警備保障タイムズ下層イメージ画像

トップインタビュー

警備業ヒューマン・インタビュー
――健康経営2019.10.21

梅田重則さん (豊田東海警備 代表取締役副社長)
       (日本信託警備 代表取締役社長)

トレーニングルームで交流

<<従業員が24時間いつでも使用できるトレーニングルームを10月から社内に開設しました>>

トレーニングルームは、豊田東海警備グループの本部ビル(愛知県蒲郡市)にあり、警備員、内勤者など、それぞれ就業時間の異なる全従業員がカードキーを使うことで365日、自由に利用できます。土・日曜日と祝日は、従業員が同伴すれば家族も利用できる福利厚生施設です。

90平方メートルの室内に、2台のランニングマシン、足でこぐエアロバイク、乗ることで体幹を鍛える振動マシンなど、老若男女が使いやすい健康機器を置いてあります。壁面に大型ミラーを備え、ウエートトレーニングの器具を揃えて、軽めの運動から本格的な筋トレまで可能です。シャワー室、休憩用の和室もあります。

これは社員の健康を増進する「健康経営」の一環として開設しました。健康経営は、社員の健康を重要な経営資源と捉え、体調管理や健康づくりを推進し、企業価値の向上などを図る取り組みです。

昨年、創業者・佐々木義祐が他界し、本部ビルに残された執務室を有効活用できないかと考えました。肥満や生活習慣病の予防には、日頃の運動が効果的ですが、身近に体を動かす場所がないと実行できません。誰もが手軽に運動できる環境を社内に作ろうと思い立ち、リフォームを行って、トレーニング器具を置いたのです。

<<従業員からは、どのような感想がありますか>>

「勤務の後にマシンを使って10分ほど汗を流すと、体がほぐれて心地よく帰宅できる」、「これをきっかけに体力づくりを始めた」などの感想を聞いて、嬉しく思っています。

健康増進に加えて、従業員同士のコミュニケーション向上もトレーニングルームを開いた目的の1つです。警備員は現場への“直行直帰”が多く、同じ会社に所属していても顔を合わせる機会は少ない。全員一丸となって社業に従事する意識、一体感を醸成する上で、親睦を深める機会は大切です。ボウリング大会やパターゴルフ大会などを開いていますが、このトレーニングルームを“日常的な交流の場”として活用してほしいと思います。

<<健康経営に取り組む理由は何でしょう>>

一人ひとりが健康管理を意識して、いきいきと働くことは、業務サービスの質を高めるとともに、企業のイメージアップにつながると考えています。

全従業員の健康診断の実施はもとより、産業医が毎月来社し、健康面に不安を感じる従業員は個別に相談できるようにしています。メンタルケアに向けてストレスチェックを行うほか、「三河湾健康マラソン」など健康関連の地域イベントに従業員と家族が積極的に参加します。こうした取り組みを重ねて、今年8月に蒲郡市の「健康づくり推進優良事業所」に選ばれて表彰を受けました。

<<健康経営による求職者へのアピール効果が期待されます>>

従業員の募集や面接など採用活動を行う際に、トレーニングルームの自由な利用を「企業のPRポイント」にしていきます。特に若い人に興味を持ってもらうためには、今までなかった新たなポイントをアピールすることが必要になります。

一方、残業の削減など職場環境の改善は重要な課題です。従業員の中には「トレーニングルームの設置はありがたいが、残業を減らしてほしい」という思いがあることは感じています。厳しい人手不足が続く中、採用活動を地道に進めて従業員を増やすことで、残業削減につなげなければなりません。

また当社は、地域に根差した企業として、小学校での防犯教室などを開催しています。健康増進、地域貢献、さまざまな活動を重ね、その情報を発信して地元の方々から関心や好感を持っていただくことが採用活動のプラスになると考えて、今後も取り組みを進めていきます。

警備業ヒューマン・インタビュー
――緊急援助隊2019.10.11

近藤孝さん(アン・シン 専務取締役)

