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ハラスメント 女性活躍推進2018.12.21

厚労省が対策強化

厚生労働省の労働政策審議会雇用環境・均等分科会は12月14日、「女性の職業生活における活躍推進」と「職場のハラスメントの防止対策のあり方」の強化に向け、根本匠厚労相に建議した。同省はこれを受けて法案要綱を作成、近く同審議会に諮問する。答申を得次第、年明けの通常国会に関連法案を提出する。

女性の活躍推進について厚労省は、2015年に10年間の“時限立法”として「女性活躍推進法」を施行した。

同法では、常時雇用する従業員数が301人以上の企業に対し、(1)自社の女性の活躍に関する状況把握と課題分析(2)(1)を踏まえた行動計画の策定と社内への周知、公表(3)同行動計画の都道府県労働局への届出(4)女性の活躍に関する情報の公表――を義務付けた(300人以下は努力義務)。これにより民間企業での女性活躍の取り組みは大きく進展し、行動計画の届出数は2万社を超えた。

一方で、女性の正規雇用の就業率は第一子出産の平均年齢より手前の「25〜29歳」層でピークとなり、以降は年齢とともに減少。管理職(管理的職業従事者)は13.2パーセントと諸外国に比べて低い水準だ。さらに男女間賃金格差も減少傾向にあるとはいえ、依然大きな開きがある。

このため建議は、これまで努力義務だった101人以上300人以下の企業にも行動計画策定を義務付け、対象を拡大することを求めた。また、法の履行確保のため、求職者の職業選択に影響を与える情報公表義務違反や虚偽の情報を公表した企業については企業名を公表することが適当だとした。

セクシュアルハラスメント(セクハラ)とパワーハラスメント(パワハラ)については、それぞれが働く人の尊厳や人格を傷つける職場で許されない行為であることを法律に明記する。

セクハラ防止対策については、男女雇用機会均等法の改正により事業主に「職場環境配慮義務」や「対セクハラ措置義務」を課してきた。しかし、2017年度に都道府県労働局に寄せられたセクハラ被害に関する相談件数は約7000件に上るなど高水準にとどまっていることから、同省は防止対策の実効性の向上を図る。具体的には、被害を受けた従業員がセクハラについての相談を行いやすくするとともに“二次被害”を防止する。被害者が相談を行ったことや、事業主が行うセクハラの事実関係の確認に協力したことなどを理由に、解雇など不利益な取り扱いを禁止することを事業主に課す。

パワハラ対策については、同省内に設けられた検討会が今年3月に取りまとめた報告書の概念を踏まえ、パワハラの「定義」を明確化する。具体的には、(1)優越的関係に基づく(2)業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動(3)就業環境を害する(身体的もしくは精神的な苦痛を与える)――の3要素を満たすものとし、これら行為の防止を事業主の「雇用管理上の措置」として法律で義務付ける。措置の義務化に当たっては、男女雇用機会均等法に基づくセクハラ防止対策と同様に、事業主が講ずべき措置の具体的な内容を示す「指針」を策定する。

取引先の従業員からのパワハラや顧客などからの著しい迷惑行為については、指針で相談・対応など望ましい取り組みを示す。

また、中小企業はパワハラ防止のノウハウや専門知識が乏しいことから、コンサルティングや相談窓口の設置など企業支援をする。

 

復旧工事で「自家警備」も2018.12.11

広島に協議会が発足

広島県は11月28日、「交通誘導員対策協議会」を立ち上げた。県内全域に大きな被害が発生した7月の「豪雨災害」からの円滑な復旧・復興工事を進めるのが狙い。国(国土交通省中国地方整備局)・広島市・建設業界・警備業界などが参画する同協議会は、交通誘導警備員不足を背景に「自家警備」実施へ向けた検討も開始した。

