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警備業ヒューマン・インタビュー
――富士登山を守る 2019.9.11

幡野しのぶさん(ケイビイワイ 代表取締役社長)

人が嫌がる仕事しよう

<<富士山の登山道で警備を続けています>>

富士山山頂へ至る登山ルートは全部で4つあります。その中で登山客が最も多い「吉田ルート」の六合目・標高2390メートルにある「富士山安全指導センター」で15年前から警備業務を行ってきました。警備員7〜8人が交代で1週間常駐します。

業務の目的は、登山客の安全維持を図ることです。具体的には安全登山指導、救急対応、気象情報の提供、仮設トイレの管理、連絡掲示板の管理、登山者数の調査などです。警備員は自分の食料や寝具を持参して勤務に就きます。

<<業務は多岐にわたります>>

登山客が高山病で倒れたり、万が一事故が起こったときは、救護の支援を行うこともあります。富士山が世界遺産に認定され外国人登山客が増えていることから、外国語での対応も求められます。

それと同時に七合目・標高2750メートルにある「救護所」のトイレの維持管理も続けてきました。トイレは微生物が排泄物を分解する“バイオ式”なので臭気が少なく快適に使用してもらえます。

当社は今シーズンから六合目の警備は辞退し、七合目の業務のみを受注しています。その理由は、六合目の業務は泊まり込みで24時間体制で行うことから、今年4月から施行された働き方改革関連法への対応が難しいためです。

<<富士山の警備は、ほかの警備会社ができない専門職ですか>>

六合目・七合目の業務は、入札条件に富士山警備の実績が必要で、簡単には参入できません。一方で、富士スバルラインの料金所手前交差点で富士山パーキングへ誘導する業務と終点の五合目駐車場警備は、山梨県警備業協同組合で受注し、組合各社が持ち回りで行っています。

<<富士山警備を始めた幡野美好会長は、幡野社長の実父であり山梨県警備業協会会長です>>

父は1996年に当社を創業しました。私は短期大学で幼児教育を学び、卒業後は知的障害者の施設で保育士を19年間していました。当社に入社し、2年前から代表取締役を引き継ぎましたが、当初は「3K」のイメージがあった業務に馴染めませんでした。しかし片側交互通行の現場に出ると、深い読みやセンスが必要な仕事であることに気が付いて考えが変わりました。

例えば10トントラックが近づいた時に無線で「空荷だから」という連絡が入ります。これはつまり「上り坂で大型車両だけど空荷で発進が難しくないから止めても大丈夫」という連絡です。

荷物を積んでいて重量がある車両はできるだけ止めないで流すことで交通の流れはスムーズになります。大型トレーラーに牽引されるトレーラーのタイヤが浮いているときはリストアクスル(車軸自動昇降装置)が作動しているので「空荷」と判断しています。

<<経験と技術が求められます>>

当社では警備員を能力によってAランクからCランクまで分けています。能力が高いAランクの警備員は、お客さまから指名がかかります。そこでCランク警備員の面倒をみながら業務にあたるようセットで配置し、全体の底上げを図っています。資格検定所持者は、能力別のランクとは別に評価し、手当を支給しています。

<<社名の「ケイビイワイ」はどういう意味でしょう>>

「株式会社・便利・屋」の頭文字をとったものです。父は創業時に警備業以外でも「人が嫌がることをして手間賃を頂ける仕事をしよう」という理念のもと、さまざまな仕事を受けました。例えば、スズメバチの巣の撤去や戸袋に巣を作ったコウモリの駆除、道路で轢かれた小動物の死骸の片付けなどの作業です。今でも当社の理念であり、そうした要請があれば現場に向かいます。

<<生活安全産業の務めを果たし地域貢献にもつながります>>

当社には警備事業部のほかに葬祭事業部があります。都留市の農業協同組合が葬祭業を行っていましたが、3年前に当社が要請を受けて「天翔鶴(てんしょうかく)」という葬祭場を造り、引き継ぐことになりました。

「天翔鶴」の2階は都留市と災害協定を締結した150人収容可能な緊急避難所です。本社近くに2年前、水田を3反(約3000平方メートル)借りて稲作を始め、収穫した米は災害時に食料にする「備蓄米」として、天翔鶴に保管しています。

