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警備業ヒューマン・インタビュー
――現場の声を聞く2018.12.01

長瀬泰郎さん((一社)ASISインターナショナル日本支部代表理事)

社内にセキュリティー部門を

«ASISインターナショナルとはどのような組織ですか»

セキュリティー専門家を会員とする世界最大のセキュリティー団体です。設立は1955年、米国バージニア州に本部を置き、会員数3万5000人、米国を中心に欧州、アジアの243支部で構成しています。

ここでいう「セキュリティー」とは、主に「現在の企業活動が続くこと」を目的とし、それを阻害するものを防ぐ努力を言います。

«ASISインターナショナル日本支部はどのような活動を?»

首都圏を中心に約50人の方が入会しており、私を含め6人の役員で運営しています。毎月第3火曜日に都内で「セキュリティーミーティング」を開いて、専門家による講演と情報交換を行っており、会員は参加費が割り引かれる特典があります。危機管理産業展やセキュリティショーなどの展示会にも出展しています。

1973年に「米国産業保安警備協会極東支部」として活動を始め、75年に支部No.55として正式に「ASIS産業セキュリティ学会日本支部」となりました。2010年には日本唯一のセキュリティー専門家による交流団体として一般社団法人登記しました。

«10月の「危機管理産業展」でセミナーを開催し「日本の企業は社内にセキュリティー部門を新設し、セキュリティー専門家の育成が急務」と提唱していました»

今年は企業や団体のトップの不祥事をよく耳にしました。そうした事件が起こる度に「法令遵守」や「経営者の意識改革」の必要性が指摘されますが、それを防ぐための具体的な議論はありません。

日本の刑法犯認知件数は2016年に戦後初めて100万件を下回り、世界的に「安全な国」として評価されています。日本社会の治安のよさから、警備で「外部からの侵入さえ防いでおけば大丈夫」という感覚が蔓延しています。

 米国を例にとると、銃や麻薬などで社会的治安は悪いのですが、企業内に限れば問題が少ない。それはセキュリティーの専任者がいて、不審な事案を調査したり、社員に倫理教育を徹底しているからです。企業が絡む不祥事には、不正経理やデータ改ざん、下請いじめ、談合、ハラスメントなどがあります。それらは大きな事件にならない限り組織内で処理されてしまい表に出ることはありません。

«日本でも組織の中にセキュリティー専門家が必要でしょうか»

海外では欧米はもちろんアジアの国々も含めて、一定規模以上の組織では必ずといっていいほど「セキュリティー部門」という専門部署があります。そこのトップは毎年度、セキュリティーに関する基本方針を定め、それを受けて中間管理職が企業内の実務を管理監督しています。

まず企業や団体の総務組織の中にリスク管理の専門家集団を作り、育成します。その後、リスク管理を統括する「セキュリティー部門」として独立させ、法務・総務・財務・監査・情報・警備・防災部門との連携を図ることです。そうすれば傘下企業の専門家が情報交流を図る“横串”の連携体制も構築できます。

情報系の商品を購入するときは社内のIT部門が機器の良しあしを見分けられますが、セキュリティー機器については専門知識がない総務や経理部門の担当者が決めているのが現状です。企業の中にセキュリティー専門家がいれば、監視カメラやセンサーなどを導入する際の“目利き”ができます。

«組織の外の防犯にはどう取り組めばいいでしょう»

欧米の警備で重要視されているのは、事件や事故を予測する能力です。不審者・物に気がついたら直ちに報告することが大切で、米国国土安全保障省は「If you see something say something(不審物を見かけたら関係者に知らせてください)」という標語で防犯への協力を呼び掛けています。

«国際イベントが続く日本でもテロ対策に心掛けたいことです»

米国の警備業界では、人の表情や視線を注視して不審者をいち早く見つけ出す「フェイシング・プロファイル」が注目されています。これはイスラエルの警備業が培った手法で、米国ミネソタ州にある世界最大級のショッピングスポット「モール・オブ・アメリカ」でも効果を上げています。当協会ではここ4年にわたり、5月にオランダから講師を呼び、この技術の体験講座を行っています。

«ASISの非会員が海外のセキュリティーについて知見を得る機会はありますか»

東京ビッグサイトで開催される「SECURITY SHOW2019」の中で3月5日、「ASIS東京セキュリティカンファレンス2019」と題したイベントを主催します。企業内セキュリティーの考え方を紹介したり管理者を育成することの重要性を提案します。元ASIS会長エドワルド・エムデ氏の基調講演ほかセキュリティー専門家による10講演を予定しています。同時通訳による日本語でお聴きいただけますのでご来場ください。