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警備業ヒューマン・インタビュー
――警備員に英語教育2020.3.21

白井広宣さん
(日光警備保障)

「自信持ち仕事に臨める」

<<警備員と案内スタッフへの英語教育に力を入れています>>

2016年から希望する社員向けに「日光英語塾」を始めました。90分間の講義を年間30回ほど開いており、1回当たり20人から30人、合計100人を超える社員が自主的に参加しています。これまでは主に接客接遇や傷病者対応、災害時対応で必要となる会話などを学びました。

私を含めた社員3人が講師を務めます。皆、国際スタッフを育成する外部専門教育機関で英語や異文化コミュニケーション、接客接遇などを4か月に渡って学んだ後、社内認定試験を受験し合格した者です。「社内認定 英語インストラクター」として任命を受け講義を行っています。

使用するテキストも教育機関と共同で作成しました。当社の業務に特化した内容となっており、実際に警備業務を行っている施設の案内や、緊急時の避難誘導方法など、そのまま業務で使うことができる内容です。日光英語塾のことを知ったお得意先のスタッフが参加を希望することもあり、受け入れて喜ばれています。

<<なぜ社員に英語を習得させようと考えたのですか>>

私は2013年に、14年から20年までの経営計画の策定に携わり、今後当社に求められるものは政府のインバウンド政策による訪日外国人の激増や「東京2020」開催などから、英語での対応や国際化だとの結論に至りました。とりわけ当社は192の国と地域からお客さまをお迎えする法人の施設を担当させて頂いており、以前から英語での対応力の必要性を感じていたことも理由です。

私個人の思いもあります。2011年にボランティア団体の青年交流に携わり、東アジアの青年たちの受け入れを担当しました。そこで外国人の友人ができたことから、どうしても自分の思いを伝えたいと考え英語を必死になって学びました。英語でコミュニケーションが取れるようになると、多くの国の友人と深い話をすることができるようになり視野が広がったのです。自分の人生と世界は大きく変わったと実感しました。その喜びを社員にも味わってほしいと強く願っています。

講義を受けた警備員からも「これまでは、外国からのお客さまにはたどたどしい対応しかできませんでした。英語を学んでからはしっかり答えることができ、自信を持ち仕事に臨めます」と好評です。

英語塾への参加は強制ではありません。常に魅力的な講義を行わなければ、参加する社員の数は減るため、講師陣は常に前回を上回る魅力的な内容にする必要があります。

<<ご自身が英語を学んで業務に生きたと実感したことは何でしょうか>>

昨年9月、7日間にわたり日本初開催となった世界最大の博物館の専門家会議「国際博物館会議(ICOM)京都大会」へ博物館セキュリティー国際委員会の一員として参加し、同委員会主催の各種会合の運営に携われたことです。120か国から4500人が参加したICOMで、プレゼンテーションの機会があったとともに世界の博物館・美術館警備のグローバルスタンダードを学ぶことができました。海外ではテロ対策や銃を持った強盗への対処といった、日本ではこれまで考えたことがない場面への対応マニュアルが確立されていることなど驚くことばかりでした。

大会期間中、多くの専門家の方々と交流し、国際儀礼の重要性を学べたことも貴重な経験です。レディーファーストの振る舞いや国際会議における国旗の取り扱い、席次、発言方法、パーティーやレセプションにおける取り決め事項など、英語が話せなければこれらの知識と経験を得ることは不可能でした。

<<英語塾は4月から5期目を迎えます>>

英語力向上に加えて異文化理解・多言語対応力強化などグローバル人材育成に向けたカリキュラムに力を入れます。政府は2030年の訪日外国人数を6000万人とする目標を掲げており、グローバル人材の育成が不可欠だと考えています。世界を感じながら現場の最前線に当たる人材を育てます。ただ単に英語ができるということではなく、異文化理解、異文化コミュニケーション力を持ったスタッフが警備業務に当たり、相手が期待する以上の対応をする。これこそがまさに「おもてなしセキュリティー」だと考えており、当社が目指すものです。

警備業ヒューマン・インタビュー
――警備業を支援2020.03.11

鬼木誠さん
(警備業の更なる発展を応援する議員連盟事務局長・衆院議員)

