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警備業ヒューマン・インタビュー
――現場の声を聞く2018.8.21

齋藤秋江さん 橋本淳さん(全日警)

仲間の応援でコンテストV

全国15空港で保安検査を行う警備会社14社が参加した「保安検査コンテスト」(主催=国内定期航空保安協議会)が6月13日に開かれ、羽田空港第2ビルから出場した全日警が優勝した。全日警代表の齋藤秋江さんと橋本淳さんは自ら立候補して出場、数多くのシミュレーション練習を経て大会に臨んだ。

«優勝が決まった瞬間の気持ちはどうでしたか»

齋藤  しっかり練習して臨んだので、その成果が出てうれしかったのが一つ。もう一つは学生時代に吹奏楽部所属だったのですが、1位になったことがなく、初めて1位を獲れたうれしさで胸がいっぱいになりました。

橋本  私も練習の成果が出たことに加え、会場で応援してくれた先輩や同僚の期待に報いることができてうれしかったです。

«お2人とも立候補して出場したと聞きました。どのような準備をしましたか»

齋藤  私は現場での保安業務に加え、接遇リーダーとしてお客さまとの応対を社員に指導しています。保安現場での技能スキルを確認したかったことと、指導者として教えていることが正しいか確認したいと考えて立候補しました。

初開催の大会だったので、どのような審査か分かりませんでした。「このようなお客さまだったら、このように応対する」というシミュレーションを数多くしました。特に最近は外国人旅行者が増えているので、英語と中国語での応対も練習しました。しかし、本番では日本語も英語も通じないタイ人とフランス人のお客さまという設定で焦りました。

橋本  私は同僚から出てみないかと言われ、このような大会に出場する機会は貴重な経験になると考えて出ることにしました。練習は齋藤さんと一緒にやりました。

«優勝できた理由は何だと思いますか»

齋藤  想像していたより立派な会場で、まずそこにびっくりしました。そして照明や音響があること、カメラマンがいることに緊張しました。しかし審査が始まると緊張せず、思っていた以上に力を発揮できました。

ほかの出場者に比べて勝っていたと思う点が1つあります。どのようなお客さま相手でも、どのような質問をされても、とにかく黙り込んだり困った様子を見せたりしないようにしました。身振り手振りも含めてコミュニケーションを取り続けたことが評価されたのではないでしょうか。

橋本  私もとても緊張しました。制限時間の10分が長く感じられ、言いよどむこともありました。それでも仲間の応援が後押ししてくれて優勝できたと思います。

«齋藤さんは中途入社で、橋本さんは新卒入社です。警備業を志した理由は?»

齋藤  専門学校を卒業して、ラジオ番組の制作会社でディレクターを7年間していました。退職して仕事を探すときに、とにかく空港で働きたいと考えました。空港で働く中でも、飛行機が離陸するまでのどこかの工程に携わることができる仕事を探し、入社しました。ただ、当時は保安検査を民間企業である警備会社がやっていることさえ知りませんでした。

橋本  私は公務員受験の専門学校に通っていたのですが、実は自分が将来どのような仕事をしたいのか決めかねていました。そうするうちに就職活動の時期になり、学校から全日警を紹介してもらい、「空港で働くことができるなんて、かっこいい!」という理由で興味を持ちました。

«普段はどのような点に注意して業務に当たっていますか»

齋藤  保安検査場では、どうしてその制限品を持ち込んだらいけないのか、初めて飛行機に乗るお客さまにも分かるように説明するよう心掛けています。指導者としては、以前は自分の理想を押し付けてしまいがちだったのですが、今は相手の特長を探し、「この人の長所を伸ばすにはどうすればいいか」と考えたり、「どうすれば興味を持って学習してくれるか」を考えるようにしています。

橋本  今は夏休み時期で検査場がとても混んでいます。普段以上に忙しく大変なのですが、検査を終えたときにお客さまから「お疲れさま。ありがとう」と声を掛けてもらった時は、とてもうれしいですね。

«仕事をする上で感じていることと、目標を教えて下さい»

齋藤  私は管制や教育にも携わっているのですが、どうすれば女性が警備業に興味を持ってもらえるかと日々考えています。私もそうだったのですが、女性で初めから就職先に警備業を考える人は少ないと思います。ところが、実際の保安現場では女性の方が多いのです。若い女性に業界をアピールする方法を考え、多くの人に入社してもらいたいです。

