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「警備業法は憲法違反」2018.1.21

警備員が国を提訴

財産管理のために「成年後見制度」を利用した警備員が、警備業法に規定する警備員の欠格事由に該当するとして退職を余儀なくされた。このため同警備員は1月10日、「警備業法の規定は憲法に違反し無効だ」として、会社に従業員としての地位確認と国に100万円の損害賠償を求める裁判を岐阜地方裁判所に起こした。

訴状によれば、警備員Aさん(30)は2014年4月、岐阜県内の警備会社に雇用された。雇用形態は期間の定めのない契約で、仕事内容は交通誘導警備業務だった。

Aさんは2010年9月に、知的障害者が相談・指導・援助を受けることができるように都道府県知事が交付する「療育手帳」の交付を受けているが、区分は最も軽い区分に属する「B2」。また、雇用に際して医師の診断書を作成、会社に提出されたが、Aさんは警備業法第3条第7号の「心身の障害により警備業務を適正に行うことができない者として国家公安委員会規則で定めるもの」に該当しないことが示された。

このためAさんは雇用され、交通誘導警備業務に従事した。その間、特に問題などは生じなかった。

2016年11月、Aさんは岐阜家庭裁判所中津川出張所に対し、成年後見制度を利用して「保佐」開始の審判の申し立てを行った。理由はAさんが入院している間に、実父がAさんに無断でAさん名義のローンを組み自動車を購入するなどしたため。2017年2月、同家裁はAさんへの保佐開始の審判を出し、保佐人としてNPO法人の成年後見センターが選任された。

しかし、保佐開始を受けたことによりAさんは、警備業法第14条と同第3条第1号により警備員の欠格事由に該当、警備会社の退職を余儀なくされた。

このため、Aさんは被保佐人であることを警備員の絶対的欠格事由とした警備業法の規定は、憲法13条(個人としての尊重)、14条第1項(法の下の平等)、22条第1項(職業選択の自由)、27条第1項(勤労の権利と義務)に違反し違憲無効だとして、警備会社に従業員の地位確認と違憲状態を放置していた国に国家賠償法に基づく損害賠償を求めた(警備会社は法律上の規定に従った対応を余儀なくされたとして、Aさんは会社の責任を追及する意向はなく、会社に対する損害賠償も請求していない)。

Aさんの代理人弁護士は今回の提訴に関し、成年後見制度は専ら財産管理能力に着目した制度であり、警備員としての適性の有無とは関連性を有しない。また、警備業法第3条第7号などにより警備員の適格性を判断することが可能などと指摘している。

厚労省、人手不足の警備業を支援2018.1.1

84ハローワークに「対策コーナー」

厚生労働省は2018年度、警備業など人材不足が深刻化している業種への支援を強化する。現在、全国12のハローワークに設置している「人材確保対策コーナー」を大幅に増やし84か所に設置、求職者と求人者双方に対し、きめ細かな人材確保支援を行う。このために同省は、2018年度予算に約26億円を要求した。

12か所から一気に拡大

同省は2017年度から、全国12のハローワークに「人材確保対策コーナー」を開設した。同様のコーナーは、以前から人材不足が顕著な介護や医療、保育などの福祉分野の人材確保のため「福祉人材コーナー」として開設されていたが、17年度からは警備業や建設業、運輸業などの有効求人倍率が高止まりし、雇用吸収率の高い分野を新たに対象に加え、名称も「人材確保対策コーナー」とした。

同コーナーが置かれたのは、大都市に所在し、管内でこれら業種の求人倍率が高い仙台、郡山、大宮、千葉、池袋、横浜、浜松、名古屋中、京都西陣、大阪東、広島東、熊本の全国12ハローワーク。これらハローワークでは、警備業などについての職業相談・紹介、求職者向けセミナーなどが行われてきた。

2018年度からは、この取り組みを更に強化し、12ハローワークの「人材確保対策コーナー」を全国84ハローワークに拡大、警備業など人材不足に苦しむ業種の人材確保を支援する。現在ハローワークは全国に544あり、コーナー拡充が実現されれば、全ハローワークの15パーセント強に設置されることとなる。

同コーナー設置のハローワークでは今後、警備業に関するパンフレットの配布などによる求職者への警備業のPR、都道府県労働局と関係団体などとの協議会設置による支援策の検討のほか、求職者と警備会社などの求人者に次の支援を行う。

▽求職者ニーズを把握し、これに基づいた求人者(警備会社)への求人充足に向けた助言や指導。

▽求職者に対する担当制によるきめ細かな職業相談や職業紹介。

▽警備業協会など業界団体との連携による(1)求人者(警備会社)向けや求職者向けのセミナー(2)求職者への事業所見学会(3)就職面接会――などの開催。

「人材確保対策コーナー」を活用した取り組みは、愛知や兵庫など全国で進んでおり、昨年12月には熊本警協とハローワーク熊本が連携してセミナーと職場見学会を開催、計34人の求職者が参加し、その多くが警備会社の求人に応じるなどの実績が出ている。