努力報われる業界めざす

<<国会議員になる前から警備業とは“ゆかり”があります>>

父は地元・福岡でスーパーに勤めていました。しかし、大手流通会社に吸収合併され、売上金回収などを行うグループ内の警備会社勤務となりました。幼かった私に父は、畑違いの仕事のグチなど一言もこぼしませんでしたが、相当苦労したと思います。国会議員となって、国会議事堂や議員会館などでは毎日のように衛視や警備員の姿を目にしますが、今でも警備員を見掛けると父の姿とダブって見えます。

<<自民党の警備業議員連盟の事務局長就任は運命ですね>>

前任の木原誠二事務局長は、副大臣や党の要職に就き、議連の運営まで手が回らなくなりました。その間、竹本直一会長が切り盛りしていましたが、竹本会長も国務大臣に就任して多忙を極めています。そんな時、竹本会長から「事務局長として議連を運営してほしい」と声を掛けられました。

議連には発足して間もないころから入会し、警備業の現状や窮状は理解しています。昨年は警備業界に政治連盟「全国警備業連盟」(青山幸恭理事長)も発足し、警備業を応援してきた議連としても弾みができたと感じています。課題は多いですが、議連メンバーもヤル気いっぱいです。

予算成立が見込まれる月内にも議連の会合を開催する予定です。テーマは「公共工事設計労務単価」と「空港保安警備」、「新型コロナウイルス対策」です。

<<2月に国土交通省が公表した設計労務単価は、高かった警備業の伸び率が抑えられ“潮目が変わった”との見方もあります>>

設計労務単価は8年連続で引き上げられてきました。前回は検定合格警備員の「警備員A」、A以外の「警備員B」ともに全職種最大の伸び率でした。今回は、これを下回りましたが、需給はひっ迫しており、今後も“上がり基調”にあることは確かです。公共工事における警備業の役割、重要性を議連としても訴え続けます。

<<空港保安警備では、残念ながら不祥事が相次いでいます>>

国民からの信頼のために法令遵守は不可欠です。一方で、問題が生じる背景・要因にも目を向ける必要があります。

外国では空港保安警備は国が担当していますが、日本では各航空会社に委ねられています。テロ対策など国からは空港保安警備に従来以上の厳しさが求められています。しかし、航空会社は“おもてなし”などサービス向上に力を入れています。使命感で厳密な警備をする警備員が乗客から暴力を振るわれたという話も聞きます。警備会社は航空会社に気兼ねして被害を申告できない。警備会社は国と航空会社の“板挟み”になっています。

拘束時間が長いという問題もあります。十分な警備料金が確保できれば交代要員も用意できます。少ない人員で業務を回していれば現場の隊員の疲労や士気の低下もあります。そんな時に業務の見落としがある。

<<中小企業への「残業の上限規制」適用など働き方改革第2弾が4月からスタートします>>

「ただでさえ人がいないのに、罰則まである法改正はたまらない」との多くの事業者の声は承知しています。厚生労働省の各種助成金もありますが、私たちも更なる支援策を検討します。一方で、労働環境を整えないと人は来ません。業界の自助努力も不可欠です。事業者、働く人ともに満足できる環境整備をバックアップします。

<<東京2020大会が目前に迫っています。一方で、新型コロナウイルス感染症の影響が警備業界にも広がりつつあります>>

東京2020大会は、日本の「安全安心」が招致の決め手です。その多くを担っているのは警備業です。民間警備のすばらしさを世界に発信してほしいですね。

新型コロナについては、政府が2019年度予算の予備費2800億円の活用を決定しました。「補正予算も」となれば、立法府としてもすぐに対応します。

私もメンバーとなっている自民党と旅館・ホテル業界との新型コロナ対策の会合では、相次ぐキャンセルへの窮状が報告されました。一方で、感染拡大防止のための臨時休校措置に関し、「子供たちを旅館やホテルで預かったらどうか」といった提案も行われました。警備業でも新たな業務を生み出すきっかけになるかもしれません。新型コロナはピンチですが、何とかチャンスに変えたいものです。

