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「無線機持つ休憩は労働時間」2016.7.21

東京地裁判決 警備員の訴え、認める
国の労災補償不支給は違法

東京地方裁判所は7月14日、脳内出血を発症した警備員が労災保険の休業補償給付を請求したにもかかわらず、国が認めなかったことを不服とする裁判で、「無線機を携帯させ、警備敷地内から出ることを認めない休憩は、労働時間に当たる」との判断を示し、発症は長時間労働が原因と認めた。今後、警備員への休憩の与え方に大きな影響を与えそうだ。

長時間労働で脳内出血発症

都内の警備会社に勤務していた警備員(当時50)が平成24年2月、夜間勤務に出かける前に自宅で脳内出血を発症した。

同警備員は同年8月、「発症は長時間労働が原因」として労働基準監督署に労災保険の休業補償給付の支給を申請。しかし、同労基署は25年3月に“不支給”を決定した。このため警備員は、同年12月に東京地裁に提訴した。

現在も右半身まひや言語障害などの後遺症に苦しみ、リハビリを続けている警備員は当時、埼玉県和光市内の税務大学校の警備に従事していた。業務内容は、構内への出入り管理や立哨、巡回警備、火災警報装置や防犯センサーの監視や発報への対応などで、隊長1人と同警備員を含む2人の副隊長、隊員など計9人で勤務していた。

勤務シフトは、日勤が午前10時から午後7時まで、夜勤が午後7時から翌午前10時まで、そのほかに午前10時から翌午前10時、午前10時から午後10・11時などの組み合わせだった。

休憩や仮眠は、警備室のある管理棟の受付け後ろや地下1階の待機室が使用され、待機室は内線電話でつながれていた。また、休憩中は、敷地内の食堂や喫煙室へ行くことは可能だったが、緊急時の対応のために敷地の外へ出ることは許されず、常に無線機を携帯することが求められていた。

裁判では、この休憩時間や仮眠時間などが労働時間に該当するかが争点となった。

判例(平成12年3月の最高裁判決)では、労働基準法上の労働時間は、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間とされ、たとえ実作業に従事していなくても、使用者の指揮命令下に置かれている場合には労働時間とみなされる。

同裁判所の清水響裁判長は、同判例を拠り所に「常に無線機を携帯させ、敷地外にも出さないのは、労務提供が義務づけられている実質的な待機時間」とし、休憩時間を労働時間として認定した。

その上で、警備員の休憩時間を労働時間と見なして発症前の労働時間を算出したところ、発症1か月前は148時間の時間外労働(25日勤務でうち18日夜勤、丸1日の休日は2回)、2か月前は157時間(24日勤務でうち19日夜勤、休日は3回)など、1か月の時間外労働が、健康障害のリスクが極めて高くなるとされる100時間を超える長時間労働の実態が判明した。

このため、清水裁判長は「発症6か月前からの恒常的な長時間労働などの負荷が作用した結果、疲労の蓄積が生じて、疾病を発症した」と、発症と長時間労働との因果関係を認めた。その上で、休業補償給付の支給を認めなかった国の処分は違法だと判断した。

「私のお父さんは警備員です」2016.7.11

岐阜警協、小学生に絵と作文募集

岐阜県警備業協会(幾田弘文会長)は、「11月1日・警備の日」に向けて、警備従業員の子供たちだけでなく、一般の子供たちも対象に<警備にまつわる>絵画と作文を募集することになった。これは7月1日、同県下呂市で開いた「経営者研修会」で幾田会長が企画を提示、実施することを了承した。テーマは「私のお父さんは警備員です」、「警備員さん、ありがとう」として、県内在住の小学生に、夏休みを利用しての制作と応募を呼び掛けるというものだ。

研修会には全役員と会員60社の経営者が出席した。募集の詳細は協会事務局(森薫専務理事)が中心となって早急にまとめ、120余社の加盟会員に通知する。また、県・市教委などにも応募を案内して、警備員家族だけでなく一般家庭の子供たちにも多くの参加を求めていきたい意向だ。

絵画は、制服・制帽の似顔絵や交通・雑踏・施設警備に従事する姿など。作文は、暑さ寒さの中で社会の安全と安心を担って警備に携わる警備員への思いなど、自由選択にするという。

今回の企画は、子供たちが応募することで、警備従業員の家族がコミュニケーションを交わし、警備業が誇りの持てる職業であることを共有してほしいとの願いがある。一般向けへの呼び掛けは、警備業が国民の安全を守り、感謝されるやりがいのある仕事であることを広く知ってもらう意味が込められている。

両部門の作品は、選考委員会(臨時の理事会など)を開いて審査。優秀・佳作賞を表彰して記念品を贈呈する。表彰式は、「警備の日」の前週、土・日曜日を予定している。

幾田会長の話

どれほどの応募があるのか、現段階で想定するのは難しい。できれば20~30篇の作品が集まればと願っている。応募まで至らなくても、父親、祖父、母親らと警備の仕事について話し合うことは意義があるのではないかと考えている。一般家庭の子供さんには警備業の仕事に目を向け、理解を深めてほしいのです。

過労死、高止まり2016.7.1

厚労省 平成27年度の労災補償状況

厚生労働省は6月24日、平成27年度の「過労死等の労災補償状況」を公表した。脳・心臓疾患に関する事案(過労死)の労災請求件数は対前年度比32件増の795件。精神障害や過労自殺の労災請求件数は同59件増の1515件で、いずれも高止まりの状況だった。

過重な仕事が原因で発症した脳梗塞などの脳血管疾患や心筋梗塞などの心臓疾患で死亡した人の労災補償状況は、請求件数が795件で、対前年度比32件の増となった。

支給決定件数は251件で、同26件の減少。うち死亡件数も同25件減の96件だった。

年齢別では、請求件数、支給決定件数ともに「50~59歳」が最も多く、それぞれ263件、91件だった。

支給決定件数を1か月平均の時間外労働時間数別でみると、「80時間以上~100時間未満」が105件と最も多く、「100時間以上」の合計件数は120件だった。

仕事による強いストレスなどが原因で発病した精神障害については、請求件数が1515件で、対前年度比59件の増加となり、26年度の過去最多を更新した。うち未遂を含む自殺件数は同14件減の199件だった。

これに対する支給決定件数は472件で、同25件の減少。うち未遂を含む自殺の件数も同6件減の93件だった。

1か月平均の時間外労働時間数別では、「20時間未満」が86件で最も多く、「80時間以上~100時間未満」20件、「100時間以上」の合計件数は172件だった。また、出来事別では、「仕事内容・仕事量の(大きな)変化を生じさせる出来事があった」75件、「(ひどい)嫌がらせ、いじめ、または暴行を受けた」が60件の順で多かった。