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警備業ヒューマン・インタビュー
――現場の声を聞く2018.10.21

小林多喜さん(日章警備保障代表取締役社長)

「録画・ウェブ」面接を導入

«採用面接に新しい方法を取り入れました»

録画面接とウェブ面接です。録画面接は、応募者がスマートフォンなどのカメラ機能を使って、志望動機など当社が用意した質問に答えて自己PRする動画を自分で撮影し、専用のサーバーにアップロードする仕組みで、24時間いつでも応募が可能です。

応募者が動画をアップロードすると、ただちに私や採用担当者のスマホにメールで通知が来ます。採用の関係者が動画を共有して、いつでも内容を確認できます。

ウェブ面接は、応募者が同様にスマホなどを使って、採用担当者と時間を打ち合わせて、遠隔で話すものです。当社は、グループ形式の1次面接と個別の2次面接を行って採否を決めますが、録画・ウェブ面接はこの1次面接に相当するものとして、1年ほど前から導入しました。

«利点は何でしょう»

当社は首都圏で施設警備業務を展開していますが、営業所が少ないため、面接では茨城、千葉、埼玉、神奈川などに住む人に都内の本社まで来てもらいます。新しい面接方法なら、遠方から日程を調整して来社する手間が省け、スピーディーに1次面接を受けられるのです。

もちろん採用決定までには、2次面接でじっくりと話し、警備員の欠格事由の有無を確認するなど厳格な審査は不可欠です。どの業種も人手不足に悩む中、応募者の利便性を考慮することで採用の機会を増やしたいと考えます。

導入後の応募数は、際立って増えたとは言えませんが、遠くに住む応募者から好評で、徐々に浸透していくと思います。また、30代から50代の比較的若い人からの応募の増加につながっています。

旧来の募集方法で人が集まらない以上は、SNSの活用などを含むWebマーケティング的手法を積極的に取り入れる姿勢が必要だと考えています。

«新卒者の採用活動はどう行っていますか»

今年、高校の新卒者に業務をアピールする「日章警備保障のおしごと紹介」と題する動画を製作して、都内の高校などにディスクを配布しました。警備員が出演し、施設警備の巡回やAED、消火器を使う訓練の様子などを伝える2分間ほどのムービーです。

高校生の採用活動では、まず就職を担当する教師に自社の業務を丁寧に説明して、信頼を得ることで生徒を紹介してもらえます。そこで今回の動画は業務の紹介に加えて、2人の若い警備員が、警備先のビルで働く人との間に生まれる信頼関係や業務に対する思いを話し、さらに「警備業は高齢の人の仕事というイメージがあるかもしれませんが、若い人も働いているという明るいイメージを世の中に広めたい」と率直にアピールするものにしました。

この動画を見た高校3年生が先日、職場体験で当社を訪れて「安全安心を守る仕事だとわかって、興味を持ちました」と言った時は嬉しく思いました。警備の仕事を多くの人にわかりやすく伝えるために、動画の活用は有効と考えています。

こうした採用活動を無駄にしないためには、入社した人が長く働ける環境づくり、定着の促進を心掛けなければなりません。

«どのように取り組んでいますか»

従業員が「辞めたい」と言った時は遅く、その前に手を打たなければなりません。人間関係や職場環境の悩みなど、離職の原因となるものを早めに把握して、対応することです。そこで内勤者が警備員の意見を聞く面談会を開きます。特に新人が入った職場では、短いスパンで行います。

面談会の前に、メールでアンケートを行って新人警備員の意見や悩みごとをリサーチしてから話し合うことで、より早く問題点に対応できます。

環境改善は定着のために非常に重要と感じます。労災事故の恐れがある危険な階段の修理や、警備員の休憩室の整備などは、自社では行えません。ユーザーに交渉して、理解を得ることが大切になります。

働き方改革に伴って、施設警備では長時間労働の是正などの課題を抱えています。改革に取り組む中で、従業員の福利厚生の拡充や健康に対する親身なケアなど、より働きやすい環境づくりを進めていくことが、応募者の増加と定着に結びつくと考えています。

