛けられて次第に打ちとけてくると、親に話せないことを相談する場合もある。はつらつとして見えて、内心で不安を抱えているのが新人だ。質問や相談をしやすい雰囲気をつくって孤立を防ぐために、人生経験が豊かな年配者の役割は大きい。

また、訪日外国人の急増や社会の超高齢化に伴って、警備業は外国語対応や福祉面のサービス強化をますます求められる。新人が「語学と福祉」に興味を持って積極的に学びたくなるような研修を継続すれば、定着し長期的な戦力となる人材が育つに違いない。

業界全体では、若年層の確保と定着に向けて、まだまだ課題が横たわる。先日ある会合で人手不足の厳しさが話題になった時、中小の経営幹部が、ため息まじりにこう言った。「実際の話、若い人たちが夢や希望を持って入ってくる業界になるのは、難しい」。

その原因として他業種に比べた賃金の低さや、長時間労働など職場環境の問題がある。長く言われているが適正料金の確保によって、処遇改善と労働環境の整備を一層急がねばならない。

これまで以上に、若者が夢や希望を持って入ってくる業界としてステップアップを図る時である。新人の定着を促進することは、より多くの新人を呼び込む土台づくりになるはずだ。

【都築孝史】