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警備業ヒューマン・インタビュー
――現場の声を聞く2018.5.21

山内三郎さん(アースアイズ 代表取締役)

不審行動を検知「AI防犯」

――AI(人工知能)を万引き対策に活用しています。

当社の「アースアイズee2」は、人の五感に近いセンシング機能と、予知・予測するAI機能を搭載しています。すでにホームセンターやスーパー、ドラッグストアなどで導入され、店内保安警備に活用されています。万引き犯の不審行動を検知して、店舗の安全管理や商品ロス改善に貢献しています。万引き対策にAIを活用し、実績を上げている会社は当社以外にありません。

――どのようなシステムですか。

従来の監視カメラは犯罪が発生したとき、または発生した後で人の目で確認するものでしたが、危険を事前に発見し未然に防ぐのがアースアイズです。カメラと連動するセンサーで空間をマス目状に区切って距離を測り、人と人の距離が近くても区別して把握し不審行動を検知します。

警備員の場合は不審者に対して1対1の関係ですが、アースアイズは1機でリアルタイムに複数の不審者を個別に検知することができます。

――検知するのは、どのような行動でしょう。

同じ場所をウロウロしたり、座り込んだり、立入禁止エリアへの侵入などでの不審行動で、当社独自の行動データと行動心理学に基づいています。人と動物、物との区別やエリア内の人数カウント、物の移動・置き去りなども検知します。

――実際に不審者を見つけたときに、どのように知らせるのですか。

不審行動などを検知したときには警報音を鳴らしたり、警備員やスタッフのスマートフォンやタブレットに、画像付きで自動通知します。それを受けて「何かお困りですか」などの声掛けを行うことで、万引きの未然防止や実際に困っている人へのサービス向上につながるのです。人がモニターを監視し続ける必要もなくなります。

――アースアイズの開発を始めたのはいつですか。

私は大学を卒業して大手メーカーの営業職に就き、退社して警備会社に転職しました。その後、「リテールサポート」というコンサルティング会社を創設し、万引き対策をはじめ社内不正や伝票管理の不徹底などを改善する“ロス削減”などををテーマに店舗コンサルタントを始めました。

当時、取り引き先店舗数は大手チェーンを含めて8000軒ぐらいあり、私や社員だけでは説明にまわりきれず、ノウハウのシステム化を試みたのがアースアイズ開発のきっかけとなりました。

――効率化のため必要に迫られたシステム開発でした。

当社はカメラが自動で万引きを発見する仕組みとして、2009年に「進化型万引き動作検知カメラシステム・サブローくん」を作りました。これは不審行動検知だけでなく、レジ待ち・レジ対応時間や商品注目度の計測、お客さま人数カウントなど店舗運営を総合的にサポートするシステムです。当時はAIとは表現していませんでしたが、この技術を踏襲してさらに進化させたのが現在のアースアイズです。

――昨年、国から評価を受けたそうですね。

昨年9月、NEDO(国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構)が支援する「優れたAIベンチャー企業の研究テーマ」合計57件の応募から、書面審査と試作品のデモによるコンテストで、当社を含む6件の研究テーマが選定されました。

6社はNEDOから委託費の支援を受け、2017・18年度の2年をかけてテーマに沿った研究開発を行っています。当社は、画像解析・音素解析・音源探知・嗅覚センサーなど人の五感に代わるセンサーとAIによる解析技術を組み合わせ、事故や事件の予防・抑止に役立つシステムを作ります。まずは、万引き対策を含む店舗のAI化を実現させるつもりです。

――警備員が不足していて、先進技術を活用する高品質の警備が注目されています。

AIは人の五感にはまだかないませんが、人と連携することで人手不足を補完する役目は果たせます。東京都立産業技術センターによる西武鉄道駅構内の安全性向上と駅係員の負荷を軽減するロボットを使った実証実験が、今年の秋から始まります。この実験を当社と日本ユニシス、西武鉄道の3社で行うことになり、1月から共同研究を始めています。「アースアイズ」の不審物・不審行動検知機能は期待されています。

