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視点

女性活躍2019.7.11

「警備なでしこ」チームを

全国の警備員55万4517人のうち、女性は3万4064人――。警察庁が公表した最新の「警備業の概況」(2018年)によると、女性は前年に比べて897人増えたが、それでも全体の6.1パーセントにとどまっている。

業界内外へのアピールを目的に女性警備員の愛称「警備なでしこ」が「警備の日」全国大会で発表されて、1年半余り。県内の警備なでしこ倍増を目標に掲げる岐阜県警備業協会は「女性警備員の制服デザイン」を8月末まで一般公募するコンテストを行うなど、新たな取り組みが行われている。

女性の利用者が多い施設の巡回など、警備先によっては男性よりも警備なでしこが多くの役割を担う。人手不足対策の一環で女性の雇用拡大を図ることとは別の観点で、女性が主役となって活躍する職場づくりに企業が取り組んではどうか。

すでに実践している会社がある。仙台市の「東洋ワークセキュリティ」は昨年、女性警備員のチームを立ち上げた。その名は「セキュリティ・コンシェルジュ」。リーダー以下8人は日ごろ、それぞれが異なる部署や施設に勤務しているが、月に1度全員で集まって研修を行う。英会話や接遇マナー、車いすの人や高齢者を案内する福祉対応、護身術、心肺蘇生法、初期消火など幅広いスキルを磨いて「東京マラソン」の警備などに参加している。

スキルの高い警備なでしこをチーム化すれば、企業の特色の1つになる。こうしたチームを持つ警備会社が増えるなら、女性活躍のシンボルとなって業界のイメージアップに結びつくに違いない。

単に女性を集めるだけでなく、高品質な警備サービスの提供がポイントになる。警備業務検定の資格取得をはじめ多様な技能、付加価値を持つ警備員の育成がチームづくりの核だ。経営側は、各種教育への投資が欠かせない。

その原資をどう獲得するか。例えば、人数などを積算して料金を決める従来のコスト・プラス法を脱却し、各種スキルが高いチームとしての料金を顧客に提案する方法がある。“警備員1人いくら”の算出とは異なるパッケージ価格だ。チーム名、制服デザインもパッケージのイメージ戦略で重要になる。

女性チームが業務を行う場所は、病院、女子校、百貨店、ホテルやイベント会場など営業努力によって広がっていくだろう。既存の業務を請け負うだけでなく、語学力や福祉の専門知識などを活かすことで、新たなスタイルの警備サービスを開拓できるのではないか。警備会社が受け身にならず、顧客に企画提案して主体的に仕事を創出するのである。

活躍の場は施設やイベントにとどまらない。建設業界では人材確保とイメージアップの一環として女性の技能者を中心とする「けんせつ小町工事チーム」づくりを推進する。これを参考にして、工事現場の安全を守る「警備なでしこ交通誘導警備チーム」を編成すれば、2号警備で女性たちが輝く好事例としてPRになるはずだ。その活躍は、従来の課題であるトイレや着替え場所の確保と一体になっている。

さまざまな現場で警備なでしこがいきいきと業務を行い、その姿を見た女性求職者が警備業に関心を持ち、就業する。こうした好循環を少しずつでも広げて業界発展につなげたい。

【都築孝史】

課題山積2019.7.1

「スリー・アップ」広めよう

名人と呼ばれる噺家は、演目の導入部の「まくら(枕)」に心血を注いだという。時事ネタや下世話のあれこれ、あるいは楽屋話などで笑いを誘い、頃合いよく「本題のネタ」につなげる。そして、「オチ」で一席を締めくくるのだ。

「まくら話」の第一人者と言えば、人間国宝・柳家小三治師匠で大方が得心いくだろう。なにしろ、「まくら」だけを収録して一冊の本を著した「まくら・小三治」(講談社文庫)なのである。

今回の当欄、何ゆえあってイントロに落語なのか。種を明かせば、先月に名古屋市であった中部地区連総会における小塚喜城会長の挨拶が軽妙洒脱な体験談で始まったからだ。小塚氏は警備業界の認知度の低さについて、こんな調子で語り始めた。

それは暑さがぶり返した日曜出勤の早朝のこと。玄関先まで見送りに出た夫人が通りかかった顔見知りの(おしゃべりな)夫人と交わした短い会話だった。

「家内が言うには、“ご主人は日曜出勤ですか?どんなお仕事ですか?”と問われ、『警備業です』と応えると、“こんな暑い日に旗振りのお仕事?大変ですわね!”と同情されたというのです――ことほどさように、多くの人たちは警備業というと、未だに単純に道路で旗を振る交通誘導警備員のイメージなのです」

「まくら」を振った後に小塚氏は、愛知警協が重点的に取り組む「スリー・アップ運動」を紹介した。ここから「本題ネタ」である。

それは(1)業界の認知度、ステータス向上のための「イメージアップ」(2)経営基盤を強化する「料金アップ」(3)警備員の処遇と資質を向上させる「賃金アップ」――の3つのアップ(向上)を目指すというものだ。

そして「オチ」。小塚会長は「警備員のイメージを高め、ユーザーからしっかりとした料金をもらい、警備員の処遇改善をしなければなりません。全警協は『自主行動計画』のフォローアップを推進、警察庁もバックアップしてくれている。私たちは問題を一つひとつ解決して業界の発展に努力していきたい」と締めくくった。

以下は後刻、意見交換会で小塚会長から聞いた「スリー・アップ」の裏話だ。発案者は専務理事の田中正和氏。「彼は、協会の会員が一丸となって諸々の課題に対応するための端的なスローガン、フレーズはないものかと、知恵を絞って思いついた。実に分かりやすい。私も二つ返事でオーケーしましたよ」とのことである。

手元には協会が今春、会員に向けて「スリーアップ運動の推進」と題する概要をA4版3頁にまとめて配布した文書がある。書面は、〈当面の諸課題〉から始まり〈最近の全警協、関係省庁の取り組み〉→〈県協会の具体的な推進事項〉→〈最終目的〉と続く。

後段は、〈活動スローガンの設定〉の見出しで、『スリーアップ』の活動を項目ごとに簡潔に記している。行間からは作制した田中氏の適正な警備業務の実施はダンピングへの批判を込めて、業界全体と会員各社の健全な発展を願う心情が読み取れて労作である。

愛知警協が推進するこの運動、一協会内だけに留めおくことはないというのが読後感だった。全国の協会が参考にする値打ちは十分である。愛知警協にそのことを伝えた。「目を通してみたいと思われたなら連絡をしてください。少しでも役立つならコピーを送ります」とのことであった。おあとがよろしいようで――

【六車 護】