地元の農家の方々から米作りについて教えてもらうことで地域との交流が図れます。今後は近くにある小学校の生徒さんに田植えを経験してもらうなど、コミュニケーションの場としても活用していこうと思っています。

警備業ヒューマン・インタビュー
――青年部の取り組み 2019.9.01

岩渕克人さん(エムサス 専務取締役)

就職希望の「母数」増やす

<<千葉県警備業協会青年部会の第2代部会長として取り組んでいることは>>

当部会は21人のメンバーが「雇用推進」「労災・安全衛生」「社会貢献活動」の3グループに分かれ、研究や情報収集を行っています。私は、4年前の部会設立から「社会保険の加入促進」に取り組んだ後、雇用推進の活動に携わってきました。

活動の中で、県内各地のハローワークで開かれる合同説明会に出向き、警備業について求職者に話しますが、そのたびに実感するのは他の業種に比べて参加人数が非常に少ないことです。

少ない求職者を業界内で取り合っている限り、人手不足問題は克服できません。大切なのは、就職希望者の「母数」を増やしていくことです。他の業界で働こうと考えている求職者を振り向かせ、選択肢に警備員を入れてもらう必要があります。

そこで当部会は現在、ハローワークなどに置いて警備業をPRする「リーフレット」の第2弾を準備しています。

第1弾は昨秋、世界的に有名な絵本「ウォーリーをさがせ!」などからヒントを得て、プロのイラストレーターを起用して1万部作成、会員に発送するとともに県内のハローワークに置きました。このリーフレットは、街で警備員が施設警備や交通誘導警備、現金輸送、空港保安など人々の身近に働いている様子を“一枚の絵”で伝えるものです。複数の県の警備業協会から「活用したい」と問い合わせをいただくなど好評です。

第2弾では、警備員が具体的にどんな仕事をしているか、業務の内容をわかりやすく伝えるリーフレットを目指しています。ポイントは“手に取ってもらえる”こと。ハローワークに各業界のチラシ類が置いてある中で、ひと目で興味を引くデザインの工夫、遊び心が欠かせません。警備に興味のなかった人が、リーフレットをきっかけに「警備員の仕事はこういうものか。やってみようか」と思い、次に各企業の処遇改善の取り組みなどを知って、就職に結びつく展開が理想的です。

<<11月1日「警備の日」に千葉警協が開く労働安全衛生大会「セーフティフォーラム」は青年部会が運営します>>

労働災害の根絶を目指し安全意識を高めることは、人材確保と同様に重要です。協会会員からの労災事故防止の論文、ポスター、標語を募集しています。“標語を作ろう”との視点で警備現場を見直すと、そこに潜む危険性や注意点を再確認できる。より多くの警備員が「自分の視点から生まれる労災防止標語」を考えて、事故防止を意識してほしいと願っています。

当部会のテーマは「勉強し、実践する」ことです。活動の過程で労務管理や働き方改革関連法などを改めて勉強し、最新情報を取り入れることは有益です。同世代の部会員と親交を深めて、他社が抱える課題をどのようにクリアしたか聞くのは参考になる。業界の課題を自分の問題として捉え、克服に向けて意見やアイデアを話し合う体験は、自社の経営にフィードバッグできるのです。青年部会に参加すると視野が広がり、物事を多角的に見られるようになると思います。

社会貢献活動では、9月1日の「九都県市合同防災訓練」に参加し、秋には警察署と連携した詐欺防止キャンペーンを行います。さまざまな業界が社会貢献活動を行う中で警備業は、他業種をリードする活動を積極的に行う必要があると考えます。

<<千葉警協労務委員会の副委員長として「自主行動計画」改訂版の周知活動にも取り組む中で感じることは何でしょう>>

適正取引推進に向けた「自主行動計画」は、中小零細企業の切実な願い、希望が込められたものだと感じます。自主行動計画の改訂版が、取引のスタンダードとして業界に浸透していくためには何が必要かと考えています。

警備業者が一丸となって推進することが効果的です。しかし、経営者の中には「自主行動計画を実現するために警備業協会は何をしてくれますか」と聞く人もいます。こうした“頼ろうとする意識”を変え、率先して適正取引を実現する意気込みで取り組んでほしいと願っています。それは自社と業界の発展のために絶対に必要なことなのです。