東京2020大会へ向けて頑張ってきたアスリートをはじめ、警備業など全ての関係者のためにも大会を成功させたい。そして、努力が報いられるようにしたいですね。

警備業ヒューマン・インタビュー
――ロボット開発2020.03.01

望月武治さん VOLLMONTホールディングス 代表取締役

交通誘導、働き方改革へ

<<工事現場で歩行者の誘導を行うロボットを開発しています>>

名称は「誘導ロボ1号」です。昨年の夏に都内で発表会を開き、報道関係者にお披露目しました。現在、実用化に向けて検証を行っているところです。

開発にあたりハードウエアはイクシス、ソフトウエアはシステム計画研究所、デザインはオチュアと、分野ごとに深い造詣と実績を持つ各社の協力を得て、技術と知識を結集して進めています。

当社は関東地方を中心に、工事現場の交通誘導警備を主業務としています。現在、公共工事を中心に1日800〜900件の工事現場で業務を行っています。ロボット開発に取り組むきっかけは、業務上の問題解決のためでした。警備員の高齢化が進んでおり、あってはならない交通事故や転倒事故など労働災害が発生し、“安全確保の限界”を感じました。

人手不足も深刻で、警備員がいないために工事が進まないことも発生しています。そうした課題を受けて「安全を確保しながら少人数の運用を可能にする『機械化』を進めたい」と強く思いました。機械化が進めば警備員を夏・冬の過酷な職場環境から解放し、熱中症予防や休憩がとりやすくなるなど働き方改革の推進にもつながります。

<<発表会では、AIなど最先端のテクノロジーを装備しているという説明でした>>

人感センサーとネットワークカメラで歩行者や自転車を認識し、誘導バーとデジタル看板を使って誘導します。杖をついている人やベビーカーを押す人、車いすの人、子どもなど交通事故に遭う可能性が高い“交通弱者”をディープラーニング(深層学習)で認識し、ロボットからの距離も把握します。周辺の警備員に警告を発することで、必要に応じて周囲の警備員が駆け付けて通行の手助けを行います。

誘導バーは柔らかい材質と空気圧による動作制御により、万が一人に当たっても被害がない配慮がしてあります。夜間は足元への注意喚起のため、地面へのプロジェクション(投影)が可能です。ロボットの背面に設置した取っ手を使い、人の手により移動させることもできます。

それらの開発費用として東京都から「事業可能性評価事業」の認定を2019年8月に受け、補助金の支援を受けています。さらに今年2月、経済産業省関東経済産業局の「異分野連携新事業分野開拓計画」の認定を受け、国からも支援をいただく候補となりました。

<<ハイテク技術の導入は、警備業のイメージアップにつながります>>

業界だけでなく、工事現場のイメージアップにも貢献したいと思っています。ロボットの正面に設置した大型ディスプレイには、子ども向けのキャラクターのほか、周辺の飲食店などの広告を表示したり、地域の案内に活用してもらいます。遠隔操作で画像を切り替えたり、スピーカーを使った危険の未然防止、工事の内容を周辺の住民に伝えて理解を求める取り組みも検討しています。

<<実用化に向けた実証実験は、どのような内容でしょう>>

都内の工事現場にロボットを設置して、昨年8月に1回、9月に2回、画像認識のためのディープラーニングを行いました。実用化まで、さらに検証を重ねる必要があります。

運用の際には、ロボットのほかにオペレーター要員として警備員1人を配置する構想です。オペレーターの育成は、当社の教育施設「VOLLMONTアカデミー」で行い、技術的なノウハウや知識を習得してもらいます。この施設は、警備のプロフェッショナル育成を目的に、2010年に東京都立川市内、19年に新宿区内の2か所に設立したものです。

ロボットを貸し出すユーザーも最低限の使用方法や機能を知ってもらう必要があるため、研修に参加していただくことを考えています。

<<歩行者誘導ロボットの次の計画はありますか>>

「片側交互通行のシステム化」を予定しています。AIを活用した画像処理やレーダーを用いて、交通誘導の効率性と安全性の向上を実現するシステムです。

警備業は「3K」のイメージがある限り若年層の参入は見込めず、業界が発展を続けるためには業務の形態を変える必要があります。当社は使命感を持って、ロボット開発を続けていきます。