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視点

災害列島 支援活動は広域、有償で2019.03.11

間もなく終わる平成は「災害列島ニッポン」の時代だったと言えるのではないか。

災害年表をめくると「未曾有」「甚大」「想定外」の字句があふれる。

平成が始まって3年目のこと。雲仙普賢岳が噴火、激しい火砕流で43人が亡くなった。天高く立ち昇る灰熱の噴煙は、天変地異の時代の幕開けを告げる狼煙(のろし)を思わせて不気味だ。

年表は主なものだけでも北海道南西沖地震、阪神淡路大震災、新潟中越地震、16年の3連続台風襲来。そして東日本大震災は地震・大津波の自然災害と原発事故の人災が情け容赦なく襲いかかった。さらに広島市の土石流災害、熊本地震、西日本豪雨、北海道胆振東部地震へと続くのだ。

先日あった在位30年の記念式典における天皇陛下のお言葉が思い出される。陛下は「世界は気候変動の周期に入り……」と前置きして、こう述べられた。

「災害の相次いだこの30年を通じ、不幸にも被災の地で多くの悲しみに遭遇しながらも、健気(けなげ)に耐え抜いてきた人々、被災地の哀(かな)しみを我が事とし、様々な形で寄り添い続けてきた全国の人々の姿は、私の在位中の忘れ難い記憶の一つです」

警備業界には痛恨事があった。昨年の西日本豪雨である。岡山県で河川の氾濫や土砂災害に対応して交通規制に従事していた警備員2人が濁流にのまれて死亡した。警備業の目指す警備現場での〈災害ゼロの教訓〉とするには痛ましすぎる犠牲だった。

このとき倉敷市は、市内の警備会社に河川の決壊で冠水した各所で交通誘導と交通規制の警備を発注した。しかし、被害は広範囲、警備員が大幅に不足して警備が継続できなくなった。

窮地を救う拠りどころとなったのは、岡山県警協と岡山県が締結していた「災害支援協定」だった。県警協は、発注元を倉敷市から県の災害対策室に移行することを提案、協定に基づいた県からの発注に切り替えることで活路が開けた。災害支援活動を有償で行う警備業界で初の試みだった。

協定の<費用の負担>にはこうあった。「甲(岡山県)の要請により、乙(岡山警協)が実施した業務に要する費用は甲が負担する」(第4条)。警協はあくまで受注窓口の立場で、警備料金は県から警備会社に直接支払われた。警協は職業安定法や派遣業法などの法令に触れることはなかった(協定内容は、昨年9月21日号の「特集ワイド」に詳しい)。

突発時の体制確立

河川の氾濫や土砂崩れの被害は、岡山県だけでなく隣接の広島県、海を隔てた愛媛県にも及んだ。広島警協は4年前に発生した土砂災害時の経験を活かし、2度目となる被災地の侵入犯罪を防止する警戒活動を行った。

愛媛警協は県南西部の被災3地区でボランティア・パトロールと駐留警戒を実施し、活動期間は1か月近くに及んだ。3県警協の豪雨災害への取り組みは、市民生活の安全と安心を担う警備業の面目躍如だったのだ。

その一方で、思い知らされたことがある。突発した被災の中、いかにやり繰りして警備員を配置するかという難題だ。思い至るのは当該県だけでなく、隣り合った県と連携した「広域支援協定」の確立である。

そのためには隣接の県警協、県、警察本部の3者による協議の開催が急がれる。さらに言えば、災害支援の警備は有償が理想だ。県からは適正な警備料金を算定するために財政担当部門の参加が必要だろう。

2月末、政府は、今後30年以内に東北沖でM7級の地震が発生する確率は90パーセントという長期予測をまとめた。元号が改まる次の時代、確率はともかく、「災害列島ニッポン」の現実は、つねに肝に銘じておかねばならない。警備業には、警備業ならではの広域な災害支援対策が求められている。

【六車 護】

2号警備員 地道な努力を認めよう2019.03.01

地道な努力を続ける2号警備員を表彰――。1月初め、京都府警備業協会が実施した「模範警備員表彰制度」が注目されている。2号業務に携わる警備員を表彰対象に新設したもので、ユニークなのは警備業務発注主からの推薦を必要とすることだ。今後は1月と6月の年2回表彰する。

京都府警協には、これまでも顕著な功績がある警備員を会長が表彰する制度はあったが、業務中に人命救助や、犯罪の未然防止に貢献して警察などから表彰状や感謝状を渡されたことが条件だった。業務の性質上、対象者は1号や機械警備の従事者が大半を占めていた。

新たな表彰は2号警備員をねぎらうだけでなく、加盟会員の人手不足対策を支援する狙いもある。会員各社のほとんどが新規採用に苦慮しており、とりわけ2号警備は厳しい状況が続いている。それならば、仕事に真摯(しんし)に取り組む姿を評価して表彰すれば、警備員がこれまで以上にやりがいを感じて永年勤続につながるのではないかと期待しての制度だ。

京都警協の宇多雅詩会長は表彰の意義をこう語っている。

「現場を通行する人や近隣住民の安全を守るため無事故で業務を行うことは、警備員にとっては当たり前のこと。当たり前のこととしても、日々、片時も気を抜かずに繰り返すことは簡単ではない。勤務内容は地味ではあっても、発注主や業務に当たる地域の小学校から会社にお礼の電話をもらうことが多い。そのような警備員を表彰することで、これまで以上に業務に誇りを持ち、現場の安全安心確保に努めてほしい」。

初回は4社5人が表彰された。そのうち1人は河川工事現場での交通誘導警備で、優れた誘導により付近を通行する住民から発注主に感謝の言葉が寄せられた隊員。商業施設と隣接し交通量が多い駐車場で、周囲に目配りして仲間の警備員に適切な指示を出した班長と副班長もいた。

今回は1回目ということで会員からの申請数が少なかったが、趣旨を周知して多くの2号警備員が表彰されることが望まれる。各県の警備業協会も参考にしても良いのではないだろか。

協会だけでなく、警備各社が日々の仕事に励む自社の警備員を評価することが必要だ。10年、20年と長く務める隊員が多い都内の警備会社は社長が頻繁に現場に足を運び、ねぎらいの声を掛けている。そのような行動があった上で、モチベーションアップの手法として協会の表彰が生きてくる。

もちろん、努力を認めさえすれば永年勤続につながるという話ではない。経営者は、警備員が長く安心して働くことができる環境を整えなければならない。

何より発注主との交渉により適正料金を確保し、若い隊員が家庭を築いたり住宅を購入するなどの将来設計ができるように処遇を改善する必要がある。将来に希望が持てなければ、仕事を続けることは難しいだろう。

賃金アップには原資が必要となるため、実現には時間がかかるかもしれない。しかし、業務に精励する自社の隊員をねぎらうことは今すぐにでもできる。警備業は現場で働く人がいて初めて成り立つ。経営者には‹警備員ファースト›の精神を常に意識し、警備員が精神面と待遇の両方で満足できるように取り組むことを求めたい。

【長嶺義隆】