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視点

労働災害 具体的な「安全教育」を2019.6.11

昨年、全国の職場で仕事中に亡くなった警備員は1か月に約3人、1日約5人が休業4日以上のケガ――。厚生労働省が取りまとめた昨年1年間(2018年1〜12月)の労働災害発生状況(確定値)により、警備業の現状が浮き彫りとなった。

同調査によれば、警備業の死亡者数は31人。17年よりも2人減少したものの、16年と比べると8人増加した。08年からの推移を見ても毎年約30人前後と横ばい状態だ。また、休業4日以上のケガと死亡を合わせた「死傷者数」は1760人。前年より157人増加した。増加率は約10パーセントで全産業中最も高い。

死亡者数が最も多かった建設業の309人と比べると、警備業の31人は「桁が違う」と一見、少なく感じてしまう。しかし、建設業の従事者数は約500万人で警備員数の約10倍。発生率でいうと、警備業は建設業とさほど変わらないのである。

仮設の足場を用いた高所での作業、地下の狭い作業場所でさまざまな建設重機を使用するトンネル工事。多くの危険作業のある建設業と、警備業の死亡災害発生率が同様だという事実は、いったい何を物語っているのだろうか。

死亡または休業した人の年齢を見ると、50歳未満は17年、18年ともほぼ同数だが、50〜59歳は18年は375人で17年に比べて32人増加。60歳以上は832人で同113人増と、50歳以上の負傷者が大幅に増えている。

「警備業は高齢化が進んでいるから当然」と片付けてしまっていいのだろうか。交通誘導警備に限らず、今では施設警備でも高齢者に頼らなければ、日々の業務が回らないのが実情だ。「警備業は高齢者には危険な仕事」というイメージが定着し、近年、警備業にとって最大の人材供給層となっている高齢者からソッポを向かれてしまっては、企業経営の根幹にも関わる。

来月7月1〜7日は、厚労省が主唱する「全国安全週間」。今年のスローガンは「新たな時代にPDCA みんなで築こうゼロ災職場」。6月は同週間の準備期間とされ、多くの職場で週間をPRするポスターなどを目にする。安全大会の開催や安全標語・安全スローガンの募集を行う職場も多い。

安全週間が職場で“行事化”することは決して悪いことではない。しかし、肝心なのは労働災害をなくすという具体的な行動だ。

作業指示にしても、「安全に仕事をしろ」「危険に気を付けろ」と口頭で注意するだけでは意味をなさない。

交通誘導警備であれば、車両と接触しない立ち位置、適切な誘導方法、他の警備員との事前の連携法の確認など、具体的な安全作業の教育が欠かせない。さらに、管理監督者による巡察時の安全作業の確認と不安全作業の是正。場合によっては、建設会社の現場責任者など客先に協力を求める必要もあろう。

このような地道な取り組みの積み重ねが労働災害の防止、ひいては「ゼロ災」につながっていく。

警備業の使命は、顧客や社会に「安全安心」を提供すること。そんな警備業で労働災害が後を絶たないようでは、いずれ産業としての信頼を失ってしまう。

安全週間を前に、全国の仲間31人の死、1760人のケガの意味を再度考えてほしい。

【休徳克幸】

1号警備 課題を解決し適正料金を2019.6.1

各地で警備業協会の定時総会が行われている。人手不足に向けた対策や働き方改革への対応などが事業計画にあがっている。課題解決のために共通して必要なのは「原資」だ。

未だに改善の兆しが見られないのは1号(施設)警備の料金である。2号(交通誘導)警備の料金はまだ「十分」とはいえないものの、上昇傾向にある。全警協が作成した「適正取引推進等に向けた自主行動計画」や「標準見積書」の活用、国交省による「公共工事設計労務単価」の増加などが追い風となっている。

総会後の意見交換会で、ある経営者からこんな声を聞いた。「公共の入札はまともじゃない。だからウチは民間の仕事しかしていないよ」。経営者が嘆く入札制度の現状はこうだ。

1号警備は入札制度や発注形態など、すぐには改められない問題がある。国や地方公共団体は、公共施設の管理運営を「建物設備・管理会社」などに一括発注している。また国や地方公共団体が主催するイベントは、関係者の宿泊や食事、移動などを管理する「旅行代理店」や「イベント運営会社」に一括発注することが多い。

いずれも警備会社は受注した企業の“下請け”として低い料金で警備業務を委託される。そのため警備のみを分離発注する入札案件に警備会社の参加が集中し、競争が激化してダンピングが行われるのだ。

1号警備の課題は入札以外にもある。空港や原子力施設では検定資格者の配置が義務づけられているが、不審者の侵入事件が発生した学校や、テロの標的になる可能性がある商業施設や鉄道駅など「ソフトターゲット」には配置義務がない。数年前までは1号警備の配置基準拡張の兆しがあったが聞かれなくなった。これから国際イベントが続くが、警備の質が低ければ安全を守りきれない。

価格交渉についても課題がある。2号警備で発注元との交渉時に活用されている「標準見積書」は、1号警備では今のところ存在しない。その理由として1号警備の場合、シフトやポスト数、警備方式など業務内容が一定ではないため“標準”を設定しにくいことが挙げられる。警備計画に沿った見積り例をいくつか示した“参考資料”があれば役立つのではないだろうか。それには建物の規模や使用用途などをもとに「直接物品費」や「管理業務費」の比率を割り出し、見積りに積算することも忘れてはならない。

国土交通省は毎年8月に「建築保全業務積算基準」の見直しに向けた実態調査を行う。警備会社に送った「調査票」の回答結果を集計して次年度の建築保全業務労務単価に反映し、12月に公表する。そのため、この「調査票」の記載内容は重要で、業務で発生するコストをもれなく正確に記入する必要がある。

また、各地で設立が始まっている「警備業連盟」が警備業協会と連携をとりながら、政党や議員を通じて国や地方公共団体へ陳情や要請を行う“ロビー活動”が、今後は重要になる。

「東京2020大会」は、社会の注目が集ることから、警備業界をアピールする最大のチャンスとなる。競技会場や関連施設の安全を担う警備会社は、業務に見合った報酬を得て経営基盤の強化を図るときだ。今こそ業界をあげて“1号警備の課題改善”に取り組まなければならない。

【瀬戸雅彦】