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警備業ヒューマン・インタビュー
――全警協表彰警備員2020.02.11

甲斐竜也さん セコム天白支社

火災現場と事故車から救出

全国警備業協会(中山泰男会長)の「警備の日」全国大会で、顕著な功労を挙げた警備員として表彰された甲斐竜也さんは、セコム宮崎(宮崎市、八木順二社長)勤務時に火災発生直後の家屋から高齢女性を助け出し、消火を行った。その5か月後には、交通事故で車内に閉じ込められた女性2人を同僚と協力して救出、ともに表彰を受けた。

<<火災現場、交通事故現場で救助を行う大活躍でした>>

私は入社以来、BE(ビートエンジニア=緊急対処員)として、契約先の防犯センサーが異常を検知した時や救急信号があった時などにコントロールセンターの指示を受けて急行する業務に従事しています。

1度目の救助は2018年12月25日の昼前、宮崎県延岡市内の契約先を訪問した時のことです。お客さまは高齢で、夜間に何度か出動を要請され、防犯の相談を受けたことがありました。別件の業務が終了して「近くまで来たので、ごあいさつしておこう」という気持ちで伺いました。

玄関のインターホンを押して応答を待つと、室内から当社機器の警報音が鳴り出しました。何が起きたかと身構えた直後、コントロールセンターから私の通信端末に連絡があり、「現在訪問中のお客さま宅で火災異常が発生」と緊急対処の指示を受けたのです。お客さまの名前を呼んで玄関ドアを開けると、白い煙が立ち込めています。

「火事です!誰かいますか!」と大声を出して入りました。キッチンに煙が充満しています。電子レンジが異常な音を立てて煙を出し、火花が見えました。後で分かったのですが、出火の原因は古い型の電子レンジが“回りっぱなし”になり、長時間の加熱状態が続いたことでした。

室内を探すと、お客さまは別室でテレビを見ています。警報や煙に気づかない様子で、私を見て驚いています。火災が起きたことを知らせて屋外の安全な場所へ誘導しました。

私は社有車に搭載している消火器を持ってキッチンに行き、電子レンジが火元であると確認して消火器を噴射、消し止めました。まもなくコントロールセンターからの通報で消防隊が到着しました。

<<助けた女性からは、どのような言葉がありましたか>>

「あなたが来てくれなければ、私は生きていなかったでしょう」。そう言われて、業務の重みを改めて噛みしめました。

室内の煙を見た瞬間に思い出したのは、これまで受けた研修、実技訓練です。避難誘導、火元の確認、初期消火という一連の対処をスムーズに行うことができたのは訓練の成果と思います。

<<交通事故での救出は、同僚との共同作業でした>>

昨年5月1日の午前0時20分過ぎ、元号が令和に改まったばかりの深夜でした。私は後輩社員の福田拳士君(24)と業務のため延岡市内を社有車で走行中、交差点近くで、軽乗用車同士が衝突した直後の現場に遭遇しました。

1台は横転し、車内に人が見えます。自車を安全な場所に停め、周囲の安全を確認しながら事故車に近づきました。運転席側に横転した車内に20代の女性が2人、閉じ込められています。ボンネットから白煙が出て、車両火災の恐れがある中で「助けて!出して!」と叫んでいました。

助手席のドアは、ゆがんで開けにくい。2人で力を合わせ、開けることができました。「立てますか?」と確かめると「立てます」との返事。よろよろと立った女性を抱え上げる形で車外に出して、支えながら歩いて事故車を離れました。110番通報とコントロールセンターへの連絡を行い、すぐに警察と消防が到着しました。病院に運ばれた女性は2人とも軽傷だったようです。

周囲の安全確認も救助活動も、同僚と連携して円滑に行うことができました。一緒に「警備の日」大会で表彰を受けて嬉しく思いました。

<<人命救助の経験から得たものは何でしょう>>

緊急事態に直面した時、適切に対処するためには、日頃から教育訓練をしっかりと重ねてスキルを磨くことが大切と実感しました。訓練を続けることが自分の成長に結び付くと思っています。

機械警備の緊急出動は夜間の場合が多く、私たち警備員は人々が眠っている時間に安全安心を守っています。この警備という職業に使命感、やりがいを感じます。常にお客さまのことを思って、最適な業務サービスを提供して信頼を深めていけるよう取り組んでいきます。

