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視点

離職防止2019.9.11

クレーム対応、会社の責任

各地の警備業協会の研修会などを通じて、全国警備業協会が作成した「自主行動計画」改訂版の周知活動が進む。「価格交渉力の向上」をはじめ、働き方改革に対応した長時間労働の是正など、業界が抱える課題の克服に向けた“羅針盤”となって、特に2号警備がメインの企業へ一層の浸透が求められる。

この改訂版の中に「人材確保と定着に向けた取り組み」として、次の項目が加わった。「クレームへの対応については個人任せにせず、組織的に対応するなど、警備員の精神的な負担の軽減に努める」――。

この項目が付け加えられたのは、自主行動計画のフォローアップ調査の中で、警備員が離職する原因の1つに現場でのクレームをめぐる問題があると明らかになったためだ。

なぜ離職につながるのか。例えば工事現場で、ユーザーの現場監督などから「車両を誘導する動作が小さくわかりにくい」「歩行者への案内が不十分だ、声が小さい」等々、強い口調で警備員がクレームを受ける。これを警備員が自社に報告すれば、会社側は、指摘を受けた部分について指導できる。しかし、報告せずに対応しようと1人で抱え込んだ結果、心の負担となって追い込まれ、退職してしまう場合があるのだ。

対応を“個人任せ”でなく、組織で行うためには、警備員がクレームを抱え込まずに報告することから始まる。現場で起きた事象を上司に話しやすい環境づくり、現場と内勤が情報共有を図るようコミュニケーションを深めたい。

報告を受けた管理職は、ユーザー側の不満や要望をヒアリングし、警備員の思いも聞いた上で、丁寧な教育指導を行ってほしい。クレームの中に業務サービスを向上させるヒントが含まれることもある。真摯に対処すれば顧客満足度のアップにつながる。

万一、警備員がユーザー側から受けたクレームに怒声や暴言が伴っていた場合は、ユーザーに対して再発防止を求めなければならない。警備員のストレスを軽減し、メンタルヘルス対策を図る一環だ。「どんな口調で言われたか、度が過ぎる言葉はなかったか。隊員に確かめて、気持ちよく働ける職場環境を心掛けている」と話す中小の幹部もいる。

クレームは、ユーザー関係者に限らない。施設警備では利用客が、交通誘導警備では通行人やドライバー、建設現場の近隣住民などが「警備員の言葉遣い、接遇態度」などに不満を述べることがある。

重要なのは、ここでも警備員が個人で抱え込まないことだ。首都圏で2号警備を行う会社から、こんな事例を聞いた。交通誘導中の警備員に対し「持っている誘導灯がサイドミラーをこすって傷が付いた」とドライバーが数千円の修理代を要求した。警備員は、会社に迷惑をかけたくないとの思いから上司に知らせず、個人で払おうとした。すると後日、相手は「ミラーを交換する」と10万円以上を要求してきた。警備員は上司に相談。管理職が出向いて相手と交渉し、不当な金銭の要求を拒否して収まったという。もし会社に打ち明けなければ、問題はこじれた可能性がある。

対応は、初動が肝要だ。現場で問題が起きた時、会社は警備員のために責任を持って行動すべきだ。企業は価格交渉力に加え、クレーム対応力も一層高めてほしい。

【都築孝史】

防災の日2019.9.01

警備員は「防災士」資格を

「防災士?」はて?…今号の当欄、テーマを「防災の日」と決め、正確な由来をネットで確認しようとしたときのこと。「防災士」なる3文字が目に留まった。寡聞の身には初めて知る語句だった。

改めて検索すると文頭には、こちらの意図を見透かすように「防災士ってなに?」のタイトル。続いて「防災士制度とは」「認定を受けるには」「どんなことを学ぶのか」「何ができるのか」。文末は「防災の輪を広げよう」とあった。

大ざっぱにまとめるとこんな具合だ。資格制度は2003年度から始まった。NPO法人「日本防災士機構」が講習や試験を受けた人を認証する。その数は当初、年に千〜6千人だったが、昨年度は2万人を超えて累計は17万6280人となった(7月末現在)。近年の相次ぐ災害が背景にあるのは明らかだ。

講習では、過去の災害の教訓を基にした防災訓練の運営、率先避難の具体的な行動、ボランティア活動のノウハウなど、安心・安全のための知識や方法を学ぶ。一部に地学、行政といった専門的な科目もあるが、すべてが防災に関連する項目で、活動に役立つものであると言っている。

認証には年齢、性別などの制限はなく、だれでも取得できる。資格取得者は地域の自治会を中心に、女性、学生にも広がっている。最近では、企業の災害危機管理担当者が名刺に「防災士」と記載しているという。

認定までの費用は、教材費、研修費、合格後の登録費などを合わせ5万円程だ。同機構のHPには活動が紹介されている。ちなみに、会長は元警察庁長官・國松孝次氏、理事長は元消防庁次長・高田恒氏が引き受けている。

警備業は地域安全の担い手

警備業界は大雨や土砂災害で甚大な被害が発生したとき、被災地の侵入犯罪を防止する駐留警戒やボランティア・パトロールを県協会の主導で実施してきた。先駆けは広島警協で、5年前に死者・不明者77人の惨事となった広島市土石流災害時に警戒活動を行った。

翌年には関東・東北豪雨による鬼怒川の決壊で茨城警協が続いた。昨年の記憶に新しい西日本豪雨では岡山、広島、愛媛の3県警協が災害に関わる犯罪防止の支援を展開した。その取り組みは、市民生活の安全と安心を担う警備業の面目躍如だったのだ。

ある光景が思い浮かんだ。警備員が「防災士」の資格を取得して地域防災に参画する姿である。それは非常時に限らない。防災計画会議などに出席して、警備業の視点から意見を述べる。

例えば、率先避難の具体的な行動のアドバイス。安心安全の知識の説明。各種ボランティア、警戒パトロールの実施に関するPRなどであろう。

盆休みの最中、超の字がつく大型台風10号が西日本を縦断した。テレビ各局は、気象庁の発表した警戒の最上位「レベル5」を表示して、「命を守るための最善の行動をとってください」と連呼したものだ。

ただし、「自分の命は自身で守れと言われても、何をしていいか分からなかった」という声は多かった。避難を余儀なくされたとき、防災士から習った具体的な行動の心得があれば、命を守る決め手になるだろう。

警備業界は、人手不足の只中にある。防災士として認証を受け、活動するのは容易ではない。まずは、現場のリーダーでよい。防災士として汗する警備員の姿は、警備業が地域に寄り添い、防災の現場にいることで、業界の認知度やステータスの向上につながるはずである。

【六車 護】