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平成30年7月豪雨 岡山で警備員2人が死亡2018.7.21
交通規制中、濁流にのまれる
「平成30年7月豪雨」と命名された今月5日からの大雨は、死者222人、行方不明17人という大きな被害をもたらした(7月17日現在、警察庁)。その爪痕は警備業にも及び、岡山県内では交通規制に当たっていた交通誘導警備員が、川から氾濫した濁流にのみ込まれた。警備業の被害と今後の対応を追った。
「平成30年7月豪雨」の人的被害は15府県に及んだ。特に広島、岡山、愛媛の3県に被害が集中し、死者は広島で111人(行方不明11人)、岡山で61人(同3人)、愛媛で26人(同2人)と、多くの市民が犠牲となった。
一方、住家被害は31道府県に及び、全壊または床上浸水などの被害を受けた家屋は全3万2909棟、猛暑の中、避難所での避難生活を余儀なくされている人は4712人に上っている(7月17日現在、消防庁)。
政府は8日に非常災害対策本部を設置、警察・消防・自衛隊・海上保安庁の部隊約7万3000人とヘリなど81機の体制で捜索・救助活動を行っている。
事態を受けて全国警備業協会(青山幸恭会長)は9日、福島克臣専務理事をトップとする「平成30年7月豪雨災害対策連絡室」を同協会内に設置、被害状況の把握に乗り出した。また、青山会長は被災した警備員に哀悼の意を表明した。11日現在で全警協に寄せられた警備業界の被害情報は次の通り。
【岡山】総社市日羽で7月6日、国道180号線の規制業務を担当した近畿警備保障(岡山市、松尾浩三社長、岡山警協会長)の60代の警備員2人が、豪雨で水かさが増した高梨川に流されて行方不明となり、9日に遺体で発見された。事故当時、現場には待機状態の同社警備員10人がおり、氾濫した濁流に全員がのまれたが、うち8人は自力で生還した。
【広島】加盟社1社が床上最大50センチの浸水被害。その他については調査中。
【愛媛】加盟社4社の営業所などが浸水被害。うち大洲市内の2社の営業所は完全に水没した。また、5社の従業員15人の自宅が浸水被害に遭った。
【福岡】久留米市内の加盟社1社の事務所が床上50〜60センチの浸水被害。また、小郡市内のスーパーと同店舗内の警備員詰所が浸水し、事務機器と同警備員の私物車両2台も浸水した。
3警協 防犯パト実施へ
岡山、広島、愛媛の各県警備業協会では、加盟社に被害が発生したにもかかわらず、被災地での防犯活動に取り組む意向を示している。
岡山県警備業協会(松尾浩三会長)は松尾会長が13日に副会長を招集、住民が避難所に避難している被災地での空き巣被害などを防止するために防犯パトロールを実施する予定だ。現在、岡山県警倉敷署と協議を行っており、協議が完了し次第、実施に移す考え。
広島県警備業協会(村本尚之会長)は、県警本部からの被災地での深夜防犯パトロール実施の要請を受け、実施を検討している。
県の予算措置が決定すれば、同協会が県警本部と締結している「災害支援協定」に基づく、全国初の“有償”の防犯パトロールとなる。予算措置が講じられない場合でも、同協会ではボランティアとしてパトロールを行う意向だ。また、被災者に「義援金」を贈ることを決定し、既に全加盟社に拠出を呼び掛けた。
愛媛県警備業協会(二宮義晴会長)も、二宮会長が被災加盟社への見舞金を提案、検討を始めた。また、ボランティアでの防犯パトロール実施を検討する。
「自主行動計画」研修会開く2018.7.11
全警協、3警協で周知活動を開始
全国警備業協会(青山幸恭会長)は、2018年度の事業計画の重点施策「警備業における適正取引に向けた自主行動計画」を推進するため、岐阜・富山・群馬の3県協会が6月に開いた経営者研修会に講師を派遣し、同計画の普及啓発を図る講演を行った。業界の健全な発展を目指し、これから段階を踏んで進められる同計画の周知活動がスタートした。
