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警備業ヒューマン・インタビュー
――現場の声を聞く2018.7.21

牛田稔さん(アルファ 代表取締役)

四国地区の講師が結束

«昨年、全国で初めて地区単位の警備業協同組合「四国連合警備業協同組合」を設立し、理事長に就任しました»

四国にはかつて徳島のほかに香川、愛媛の両県にも警備業協同組合がありました。活発に活動していましたが、さまざまな理由で解散し徳島のみ存続していました。2016年の徳島の協同組合総会で「四国ではこれまでも県を超えて互いに協力し合ってきた。協同組合を四国全体に拡大してはどうか」という意見が出て、発足に向けた動きが始まりました。

私は以前、特別講習の主任講師を務めていたことから、他県の講師ともつながりがありました。そこで声を掛けてみたところ、地区の協同組合設立に賛同を得ることができました。

昨年4月に徳島県公安委員会より認定書の交付を受け、5月から正式に組合の活動をスタートさせました。

«講師のつながりが、地区単位の協同組合を作りました»

四国地区の講師は結束が強く、「四国講師会」という名称の親睦会を毎年開いてきました。それが発展して、今は救急救命講習や防災訓練などの自主勉強会を開催しています。

集中豪雨や震災など各地で自然災害が発生していますが、今後は南海トラフ巨大地震も懸念されており、四国地区と中国地区は災害支援で協力し合うケースもきっと出てきます。その場合も活動の中心になるのは講師のメンバーだと思います。講師同士は両地区で交流があるので、防災訓練を合同で行うなど、日頃から地区を超えた協力体制を構築して備えることが重要ではないでしょうか。

«協同組合の規模は?»

現在、四国4県で6社ずつ、合計24社1756人の警備員が加盟しています。

県単位の組合以上に大規模な警備を共同受注でき、幅広く業務を行えることがメリットです。組合の場合、JVと違って組合企業が混合した警備業務が可能です。また業界の課題である警備員不足に対処する手段として、組合のネットワークにより人手を融通し合えます。

地区で連携して適正料金の確保に努めたり、各県で講師が不足していることから合同で警備員の教育や育成の場を持つこともできます。自然災害や事故など地区の最新情報を共有することで、迅速な対応が可能です。

«協同組合に加入規定はありますか»

各県の警備業協会に加盟していることが条件となります。当組合は、理事の多くが協会の役職も勤めており、組合は協会の活動に添ったスタンスをとることで、共存共栄していきたいと願っています。

«今年度の活動予定は?»

今年度は組合員で協議して、具体的な活動の方向付けを行いたいと思います。また年内に全国中小企業団体中央会の助成金を利用した研修会も実施する予定です。

現在は組合で受注した業務の契約を徳島で一括して行っていますが、今後は各県で行えるようにしたいと思います。指導教育責任者を置き営業所としての届け出を行い、営業拠点を作ります。

また組合で協同受注した業務を行う際に、組合員が統一して身につける腕章を制作しました。

総会は4県の持ち回りで幹事を設定し、開いています。5月の総会は愛媛県松山市で開催しました。11月の臨時総会は高知市で予定しています。

«四国地区で、青年部会を発足させる構想もあると聞きました»

これまで四国地区連の北川豊彦会長(香川警協会長)や徳島警協の宮村茂前専務理事が「地区で青年部会を発足させよう」と、各県協会に声掛けを行ってきました。そして6月の講師自主勉強会で、青年部会を四国4県の講師を中心に立ち上げることで了承を得ました。現在、愛媛と香川の主任講師を中心に準備を進めているところです。

次代を担う若手経営者の皆さんに、ぜひ参加していただきたいです。警備業の課題に取り組むための勉強会を開いたり、講師育成の理解を求める働きかけも活動の一つとしたいと思っています。

我々“講師OB”も支援しますので、四国の講師はこれからも協力し合ってがんばってもらいたいです。

警備業ヒューマン・インタビュー
――現場の声を聞く2018.7.11

小淵豊太郎さん(小淵警備保障常務)

