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「労務費転嫁のための価格交渉」2023.12.21

内閣官房・公取委が指針

内閣官房と公正取引委員会は11月29日、「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」を公表した。同指針では、労務費の上昇分を取引価格に転嫁するために、発注者と受注者に必要な「12の行動指針」を示した。公表を受けて全国警備業協会(中山泰男会長)は12月6日、内容の周知徹底を都道府県警備業協会に文書で通知した。

指針は、中小企業が賃上げ原資を確保するための環境整備の一環。公取委が行った実態調査を踏まえ策定した。適切な転嫁に向けた取り組み事例も記載した。

「12の行動指針」における発注者の行動では▽労務費上昇分の取引価格への転嫁を受け入れる方針は経営トップまで上げて決定する▽受注者から労務費上昇分に係る取引価格の引き上げを求められていなくても、定期的に発注者から協議の場を設ける。特に長年価格が据え置かれてきた取引や、スポット取引と称して長年同じ価格で更新されている取引では留意が必要▽受注者から取引価格の引き上げを求められた場合は協議のテーブルにつく――などを明記。

受注者の行動では▽国、地方公共団体、中小企業支援機関に相談し、情報収集して価格転嫁交渉に臨む▽交渉における労務費の上昇傾向を示す根拠資料は、最低賃金の上昇率や春季労使交渉の妥結額・上昇率などの公表資料を使用する――などを明記した。

取り組み事例では、社員教育の強化、公共工事設計労務単価の上昇を理由に引き上げを求めた警備業の事例などが記載されている。

公取委の調査によると、「ビルメンテナンス・警備業」の経費に占める労務費率は、業種の中で最も高い62.7%。価格転嫁ができていない発注先の上位3業種は「ビルメンテナンス・警備業」「総合工事業」「不動産賃貸・管理業」となっている。

労務費はエネルギー価格、原材料費と比べ転嫁が進んでいない。労務費の上昇分については、受注者側が生産性の向上や効率化を図ることで吸収すべきという考えが発注者側に根強いことなどが背景にある。

全警協では同指針の内容を踏まえ、「警備業における適正取引推進等に向けた自主行動計画」の改訂について検討する。

警備業 歳末の取り組み2023.12.11

労災防ぎ、犯罪に備える

コロナ禍を脱し人流が回復した慌ただしい歳末、警備業は安全対策の強化を図る。埼玉県警備業協会(炭谷勝会長)は「埼玉年末年始無災害運動」の決起式に参加し労働災害防止を誓った。兵庫県警備業協会(中尾忠善会長)は犯罪に備え、警察と合同で現金輸送車に対する強盗を想定し訓練した。

埼玉警協に「無災害運動」要請

「埼玉年末年始無災害運動」の決起式が12月1日、さいたま市中央区内の埼玉労働局で行われた。労働災害の多発などで労災防止の重点業種になっている建設業など9団体から代表者が参加。警備業からは埼玉警協の炭谷会長に代わり岩根忠専務理事が出席した。

同運動は12月1日から来年1月15日までが実施期間。決起式では、主唱者の埼玉労働局・久知良俊二局長が「労働災害を起こしてはならないというトップの強い決意と、安全に対する労働者の強い意識が重要。働く方とご家族が穏やかに新年を迎えられるように、労災防止を実現してほしい」と、各団体に労災防止の取り組み強化を要請。危険チェックリストの活用などを呼び掛けた。

配布されたチェックリストは、路面凍結による転倒の予防や機械設備点検時の安全確保などに生かせるものになっている。

県内で2022年に発生した労働災害による休業4日以上の死傷者数は、7108人(前年比188人増)。警備業では99人(同19人減)だった。

兵庫警協 現送車強盗想定

兵庫県警備業協会は11月15日、神戸市中央区内で「現金輸送部会研修会」を開催し、葺合ふきあい警察署と合同で現金輸送車強盗対応訓練などを行った。

訓練では、銀行支店の通用口に現金輸送車が到着して警備員2人が降車し、周囲を警戒。輸送車から現金入りのカバンを取り出して銀行員に引き継ごうとした時、突然2人組が車に乗って出現。警備員に拳銃を突きつけて威嚇、現金入りのカバンを奪って車で逃げた。警備員は、逃走車両にカラーボールを投てきし、迅速に110番通報。「犯人の人数、着衣、凶器の種類、逃走方向」を的確に説明、警察の緊急配備による逮捕につなげる想定で行われた。

訓練に先立ち、同署内で恵良知也生活安全課長が防犯講話を行った。訓練の趣旨を説明するとともに、後を絶たない特殊詐欺の被害防止に警備業の一層の協力を呼び掛けた。

中尾会長はあいさつで「最近の犯罪傾向として、闇サイトで知り合って強盗に押し入るなどの短絡的な凶悪事件が発生している」と注意を喚起した。

東京警協 都に3項目の要望書2023.12.01

「最低制限価格」「キャンセル料」

東京都警備業協会(村井豪会長)は11月17日、東京都に対し入札制度見直しなどを要望した。要望内容は最低制限価格制度の導入、キャンセル料の制度化、警備種類ごとの適正な予定価格の設定――の3項目。要望書は小池百合子知事が直接受け取った。自治体との警備業務契約に最低制限価格が導入されることになれば、民間との契約も是正が進むと期待されている。

「適正な予定価格」設定も

警備業務の契約は発注元が強い立場にあるため交渉が不利に進み、適正取引に至らないケースが少なくない。東京警協は、都が例年この時期、都内の業界団体から意見・要望を聞き取る取り組み「各種団体からの東京都予算に対するヒアリング」を活用し、都発注の警備業務に関する課題の改善を要望することにした。

具体的な要望内容は(1)最低制限価格制度と低入札価格調査制度の導入と総合評価落札方式の活用(2)東京2020警備で運用されていたキャンセル料を都発注の入札においても制度化する(3)積算基準がない機械警備、貴重品運搬警備、その他警備業務の積算は、採算を度外視した事業者の見積により著しく予定価格が引き下げられ、低価格で落札に至る状況があることから、適正な予定価格の設定と警備の種類に応じて積算すること――の各事項。

最低制限価格制度について山下聡財務局長は「ダンピング対策に有効」と評価する一方「統一的な積算基準が必要。現状、都発注の警備業務には複数の積算方法が存在する。共有化することの影響や範囲などに配慮していく必要がある」と回答した。

キャンセル料については「受託者がキャンセル料を負担する場合、個別の実態に即し、受発注者間が真摯に協議していくことが重要」と答えた。

適正な予定価格の設定や積算については小池知事が「昨今の物価高騰を反映した予定価格の設定に努めていく」と回答したが、低価格落札などの課題について直接の言及はなかった。

同席した協会理事は「現状を知らせることができた」と意義を強調。要望した課題の解決に向け、都との協議は今後も続ける。

村井会長のほかに出席した役員は次の通り(敬称略)。▽副会長・片岡由文▽専務理事・衣川淳一▽常任理事・實川利光▽同・中田文彦▽理事・五十嵐和代▽同・久恒康裕