「広島県交通誘導員対策協議会」は、国・県・市のほかに県内建設業団体と広島県警備業協会、広島県警備業協同組合、県警の7者が構成メンバー。

県は初会合の席上、深刻な交通誘導警備員不足で今後の復旧・復興工事への支障が見込まれることから、建設業者による交通誘導警備「自家警備」の実施を提案した。

自家警備については昨年6月、国交省が総務省との連名で全国の自治体や建設業団体に「交通誘導員の円滑な確保について」を通知。熊本地震などの災害や慢性的な交通誘導警備員不足の中で公共工事を円滑に進める手法として示した。県は同通知や自家警備実施へ向けた枠組み作りで先行している長崎県などの取り組みを参考に、県内での復旧・復興工事で自家警備を実施したい考え。

これに対して広島警協は、昨年9月に国交省と警察庁が出した自家警備に関する「補足通知」などを示して自家警備の問題点を指摘。安易な自家警備の実施をけん制した。

また、警備員不足の要因として低い警備料金問題があることから、警備業務の直接の発注者である建設業者による適正価格での発注などを求めた。

一方で、被災者の立場に立った場合、速やかな復旧・復興工事の実施が不可欠なことから、警備業界としては一定の制約の下で自家警備を認めざるを得ない状況だ。

具体的には、実施期間を3年間の復旧・復興工事期間に限定、実施場所は交通量の少ない山間部など安全上支障がない場所――などの一定の条件を求め、あくまで“例外的な措置”として検討を進めるものと見られる。

 

不適正取引、実態明らか2018.12.01

「自主行動計画」で協会調査

「契約をしても、支払いのときには『これだけしか払えない』と一方的に値下げされた」「社保加入などを含め適正料金を説明しても理解されない」「お客さま(発注者)とは、対等の立場になることが難しく、『仕方がない』と諦めている」――<警備業における適正取引の推進に向けた自主行動計画>の進捗状況を調査したアンケートの結果は、警備業の苦渋に満ちた実態が浮き彫りになった。 

調査は先ごろ、地方警備業協会が不適正な取引の実情を把握して、今後の「自主行動計画」の周知と実効に役立てるため独自に実施した。内容は内部資料として“非公表”とされたが、本紙はアンケートの結果について、協会名を明記しないことで紙面化することになった。

調査方法は、現在までの3年以内に不適正な取引形態の有無について、アンケート用紙を郵送して匿名での回答を求めた。回答を寄せたのは加盟社の83パーセントに達し、警備業における不適正な取引への関心の高さがうかがえるものとなった。

とりわけ、警備員が50人以下の2号警備・事業所からの回答は全体の半数に及んだ。不適正な取引の事例報告では、赤裸々に窮状を訴える多くのコメントが寄せられた。主な設問への回答、コメント、まとめは次のようなものだ。

«不適正な取引の事例»(複数回答で多い順)▽警備料金の支払い時の減額▽発注内容の契約書面の不交付▽自社商品の購入と清掃など契約外作業の強制▽“買いたたき”と呼ばれる著しく低い警備料金の設定▽支払い代金の期日を守らない遅延など。

«不適正な取引であるのに、現行取引を継続する理由»(抜粋)▽不適正な契約内容は受注から排除、もしくは解除したいが、新規のユーザーの獲得が困難(27パーセント)▽現在の取引の依存度が高く、取引額も多くを占めており、継続をしなければ売上額が大幅に減少する(24パーセント)など。

«回答者のコメント»▽「立場が弱く、仕方がないと諦めている」▽「官公庁発注の臨時警備は、口頭による依頼で注文書・契約前書面の交付がなかった」▽「支払い時に『これだけしか払えない』と一方的に値下げされ、端数(1000円未満)を切られた」▽「業務終了の半年後にやっと代金が支払われた▽「料金が『他社より高い』と値切られ、社保加入の加料を説明しても理解されなかった」▽「発注の取り消しでキャンセル料をもらったことは皆無」など。

«協会まとめ»(抜粋)適正取引を強く訴えた結果として、取引打ち切りへの不安から現状維持を望み、いわゆる“泣き寝入り”の状況が垣間見えた。今後に開催予定の経営者研修会など、あらゆる機会を捉えて「自主行動計画」の周知施策を推進しなければならない。