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「働き方改革」我が社の取り組み2017.7.21

永山明さん(ブルースカイ 代表取締役)
後藤悦子さん(ブルースカイ 専務取締役、秋桜 代表取締役理事長)

待遇改善で人を増やす

――ブルースカイが運営する保育園が、今年4月に仙台市の“認可保育所”として再スタートしました。

永山 平成26年に隊員の子供さんを預かり、安心して働いてもらえることを目的に社内託児所として開設しました。その後、社員以外の近隣の子供さんも預かるようになり、社内に「保育事業部」を設け、認可外の保育所「パプリカ保育園」を運営してきました。

後藤 市内の待機児童の大幅な増加などを受け、新たに認可保育所の運営にチャレンジすることとしました。運営のための別会社「株式会社秋桜(コスモス)」を立ち上げ、私が代表取締役理事長となり4月1日に仙台市の認可保育所として開園しました。

保育園の定員は0〜5歳までの60人で、現在は34人が在籍し、看護師や保育士など計16人の職員が、子供さんのお世話をしています。園の敷地は約350坪で、床や壁などに木材を多用し、吹き抜けの高い天井は市からも高い評価を得ています。

――保育園運営の影響は。

後藤 お母さん方には、「保育だけでなく警備もしてもらっている」と評判がいいようです。

永山 いろいろな所で「ブルースカイって保育園もやってる会社ですよね」と言われるなど、保育園による会社のPR、イメージアップへの相乗効果は想像以上です。

――二人三脚でやってきました。

永山 1992(平成4年)12月に警備業の認定を得て、翌年から本格的に警備業務をスタートしました。そんな会社の草創期のバタバタしていた時に、後藤は「経理事務員」として入社しました。

後藤 入社3日目で辞めようと思いました。しかし、続けているうちに仕事が楽しくなり、管制業務の担当を申し出ました。

永山 管制は、朝は早く、夜は遅い仕事です。それに隊員からの苦情にも対応しなければなりません。最初は務まるか不安でしたが、お客さまの声を一回で覚えて、電話で営業もしてしまうなどの能力を発揮してくれました。

後藤 毎年、売り上げ目標を立てますが、達成できないと悔しく、達成するために頑張っているうちに今日に至りました。その間、警備員として現場にも出ましたし、指導教育責任者の資格も取りました。

永山 以前からいた管理職からは批判や妬みなどもありましたが、それを行動で跳ね飛ばし、周囲に認めさせてきました。

――社会保険への加入状況は。

後藤 社会保険が問題になりましたが、それ以前にほとんどの社員を加入させました。

永山 宮城県警備業協会の労務委員会委員長としての立場もあり、社会保険問題には率先して取り組んできました。しかし、保険料負担で人件費は1人当たり約15パーセントの増加になるわけで、会社の当期利益と見比べつつ苦労しながら加入を進めてきました。

後藤 その甲斐あって、今では加入資格者は全員加入です。

永山 当然、社保加入と同時に賃金アップも行いました。今年も全社の賃金アップを行います。

国土交通省が設計労務単価を引き上げ、警察(公安委員会)が指定路線を増やすなど、警備業を取り巻く環境も大きく変化しています。これに警備員確保などで応えていかないと“自家警備”に取って代わられるなど、警備業が見放されてしまいます。給料を上げ、残業しなくてもいい環境、有給を取れる環境を作っていかなければ先はありません。

――人手不足も深刻です。

後藤 当社の社員は入社14年ほどの在籍者がほとんどです。3年もてば、まず辞めないですね。

離職者は少ないのですが、新入社員も少ないですね。交通誘導警備は年に5〜6人、施設警備は10人前後です。しかし、入社したら“金の卵”として皆で大切に育てるようにしています。

永山 この仕事で頑張ってもらうには、警備という仕事に誇りを持ってもらうことが必要です。それがなければ長続きしないし、短期間で離職してしまいます。

東日本大震災以降、東北地方では人手不足が顕著になり、他社は「入社祝い金」「移籍保証金」などの名目で人集めに励んでいますが、当社では他社に移るなどの離職者はほとんどいません。

後藤 隊員には「働いてもらっている」という意識で接しています。認可保育園は、社会貢献の一つとして取り組んでいますが、隊員が現場で他社の人から「お宅の会社、保育所もやっているそうだね。うちの子はどうやったら入れるの?」と聞かれるそうです。そういうことを言われると嬉しいし、誇りに思うと言ってくれます。

永山 採用は通年で行っています。ハローワークと一般の求人誌を利用しています。当社は人材派遣業も行っていますので、今後は登録型の派遣業務(事前に登録してもらい、都合がよい時に働いてもらう)を考えていますが、派遣で登録してもらった方の警備業への誘導も考えています。

――労働法の規制強化など働き方改革が進められています。

永山 祭礼などのイベント警備は、土・日の仕事が多く、月曜日からは日常の業務が待っています。そのような中で、いかに休みを取ってもらうかは、いつも頭が痛い問題です。

大手の運輸業界では「週休3日」に取り組む会社もあるようですが、人手不足が深刻で、スポット的な仕事も多い警備業では休みがとりづらく、週休3日は難しいですね。待遇を改善して人を増やし、休みを取りやすい環境づくりを行い、一人ひとりの労働時間の短縮を図ることが現実的ですね。

後藤 福利厚生にも、積極的に取り組んでいます。忘年会は家族を含め、全員参加で行っています。また、土・日限定の警備員の募集も行いたいですね。そうすることで、今までいた隊員が土・日に休めるようになります。また、施設警備では、魅力的な制服を採用して女性の活用も進めていくつもりです。