快適トイレカー、広げたい

«建設現場などに交通誘導警備員の派遣と合わせてトイレカー(自走式の仮設水洗トイレ)を貸し出す新サービスを今春から開始しました»

トイレカーは国土交通省の基準による「快適トイレ認定マーク」を取得し、水洗式でウォシュレット機能が付き、手洗い場も備え、停車できる場所ならどこでも使用可能です。自動車販売店から購入し当社の社名とロゴが入っています。警備を行うとともに、建設現場で働く全ての人が安心して使えるトイレを提供します。

«サービス発想のきっかけは»

当社は2号警備が中心で、隊員に職場環境の悩みを聞くと「トイレに困っている」という意見が多く、それは私も現場に出る時に感じます。中には水分補給を減らすという隊員もいました。トイレの問題は警備員に限らず、建設現場で働く人に共通です。人手不足対策として職場環境の改善が急がれ、警備業も建設業も女性の活躍が期待される中、誰もがより快適に働ける環境づくりに役立ちたいと考えました。

初めての稼働は、当社の地元、群馬県伊勢崎市の総合公園で開かれた花まつりでした。警備を行って来場者にトイレカーを提供したところ、家族連れやお年寄りに好評でした。現在お客さまから問い合わせをいただいており、これから建設現場などでの活用を広げていきたいです。

«警備業、電気工事、介護事業をグループで展開しています»

当社は父(小淵仁三郎代表取締役社長)が創業し、38年目を迎えました。父は、配電工事会社も経営し、特別養護老人ホームを運営する社会福祉法人の理事長も務めています。私は製薬会社で営業を担当していましたが、事業継承を決心して当社に入り、5年目です。

当初は、異なる3つの事業を受け継いでいくことに不安やプレッシャーを感じました。しかし警備と電気工事と介護には、お客さまの日常を見守るという共通点があると気づきました。そこで<日常を見守る>というミッションをグループで掲げ、全員で同じ方向を目指して業務を行っています。

«最初に取り組んだことは»

父が進めていた社会保険の加入促進を引き継ぎました。「隊員は宝と思いなさい」と父から言われ、また、群馬県警備業協会の関係者の方々からアドバイスを聞き、勉強しました。取引先を一軒一軒回って「社保加入していない警備員を、現場に立たせることはできません」と法定福利費について説明し、適正料金を理解してもらいました。加入したがらない高齢の隊員には根気よく話をして、わかってもらいました。条件を満たす隊員のほぼ100パーセント加入を1年ほどで果たしました。

«人手不足の中で、離職の防止が重要となっています»

当社は隊員45人のうち勤続20年以上が3人、10年以上が5人です。長く勤務する隊員に話を聞くと「技能や経験を会社がもっと評価して賃金を上げてほしい」との思いがあるとわかりました。そこで「人事考課制度」を取り入れて、昇給に反映しています。

隊員を「資格者」「経験者」「65歳以上5年未満」「新人」に分けて、それぞれに6つの等級(A〜F)を設定し、本人の頑張りと社内の評価、顧客の感想などを考査して、等級が上がる仕組みです。2年前から行い、隊員の働きがいをより高めて、資格取得などのスキルアップにつながっています。

最近、隊員全員の携帯電話に会社のメッセージを同時配信できる「SMS一斉連絡サービス」を導入しました。新入社員や退職者、検定合格者の名前、給料支給日などの社内情報を知らせています。現場への直行直帰が多い中で、隊員が会社の情報を共有することで連帯感を持ち、コミュニケーションを深めることも定着に通じると考えています。

«伊勢崎市の事業「認知症サポーターのいるお店」に登録されています»

従業員の1割以上が「認知症サポーター養成講座」を受講した事業所を市が登録します。当社は20人以上の隊員が受講し、認知症の人の症状などを学びました。警備中、徘徊する人にいち早く気づいて対応すれば事故やトラブルを防ぎ、人助けにもなります。

超高齢化が進み、警備業は福祉面の対応を一層求められます。隊員の技能や知識を高めてサービスを向上し、地域社会を見守っていきます。