警備業ヒューマン・インタビュー
――現場の声を聞く2018.10.11

川村優子さん(マルコン警備保障代表取締役)

女性の活躍へ環境づくり

«「女性経営者セミナー」でパネリストをつとめました»

このセミナーは、千葉県の君津商工会議所が開き、各業種の女性経営者が経営の秘訣などを発表するものでした。私は、交通誘導警備や雑踏警備の現場を経験してきた中で実感した「警備員は、なくてはならない存在だ」という思いを来場者にアピールしたいと考えました。

警備の原点は、やはり教育です。そこで当社の教育内容を紹介しました。会社の敷地で車を走らせて誘導の基本を実践的に教えるプログラムや、警備業の労働災害で多い「転倒」を防ぐ現任教育についてです。当社の高齢警備員が転倒して休業した事例があったため、「君津健康センター」の健康運動指導士を講師に招いて、転倒予防のポイントや“転ばない体づくり”を解説してもらったことを来場者に伝えたのです。

その後に、私は交通誘導警備の実技を見てもらいたいと考えて、ステージで誘導棒を持って“進行”の合図などを行いました。

«来場者の反応はいかがでしたか»

セミナーの数日後に、来場した若い女性と話す機会があり、「警備員さんが専門的な教育を受けているとわかって、街で見かけると頼もしく感じます」と言われ、嬉しく思いました。

人手不足が続く昨今は、業界の各社、関係者が求職中の人に向けて警備の仕事をPRすることが重要となっています。いわゆる“3K”のマイナスイメージが先行しがちと言われますが、PR次第で警備業に興味を持たせることはできると思います。

法定教育や安全対策、警備業務検定が国家資格で、その取得を会社が奨励していることなど、業界内では当たり前であっても世の中にはあまり知られていない情報を、より広く伝えることで警備の仕事に関心や好印象を持つ人は増えるはずです。

特に交通誘導警備は、若者や女性の応募が非常に少ない状況ですが、各社が色々な方法でPRを重ねれば、徐々に変えていけるのではないでしょうか。

«女性警備員が増えるためのポイントは何でしょう»

交通誘導警備ではトイレや着替え場所などの問題があり、簡単には解決できないものです。重要なのは、経営者がフォローする姿勢だと思っています。

私は、採用面接の段階で労働環境の厳しさを率直に伝えた上で、会社が親身になってバックアップすると説明します。

安全対策はもちろん、適材適所となる配置を心掛けるとともに、私と警備員指導教育責任者で巡察に力を入れています。会社の規模を広げるより、隊員一人ひとりに目が行き届く範囲で業務を行うのが当社の方針です。警備現場の状況を見ながら隊員の意見を聞く巡察は、重要なコミュニケーションです。

«従業員160人のうち「警備なでしこ」は9人です»

全員が交通誘導警備に従事しています。歩行者に協力をお願いする時の柔らかな声掛け、丁寧な案内など、女性ならではの気配りと優しさは、警備現場を活性化させるとユーザーから評価されます。一般の方から「先日、女性の警備員さんに親切に対応してもらいました」とお礼の電話が来ることもあります。

女性が安心して長く働くことのできる環境づくりを進めて、活躍の機会を広げたいと考えます。また今後は、働き方改革に伴った就業環境の改善に取り組んでいきます。

«どのような改善ですか»

私が特に必要と感じるのは、短時間勤務の導入です。子育てや介護など、それぞれが抱える事情によって、週に2〜3日だけ働きたいという人がいます。当社にも中学生の子供を育てている女性警備員がいます。多様な働き方のニーズに応える勤務体制を整えていきたいです。

例えば商業施設などは、土日・祝日だけ働きたい人も勤務できますが、交通誘導警備では、先々の勤務シフトを作成するのは難しい面があります。

しかし今は女性に限らず、若い男性で短時間勤務を希望する人もいます。人手不足を克服する一環として、求職者の希望に応える工夫をしていかなければならないと考えています。