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警備業ヒューマン・インタビュー
――エリアセキュリティー2020.01.21

長濱大介さん
(東急セキュリティ タウンセキュリティ事業部鉄道警備部部長代理)

「IP無線」で施設間連携

<<東急グループのホームタウン、渋谷駅周辺で「エリアセキュリティ構想」を進めています>>

渋谷では2027年まで東急グループによる再開発が進められています。当社・東急セキュリティは渋谷駅半径1キロメートル圏内に警備する施設が集中していることから、それぞれの施設で異常情報を共有して非常時に素早く対応しようと考えました。まずは2015年4月に東急渋谷駅と駅直結の複合商業施設「渋谷ヒカリエ」で、距離の制限なくグループ通話や一斉呼び出しができるIP無線を使った情報のやりとりを始めました。17年11月からは、それぞれに設けている監視カメラの画像を相互の防災センターで確認できるようにしています。

施設間の連携を増やしており、現在は15施設でIP無線による情報共有と3施設で画像の相互確認を行っています。エリアセキュリティーに関わる警備員数は約400人です。

<<これまでどのような時に効果を上げていますか>>

東急電鉄が事故で運転を見合わせ、乗車をあきらめた人が渋谷駅からあふれ出た時です。同駅の警備員からIP無線による連絡を受けた「渋谷ヒカリエ」の警備員は、エントランスやエレベーターに警備員を配置します。多くの人が訪れて混雑しても警備員が的確な誘導を行うため、これまでにトラブルは発生していません。 

昨年9月に発生した台風15号で首都圏の交通機関が運転を中止した時も、素早い対応ができました。駅警備員から数時間後に電車が止まるという連絡を受け、駅周辺施設の警備員は施設の管理会社に連絡。その一つである開業前の複合商業施設「渋谷スクランブルスクエア」では、11月のグランドオープンに向けて準備をしていた施設従業員が業務を定時より早く終えて帰宅することができました。

渋谷駅と近隣の施設の多くは地下道でつながっています。利用者の多くは地下の全てが駅の一部と捉えていますが、場所によっては施設に所有権があります。一般的な警備体制だと駅と施設で警備隊が分かれ、対応する警備員も分かれることになりますが、エリアセキュリティーでは駅警備員が地下で負傷者を発見すると一次対応し、並行して施設の警備員に連絡して引き継いでいます。 

また、渋谷駅において目の不自由なお客さまが「渋谷スクランブルスクエア」の上層階までの誘導案内を希望された際は、駅警備員から施設警備員に無線で連絡し、速やかに誘導案内を引き継ぐことができました。

このような異なる施設の警備員間の連携でも、同じ会社に所属していることからスムーズに行えます。

<<複数施設の情報を共有する上で難しい点は>>

カメラの画像については、それぞれの施設に所有権があります。個人情報保護の問題もあるため、施設の事業主と協議を重ねて協定書を結びました。施設の事業主の中には東急グループ以外の企業も含まれるため、丁寧な説明が必要になります。

IP無線の導入当初は、現場の警備員は進んで使用しようとしませんでした。初めて使う機器なので、どのような時に使うのか戸惑っていたからです。積極的に使ってもらうために、日常の定時連絡をIP無線で行うようにしたところ無線の使用にためらいがなくなりました。現在は1日2〜3件の情報発信があります。

<<更に効果を上げるために、どのようなことに取り組んでいますか>>

私は昨年10月に発足した「渋谷エリアセキュリティ推進プロジェクトチーム」のリーダーとして、定期的に各施設の隊長を集めて情報を共有し、事件・事故の事例を踏まえて防止策について話し合うなど、現場の警備や連携に生かしています。今後は「東京2020」開催に向け、渋谷エリア合同のテロ対策訓練を計画しています。

現場の警備員が快く働くことができる環境づくりが大切だと考えています。警備員と直接面接する機会を設け、「休憩室に加湿器がほしい」や「残業が減って生活が厳しい」などといった生の声を吸い上げて、できることから一つずつ改善しているところです。それらは警備員の職場満足度アップに加えて、警備品質の向上にもつながると確信しています。