訓練では〝人の和〟を重視

<<「静岡県警備業緊急援助隊」の隊長を13年務めています>>

緊急援助隊は、静岡県警備業協会の会員で編成され、現在27社96人で、警備業務検定1級、2級の資格者が多くいます。

発足したのは、阪神・淡路大震災の翌年の1996(平成8)年です。協会が災害時支援の基本協定を県知事と締結し、細目協定を県警察本部長と締結したことに伴って編成されました。

毎年8月に県警生活安全部の指導のもと、訓練を行っています。イベントや花火大会のある時期で、隊員は業務に追われて集まるのが難しい中、今年は30人が参加しました。運転免許センターで実際に車を10台ほど走らせて、信号が消えた状態の交差点で警察官と連携する交通誘導や、手旗を使用する効果的な合図の方法に取り組みました。

私の前に隊長を務めた静岡警協の徳田和人会長も毎年訓練に参加され、「発災時の即戦力として活動できるように」と隊員に実技指導を行っています。

負傷者の搬送訓練では、負傷者役の人たちの怪我の程度をそれぞれ違う設定とし、隊員には知らせません。隊員は相手に接する中で重傷か軽傷か探ります。“早く運んでくれ”と騒ぐ軽傷の人をなだめ、より重傷と判断した人を先に搬送するなど、リアルな状況を想定しています。

<<訓練の中で特に工夫されていることは>>

少人数のチーム内で、どのようにコミュニケーションを強化するか、心を砕いています。なぜなら緊急援助隊が出動する時、状況によっては、初対面となる隊員数人がチームを組んで、緊急交通路の確保のために交通誘導などを行わなければなりません。災害現場、想定が及ばない特殊な状況下で、経験や練度、所属会社も異なる隊員同士が意思の疎通を図って、緊密に連携することが求められます。“人の和”が非常に重要になるのです。

そこで今年の訓練に「チームづくりのプログラム」を加えました。隊員が4、5人のグループに分かれ、自己紹介スピーチや互いの共通点を探す会話などをして、相手に関心や親近感を持てるよう心掛けた上で実技に取り組みました。

これは私が長年、特別講習講師を務めてきた経験がヒントになっています。実力がありながら緊張して力を発揮できず不合格になる受講生がいるため、講義の時に受講生の緊張をほぐそうと「隣の受講生を敵やライバルと思わず、気軽に話しかけよう」などと呼び掛けているのです。

実技のスキルアップだけでなく、隊員同士の仲間意識を高めるさまざまなアイデアが必要です。

<<災害支援活動で課題となるのは何でしょう>>

昨今、大規模な自然災害が頻発し、一方で慢性的な警備員不足が続く中、発災時にどれだけの隊員が集合できるのかと不安を感じます。東海地方から西日本にかけて、南海トラフ巨大地震が30年以内に高い確率で起こるとの予測があります。隊員が、自分の家族や所属会社、警備先の顧客が被災している状況にあって支援活動に参加できるか、悩ましい問題です。

 そこで、被災した県には、他県から援助隊員が出動して活動できる体制づくりが必要と感じます。自治体・警察・警備業者による「広域支援協定」が確立されることが望ましいと考えています。

<<緊急援助隊の訓練風景を動画で公開しています>>

特別講習講師が訓練を撮影して3分ほどの動画に編集しました。動画投稿サイト「ユーチューブ」で「静岡県警備業協会」と検索すれば、訓練の様子のほか、静岡警協が制作し地元テレビ局で放送されている警備業をアピールするCMも見ることができます。

私も、業界PR活動として自分のフェイスブックに訓練の動画を投稿し、他業種の知人などに“見て下さい”と呼び掛けています。動画を見た人が「災害に備える警備業の社会貢献活動」に関心を持ってくれるよう願っています。

<<昨年の西日本豪雨災害を契機に警備業の災害出動に対する「有償化」の動きがあります>>

警備業のステータスを高める上で、有償化の動きが広がってほしいと思います。有償化は社会的な評価であり、活動する隊員のプライドに結びつきます。

隊員が安全を守る専門の知識と技能、ノウハウを備えていることについて、行政側に理解を深めてもらうことが、有償化につながっていくと考えます。

警備業ヒューマン・インタビュー
――警備ロボット 2019.10.01

丹野和友さん(ALSOK 開発企画部課長代理)