岐阜警協(幾田弘文会長)が6月29日に高山市で開催した経営者研修会には、幾田会長からの要請で全警協総務部次長・小澤祥一朗氏が講師として参加した。
小澤氏は、全警協が今年3月に策定した同計画について「下請けなどの取引条件を改善することは警備料金を上げるチャンスであり、それは中小企業や小規模事業者が賃上げを行いやすい環境を作ることにつながる」と強調し、参加者の関心を引いた。
警備業界外の発注者との取引、警備会社間の取引において、よくある問題事例を挙げ、その対処方法を具体的に指導した。実務版として営業マンなどが持ち歩くためのリーフレット「警備業における適正取引の推進」については「法令違反に該当する事例が紹介されているほか、警察庁生活安全局長・山下史雄氏による適正取引推進に向けたコメントが掲載されている。発注元に見せて有効活用してほしい」と指摘した。
一方、富山警協(木下勲会長)は、同27日に富山市内で開いた経営者研修会で全警協業務適正化小委員会の鈴木壽美委員(ジャパンガード)が講演した。
鈴木委員は「発注者との間で適正な取引を進めて、(それを原資に)一層の処遇改善や教育の充実を図り、警備品質をより高めることが重要になる」と指摘した。警備先で清掃作業を慣例的に強いられた警備員が退職するなど、発注者から契約外の作業を無償で求められる問題事例を挙げて「経営者は毅然と対処し、警備員を守らなければならない」と強調した。
群馬警協(川﨑弘会長)は、27日に前橋市で行った研修会に講師として全警協業務適正化小委員会・梶岡繁樹委員(新成警備保障)を招いた。梶岡委員は「警備業界外の関係団体へ取引条件の改善を促すためには、まず警備会社間で適正な取引を行う必要がある」と述べ、発注者の立場としての取り組みを解説した。
全警協は今後、同計画の周知啓発のためのセミナーを開催していくと同時に、関係団体に向けても周知を図る。全警協に設置した不適正な取引に関する「通報窓口」、適正取引に向けた「相談窓口」で情報収集に努め、警察庁や公正取引委員会、中小企業庁等との間で連絡協議の場を設けることも検討する。
厚労省 最低賃金改定を諮問2018.7.01
「年率3%アップ」めざす
加藤勝信厚生労働相は6月26日、2018年度の「地域別最低賃金額改定の目安」についての調査・審議を中央最低賃金審議会(会長=仁田道夫東京大学名誉教授)に諮問した。これにより今年度の最低賃金改定へ向けた議論がスタートした。今秋にも新たな最低賃金が発効する。
審議会では、国会のため欠席した加藤大臣に代わり、井上真大臣官房審議官が仁田会長に諮問文を手渡した。諮問文には、昨年に続き2017年3月に政府が決定した「働き方改革実行計画」に配意した審議の実施が記された。
井上審議官は委員に対し、働き方改革実行計画に示された「最低賃金は年率3パーセント程度を目途に、名目GDP成長率にも配慮して引き上げ、全国加重平均1000円を目指す」を改めて強調した。引き上げの影響の大きい中小企業や小規模事業者に対しては、生産性向上や取引条件の改善などへ向けた支援を表明した。
審議は、公労使委員各4人の計12人で構成される「小委員会」で行われる。7月中にも全国をA〜Dの4ランクに分けた地域ごとの引き上げの目安額を取りまとめ、厚労相に答申。地方最賃審での議論を経て、今秋にも発効する。
昨年度行われた全国平均の引き上げ額は過去最高の25円、全国平均の最低賃金額(時給)は848円となったが、労使の意見の隔たりは大きく、公益委員が報告書を取りまとめた。今回も消費税の税率アップなどが控えていることから審議の難航が予想される。