警備業ヒューマン・インタビュー
――全警協表彰警備員2020.02.01

西山浩さん セコムジャスティック

ひと月で2度、電車内で救命

全国警備業協会(中山泰男会長)は昨年の「警備の日」全国大会で、顕著な功労を挙げた警備員14人を表彰した。その1人、西山浩さんは、電車の中で意識を失った男性に救命措置を行い、消防署長から感謝状を贈られた。その授与式の帰路、またも電車内で男性を救命した。

<<人命救助をした15日後、しかも授与式の帰りに再び人命を救うとは驚かされました>>

信じられないような経験でしたが、2度とも、電車内に居合わせた人々と力を合わせて救命につなげることができました。

1度目は、出勤途中でした。私は銀行ビルで警備を行う派遣隊の隊長を務めています。2018年9月5日の午前8時過ぎ、日ごろ利用するJR線が台風被害で運休し、大阪メトロに乗りました。

横堤駅(大阪市鶴見区)に停車した時、向かいの席に座っていた高齢の男性が「ううっ」と苦しそうなうめき声を上げたかと思うと、ぐったりとなりました。

車内にいた女性が近づいて「大丈夫ですか」と声を掛けました。後で知ったのですが、女性は看護師でした。私も男性に呼び掛けましたが反応はなく、意識を失った状態です。

電車の緊急停止ボタンを乗客が押しました。私は、119番通報と駅に備え付けのAEDを持ってくるよう周囲の人に要請し、看護師の女性と交互に心臓マッサージを始めました。速いテンポで胸骨を強く押し下げ、20回ほど数えては交代する繰り返しです。

<<心臓マッサージをしている時はどのような状況でしたか>>

これまで受けたCPR(心肺蘇生)の訓練は人形を使っており、生身の人に行うのは初めてです。助かってほしいと無我夢中でした。心臓マッサージをしながら「電車内で何かを食べて、喉に詰まったのではないか」との可能性が頭をよぎりました。

そこで気道の異物を除去する訓練で覚えた通りに、男性の背中、左右の肩甲骨の中間を手のひらの横で叩いたところ、口から何かが飛び出しました。飴玉です。

しかし、呼吸は回復しません。まもなくAEDが運ばれてきて、看護師の女性が電極パッドを貼って通電を1回行うと、男性の意識が戻りました。

立ち上がろうとする男性を落ち着かせて安静な体位をとってもらい、まもなく到着した救急隊に引き継ぎました。

この功労で9月20日に鶴見消防署長から感謝状を頂いたのです。

<<度目の救命活動では、1度目と気持ちが違いましたか>>

2度目は、感謝状の授与式に上司の課長とともに出席した帰り、大阪メトロに乗りました。

大阪ビジネスパーク駅(大阪市中央区)で停車した電車が、なかなか出発しません。非常停止ボタンが押されたようで、後方の車両がざわついています。様子を見に行くと、50代の男性が口から泡を吹いて倒れており、乗客が心配そうにのぞき込んでいます。

助けなければと思い、受け取ったばかりの感謝状と額縁が入った紙袋を置いて、意識のない男性に心臓マッサージを始めました。

無我夢中だった1度目に比べると、2度目は周囲の状況を見ながら落ち着いて行動できたと思います。救命体験があると気持ちは変わるものだと実感しました。

課長が駅に備え付けのAEDを取りに急ぎ、駅員と戻ってきました。男性の胸に電極パッドを貼り、AEDが心電図を解析し、「電気ショックの必要はありません、心臓マッサージを続けて下さい」とガイダンス音声が流れました。そこで私、上司、駅員の3人が交代で懸命に心臓マッサージを続けること10分ほどで、救急隊が到着し引き継ぎました。

幸い、1度目の男性は10日後に、2度目の男性は5日後に、それぞれ無事に社会復帰されたと聞いてうれしく思いました。

<<救命の経験から学んだことは何でしょう>>

いざという時を具体的にイメージして訓練に取り組むことが大切だと思います。私は入社以来、いつか人を助ける時が来ると思って普通救命講習や各種の訓練を重ねてきました。救命する状況に出会うことなく10年余りが過ぎた後、立て続けに直面したのです。今回の体験は、隊員に訓練指導を行う上でも貴重な経験となっています。

警備業は、安全安心を守る積み重ねによってお客さまの信頼を深めることができる奥の深い仕事です。自分と隊員の成長、スキルアップを意識して取り組んでいきます。