理科大卒、開発志し入社

<<丹野さんが開発と企画を担当した警備ロボット「REBORG―Z(リボーグゼット)」が全国で採用され始めています>>

「REBORG―Z」はそれまでの警備ロボット「REBORG―X」を改良・進化させて今年の春に完成しました。インターネット接続会社のデータセンター(千葉県白井市)で採用されたのを皮切りに、9月からは静岡の空港と熊本の商業施設で導入されています。いずれも日中は来場者の受付や案内を行い、夜間は施設内や敷地内を巡回警備しています。

<<これまでのALSOKの警備ロボットとの違いと、それを実行するために難しかった点は何でしょうか>>

これまでのロボットにはなかった防水・防塵仕様となっています。最近建設されるオフィスビルや商業施設には中庭やテラスを設けていることが多いことと、これまで当社ロボットが担当しなかった屋外での巡回警備も手掛けたいと考えたからです。データセンターでは屋外での巡回警備を行っており、現時点では雨天時でも動作に支障はありません。

屋外での警備に際し、搭載している監視カメラなどが期待通りの性能を発揮するのかを確かめました。基本的に監視カメラは固定して使うことを前提としており、移動するロボットに搭載することを考えては作られていません。さまざまなメーカーのカメラや画像処理技術を比較し、試行を重ねて選択しています。

<<警備ロボットにどのような役割や効果を期待していますか>>

当社は1982年から労働集約性の高い常駐警備の効率化を図ることを主な目的に、警備ロボットを研究開発してきました。近年は少子高齢化などもあり、全国的に警備員不足が顕著となっています。そこでロボットでもできることはロボットに任せることで、人間は人への対応などに時間を割くことができます。10人の警備員で担当していた現場を、警備員9人とロボット1台という警備隊編成にするなどの省人化だけでなく、最新のセンサーやカメラを使うことで警備水準を上げることもできます。

警備員の代わりに採用するため、ロボット費用が人件費よりも高くなってはお客さまに納得していただけません。「REBORG―Z」はそれまでのロボットに寄せられたお客さまや警備員からの声を反映し、4か国語による外国語対応や顔認証機能などを標準実装しましたが、価格は警備員1人の人件費よりロボットを1台導入する方がお金はかからない程度に抑えています。オプションの火災検知機能・初期消火機能などを追加実装することでさらなる価値を提供できると考えています。

<<警備会社に入社してロボットに携わると思っていましたか>>

実は、私は警備ロボットの開発を手掛けたいと思って当社に新卒入社しました。大学では理工学部で制御工学を学び、就職活動もメーカーを中心に行っていました。その最中にロボットの展示会を見学し、そこで当社が警備ロボットを出展しているのを見て興味を持ちました。メーカーに入社するとセンサーや回路など部分的な開発が中心となりますが、ALSOKではいろいろな機器を組み合わせてロボット1台を作ることができると考えたからです。

会社説明会に参加して、警備業は年を追うにつれて需要が増えており、産業としても成長を続けるに違いないと確信しました。世界的にも珍しい警備ロボット開発を手掛けてみたいと思い、入社を決めました。

入社してすぐに埼玉県にある支社で機械警備に使う機器のメンテナンスを担当し、それから本社開発部門で法人向けセキュリティー機器の開発を行いました。警備ロボット開発のやりがいは、前例のない分野ということと、お客さまや現場警備隊からの意見や感想を直接聞けることです。

<<警備ロボットはまだ採用数が少ないのが現状です。いつ頃から普及すると考えていますか>>

まさに今が普及加速の時です。東京をはじめ、全国各地の都市部で不動産再開発が行われています。オフィスビルや商業施設が完成すれば警備の新規需要が生まれますが、警備員は不足しているのが現状です。ロボットをアピールする機会だと思いますし、引き合いも多く来ています。今年から来年にかけて国内で一気に普及させ、その後はアジア各国でも普及させたいと考えています。