永山 今後の課題は、次世代につなげられる経営体制づくりです。警備という仕事で将来に向けての安心を提供しつつ、継続的な会社運営を持続できる体制づくりを目指しています。

具体的には、現有戦力の強化、管理職に対しての会計・経理の教育、経営・営業力アップの教育、警備業法・労働法を中心とした法務全般の教育、社員管理の方法などです。

後藤 保育園は地域のためという側面もあり、地域にさらに貢献したいですね。「子供食堂」や「学童保育」などもやってみたいですね。 

「働き方改革」我が社の取り組み2017.7.11

徳田穂積さん(国際警備保障 代表取締役社長)

長時間労働、是正に取り組む

――1階を中心に緑が多く、居心地の良さを感じる社屋です。

当社は「やすらぎ社会の創造」というキャッチフレーズを掲げています。関わるすべての方面に、やすらぎを提供する会社でありたいと考え、そのためのビジョンとして警備の目的である「安全・安心」に「快適」を加えています。

社屋は15年前に建てましたが、計画にあたり「地球環境を守るためできる事から始めよう」と、多くの方策を採り入れました。ヒートアイランド現象の緩和策として屋上と7階テラス部分を緑化しました。夏季の室内冷房負担も低減され、省エネ効果もあります。

――昨年、創業50周年を迎えました。

創業者である父・辰巳は、1960年代にスーパーマーケット経営の視察のため渡米し、警備業の存在を知りました。すぐに米国で最も歴史があるピンカートン社をアポなしで訪ね、警備について教えを請いました。当時の副社長は偶然、進駐軍として大阪に来ていた方でした。大阪の今を知りたいと思ってか、突然来訪した日本人に面会してくれ、警備服や警備マニュアルをプレゼントしてくれたのです。当時、日本で全く知られていなかった出入管理や巡回警備の内容が記載されたマニュアルを参考に、まだほとんど存在しなかった警備会社を立ち上げました。

――社訓の冒頭に「人間性尊重の精神に徹した会社」とあります。

高い警備品質を提供するには集中力が求められることから、警備員の労働環境整備は重要です。今、最も重点を置いて取り組んでいるのは「長時間労働の防止」です。

人手不足の状況下で、一部の事業所では慢性的な長時間労働が続いており、中には労災認定の基準時間数を超える時間外労働を行っている従業員もいます。幸い健康障害やメンタル不調を起こす従業員は出ていませんが、全国の事業所に対して新規従業員の採用強化と長時間労働者の勤務時間を毎月チェックし、是正に向けた取り組みを行っているところです。

――人手不足は、全国的に警備業の大きな課題です。

全国の拠点に採用強化を呼び掛けているところですが、思うように集まらないのが現状です。そこで従来の新卒採用窓口に加え昨年12月、総務部内に中途採用に特化した窓口を新設し、新規採用ルートの開拓やより効果を重視した広告媒体の選定などメリハリの効いた採用活動を行っています。

業務の効率化を図り従業員の処遇改善に向かうようお客さまにも理解を求めています。働きやすい職場を築くことで多くの求職者に応募してもらい、在籍している従業員には長く勤務してもらって人手不足を解消し、長時間労働の是正につなげたい。

福利厚生面では、当社社員会が入会している「福利厚生倶楽部」で、スポーツ施設・レジャーランド・飲食店・宿泊施設・海外リゾートの各方面で割引等のサービスを受けられ、好評です。

――警備料金問題については、適正料金を確保するためにどう取り組んでいますか。

1号業務については年間契約のため、2号業務に比べ警備料金の上がり具合は鈍い状況です。一方、2号業務は地域性こそあれ、全社的に警備料金は上昇している傾向がみられます。

適正料金を確保するためには、警備員の品質向上に引き続き努め、社会的背景、例えば最低賃金の上昇や社会保険料の増加、給与水準のアップ等により企業努力だけでは補えない状況です。これら諸事情についてお客さまに丁寧に熱意を持って説明し、理解を得る努力を続けています。

理解を得られない場合は、コンプライス重視の観点から仕事を辞退することもあります。お客さまに安全・安心を提供し満足頂くことが我々の使命ですが、当社の従業員やその家族を幸福にすることも同等の使命と考えています。

――質の高い警備業務を提供するために警備員教育が重要です。

教育内容としては警備業法に則った新任・現任教育に加え、OJT(現場教育)等の徹底を行っています。またスローガンに“警備品質日本一”を掲げ、その実現のため「警備品質管理者制度」を導入し、各警備現場に警備品質管理室員が巡察に行き徹底したレベルチェックを行います。点数の低い警備隊のレベルアップを図る対応策を考え、再教育も実施しています。年末年始、ゴールデンウィークなどの大型商業施設の繁忙期等に特別巡察を行い、様々な視点でレベルチェックを行います。

事故防止教育としては、社内報の「警務部通報」「警務部だより」等を用いて、実際にあった事故事例を挙げて周知しています。

実技訓練では、商業施設等お客さまや警察等との合同防犯訓練の実施、また障害者差別解消法の施行に伴い公益財団法人「日本ケアフィット共育機構」から外部講師を招いての講習会の実施など、これらの訓練や講習を通じサービス業としてのスキルも身に付けられるよう取り組んでいます。

――検定資格の取得状況は?

各種警備員検定受講者に対して、警備業協会講師が試験内容を想定した実技訓練を実施するほか問題集・DVD等の媒体を貸し出し全員が合格できるようサポートしています。検定に合格した場合は、社内報に掲載するとともに本社ロビー内に設置している資格取得者ボードに氏名を掲示しています。資格取得者には資格手当を支給し、無資格者との差別化を図ることで士気の高揚に努めています。