警備業ヒューマン・インタビュー
――現場の声を聞く2018.5.01

久保田勉さん(ひまわり警備 代表取締役)

富士山で警備を20年

――富士山の警備を長年担当しています。

ひとくちに富士山警備といっても、さまざまな業務があります。当社は、河口湖町から五合目吉田口まで約30キロメートル続く富士山有料道路、通称「富士スバルライン」の警備を行っています。富士山北側一合目、四合目、五合目吉田口で、交通誘導や案内業務などです。4月から6月までは当社1社で9地点、以降のシーズン期間中は、当社を含めた山梨県警備業協同組合16社で対応しています。

――シーズン中はマイカー規制があると聞きました。

マイカー規制により、自家用車は料金所手前の「富士北麓駐車場」に停め、シャトルバスに乗り換えて五合目にアクセスします。

五合目駐車場は、普通車330台、バスは40台の駐車が限界で、それ以上の台数になると道端の路傍駐車場に誘導します。

――いつから富士山警備を?

山梨県道路公社から山梨県警備業協同組合に1998年、ゴールデンウイーク期間に限定した富士スバルライン警備の業務委託がありました。はじめは警備会社同士の統制がとれず、登山客から公社にクレームが数多く寄せられました。

翌年からは、7月から9月までシーズン中の警備を協同組合で受託するようになり、私は現場の警備の指揮をとることになりました。各社から富士山警備の隊長を選出し、富士山警備に特化した教育を実施しました。富士スバルライン全域にわたって人員配置など綿密な警備計画を立てましたが、そのときの計画書や日報のフォーマットは今も使用されています。

――警備上の課題はありましたか。

当時は、事前に十分な休息をとらず山小屋に泊まらないで夜通し歩く“弾丸登山”をする人が多く、警備員が50人体制となった時期もありました。寝不足だと高山病になりやすいことから看板やチラシを使って指導した結果、最近はだいぶ少なくなりました。

――富士山はどこが管轄しているのでしょう。

管理は山梨県と静岡県に分かれているだけでなく、県内でも複雑に分かれています。富士スバルラインは山梨県道路公社の管轄ですが、五合目駐車場にある「総合管理センター」は県の管財課や観光課の管轄ですし、六合目の「安全管理センター」は富士吉田市の管轄です。

――警備員は五合目より高地でも業務を行っていますか。

当社ではありませんが、入札で選ばれた警備会社が、六号目と七合目に常駐して業務を行っています。

六合目にある「安全指導センター」では、入山者の人数チェックや軽装の登山客に向けて安全指導や注意喚起、日本語・英語・中国語・韓国語の4か国語で書かれた地図の配布、富士吉田市が管理するヘルメットの貸し出し業務を行っています。清掃やペーパー補充など、トイレの維持管理も含まれています。

七合目では、公衆トイレの維持管理や、クローラー(重機)を使って行う傷病者の救急搬送の支援業務も行っています。

――外国人の観光客が急増しています。

富士山は2013年に世界文化遺産に登録されましたが、その10年ぐらい前から候補地となり、外国人の観光客が徐々に増え始め、現在約6割が外国人です。

以前は言葉の壁があり警備員とまったくコミュニケーションがとれず、トイレの使い方など習慣の違いもあって、クレームやトラブルもありました。今は警備員も基本的な英会話をマスターし、ホイッスルなど万国共通の合図を活用して、問題はかなり解消されています。

――富士山警備は、年間通じて行われているのですか。

富士スバルラインは冬季、ノーマルタイヤで走行できないときは通行止めとなりますが、それ以外は人気のドライブコースであり、五合目まで観光客が訪れます。また通行止めのときは料金所手前の交差点で案内する必要があり、警備の需要は年間を通じてあります。

富士山警備の実績は、山梨県警備業協同組合の財産であり、当社にとっても同様です。私は縁があって20年間にわたって警備に携わってきました。そのノウハウを今後、若い世代に引き継いでいきたいです。