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視点

女性警備員2019.10.11

「2020」に向け増強を

ラグビーワールドカップ(W杯)大会で、日本チームはラグビー界の悲願である初の決勝トーナメント出場に向けて勝利を重ねている。

警備業界にとっても開催が1か月半にわたるW杯は大きな事業機会だ。全国12会場の会場外警備と会場内警備だけでなく、全国に設けられたファンゾーンや関連イベントの警備など業務は多岐にわたる。警備員不足が深刻な中、警備を担当するセコムやALSOK、シミズオクトなどは全国の支店や全国の警備会社の協力を得て、手荷物検査や雑踏警備などに従事する警備員を配置している。

セコムによると特に人材確保に苦労したのが、会場内警備におけるスクリーニングを担当する女性警備員だ。入場ゲートでは手荷物を開けての検査やハンディー型金属探知機によるボディーチェックを行うため、大会組織委員会からスクリーニングに携わる人員の3〜5割は女性にしてほしいとリクエストされたという。

しかし、全国の警備員に占める女性の割合は6パーセントほどに過ぎず、大手企業も例外ではない。そのため会場内警備を担当した企業は、全国の拠点から応援を頼んだほか中途採用に力を入れた。女性の事務系職員を警備員にし、手荷物検査やボディーチェックの研修を行い必要な人数を確保したケースもある。

延べ63会場で55競技が行われる「東京2020」ではラグビーW杯以上の女性警備員が必要となる。当初は更衣室や女性トイレなどの巡回に1日当たり1000人が必要とされていたが、警備業務の範囲は拡大しており必要な人数は更に増える。W杯には参加していないイスラム圏の国も参加する。宗教上の理由で女性には女性が対応することが求められる。警備業界の“オールジャパン”とも言える警備共同企業体(JV)で業務に当たる大会警備を成功させるために、参加する警備会社は今すぐにでも女性警備員を増強しなければならない。

すでに採用強化を始めて成果を上げている企業もある。共栄セキュリティーサービス(東京都中央区、我妻文男社長)だ。同社は女性に向いているビルの受付といった現場は、日勤だけでも働けるようにして、子育て中でも勤務できるようにした。その結果、女性警備員数は200人となり全警備員における割合は10パーセント台半ばを占める。

警備員が不足している中でシフトを組み替えることは困難だ。しかし社会全体で働き手が足りていないため、他の業界と比べても働きやすい環境を作らなければ採用を増やすことは難しい。シフト以外でも警備業界は「男社会」だったこともあり、女性用のトイレや休憩室がないなどの解決するべき課題は多くある。

開催まで1年を切った大会警備を成功させることはもちろん、国が誘致を積極的に行っている国際イベントや会議、加えて日常の業務でも女性の力を必要とする職場は多い。人手不足対策としても取り組むべきだ。女性警備員の増強は警備業界にとって避けては通れない。

JVは大会警備業務の経験を業界のレガシーにしたいとしている。将来、警備業界の歴史を振り返ったとき「2020年のオリンピック・パラリンピックから女性警備員が増えた」と言えることを期待したい。

【長嶺義隆】

教育時間削減2019.10.01

警備業の未来、会社が負う

改正警備業法施行規則が施行されてから1か月余が経過した。各地で都道府県警備業協会が主催する改正規則説明会が相次いで行われている。多くの会場で“超満員”となっていることからも、今回の改正に対する関心の高さがうかがえる。

警察庁は6月、改正の原案を「パブリックコメント」という形で明らかにした。昨年の同庁の有識者検討会報告書「人口減少時代における警備業務の在り方に関する報告書」で、〈警備員教育の合理化〉という改正の方向性が示されていたものの、改正原案を見て驚いた業界関係者は多いはずだ。「まさか、ここまで教育時間数を削減するとは」と。

改正の柱は、新任・現任の両警備員教育時間数の大幅な削減と、教育内容の裁量を警備会社に委ねた点だ。

新任教育は、基本教育15時間以上、業務別教育15時間以上の計30時間以上が、基本・業務別教育を“合わせて”20時間以上となった。

これまで警備各社は、警備員希望者を採用した際は4・5日程度の研修を行い、晴れて警備員として現場に送り出していた。その間、研修受講者(新規採用者)には日当、交通費、昼食代を支払っていた。社内にスペースのない会社は、外に会議室・研修室を借りることもある。一方、受講者からすれば、他業種に比べて多い提出書類に加えて研修まで必要となれば、「いつから稼げるの」となる。研修途中で受講生が来なくなるという経験をした警備会社は多い。

半期の教育期ごとに基本教育3時間以上、業務別教育5時間以上の計8時間以上、年間では計2回・16時間以上だった現任教育は、年度内に1回、基本・業務別教育“合わせて”10時間以上となった。

警備員不足の中、ぎりぎりの人員で現場を回してきた管制担当者にとって、現場に穴を空けないように警備員に現任教育を受講させるのは至難の業だった。夜勤明けで受講して途中で居眠り――とはよく聞く話だ。

改正により、新任、現任両教育に費やしてきた膨大な労力、時間、経費が削減される。今後、会社と警備員の双方に大きなメリットがもたらされるだろう。

しかし、課題もある。

新任、現任の両教育では、基本教育と業務別教育の配分は警備各社に委ねられた。テロ対策や高齢者・障害者への対応など、多様化する顧客ニーズに応じた警備員教育は不可欠だ。教育を各社で担う警備員指導教育責任者の役割・責務は、これまで以上に大きい。

警備の質を維持できなければ、いずれ「教育時間が減ってコストカットできたのだから警備料金も安くして」という声も出てくるだろう。

今回の改正の背景には、「東京2020」を控え、少しでも早く、多くの警備員を養成してほしいという当局の思いもある。一方で、「警備業は成熟してきた。教育は任せてもいいのではないか」というメッセージも感じられる。

「教育時間数の削減」という改正の一面だけを見ていては、いずれ警備の質の低下を招くことになろう。警備事故が相次げば、規制の再強化も考えられる。そうなれば警備業に対する社会の信用は地に落ちる。

改正規則が警備会社に委ねたのは教育の裁量だけではない。警備業の未来でもあることを忘れてはいけない。

【休徳克幸】