橋本  保安ゲートでの作業は5工程あるのですが、私はモニターによる映像確認だけは、まだ就けていません。現場で先輩と一緒に映像を見て訓練したり、休憩中も練習用の機器を使い訓練するなどしています。早くモニター確認の業務ができるようになりたいです。

警備業ヒューマン・インタビュー
――現場の声を聞く2018.8.01

北村まり子さん(関東警備システム 代表取締役)

保育園事業で地元貢献

«神奈川県秦野市で警備会社を経営して22年目の今年、市内に保育園をオープンしました»

当社は地元の暮らしに密着した警備業務で成長し続けてきました。私は秦野市で生まれ育ち、地元の地域社会に対して恩返しをしたいと常々思っていました。

昨年、社会福祉法人を立ち上げ、1月に市内で保育園事業を開始しました。実は以前から保育園の運営に関しては興味があり、構想を持っていました。保育園事業を行うことで、子育て支援を通じた地域社会への貢献ができればと考えたのです。

名前は「ハレノヒ保育園」、市認可保育所として0歳児から5歳児を90人受け入れています。自然環境を生かしてのびのび遊べると同時に、セキュリティーや事故防止に万全を期します。警備業と保育事業は、ともに危機管理が重要という共通点があると感じております。

«お母さんが女性警備員という園児はいますか»

今のところはいませんが、さまざまな業種で女性の活躍推進が必要とされる時代です。女性警備員が安心して子供を預けて活躍してほしいという思いはあります。

業界が人手不足の慢性化という悩みを抱えている中で、保育によって子育て中の女性を応援することが新たな人材の確保につながっていけば良いと考えています。

«地域密着の業務を行う上で、大切にしてきたことを聞かせて下さい»

質の高い警備を行って信用を積み重ねることです。その原点はやはり教育で、資格取得などのスキルアップは欠かせません。

隊員が技能を高めていくためには、向上心を持つことが必要です。「毎日同じでは駄目、今日よりも明日が良くなることを目指そう」というのが私の信条で、隊員に伝えています。ゼネコンなどのユーザーから表彰された隊員には社内で賞品を出して、他の隊員に「次は自分ももらえるように頑張ってほしい」と呼び掛けます。資格取得や表彰という具体的な目標は、励みになるようです。

また、技能の向上に加えて、礼儀や言葉遣いなど、接客マナーを厳しく指導しています。

顧客満足度が上がっていけば、従業員が幸せになっていく。この両輪によって会社は発展すると考えています。より質の高い警備を行い、適正な料金を確保して隊員の処遇改善を進めなければなりません。

«社内コミュニケーションを大切にして、事務所の2階が社員寮です»

1人部屋が11室あります。以前は会社から離れたアパートを寮にしていましたが、距離が近くなったことで隊員と内勤者の交流が増えました。

隊員の定着を図るには、日頃のコミュニケーションの積み重ねが大事と思っています。職場の人間関係に対する不満が離職の引き金とならないよう、管理職が巡察などを通じて隊員の意見を吸い上げて必要な対応をすることで定着に結びつきます。

«給料を手渡して隊員と話します»

今の時代にそぐわないかもしれませんが、創業以来、給料日の夕方に隊員に会社に集まってもらい、一人ひとりに給料袋を手渡しながら、健康状態や生活のことを聞きます。約80人の給料袋を用意するのは大変ですが、現場への直行直帰が多い隊員に「帰属意識」を持ってもらうため、皆で顔を合わせる機会は大切です。最近疲れがたまっていないか、困ったことはないかと言葉を交わして、時に相談を受けることもあります。

給料日には全体ミーティングも行って、お客さまに評価された好事例や改善すべき点などを管理職が発表し、隊員が自由に意見を言います。堅苦しくならないよう、夏は冷やしたスイカを食べながら行っています。

心掛けているのは、対話を重視する雰囲気づくりです。上司と部下、隊員同士の意思疎通がスムーズであれば、サービスのさらなる向上と労災事故の予防につながります。例えば熱中症対策では、水分と塩分のこまめな補給と適切な休息に加えて、隊員同士がお互いの体調を気遣う姿勢も欠かせません。

警備の技能も社内コミュニケーションも「今日より明日の向上」を目指して取り組んでいます。