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警備業ヒューマン・インタビュー
――現場の声を聞く2018.9.21

橋本秀吉さん(駒込警備業協議会会長 新北斗警備保障 教育部部長)

災害訓練から刺激もらう

«東京の駒込警備業協議会は訓練に力を入れています»

今年8月に開いた訓練には17団体から68人が参加しました。以前は小規模なものでしたが、私が協議会会長に就任した3年前から会場を警視庁駒込警察署にして、東京消防庁本郷消防署や自衛隊、地元町内会などが参加する大規模なものにしました。

地元町内会に参加してもらっている理由は、まず一つは地域貢献のためです。協議会に加盟する全9社は地元での仕事が多いため、地域に役立つことをしたいと思っていました。そのため、ここ数年増えている災害時に命を守る方法や、不審者に遭遇した時の対処法を身に付けてもらおうと考えて参加を呼びかけました。

第二の理由は自らを守る「自助」と、行政による救助・支援の「公助」に加え、警備会社と地域コミュニティーが行政と連携して共に助けあう「共助」が大切だと考えているからです。そこで消防署や警察と警備会社、地元住民が連携した訓練を毎年行っています。訓練は振り込め詐欺被害が多かった4年前は詐欺被害を防ぐための内容で、3年前からはテロ対策や大地震などの災害時対応を学んでいます。

«参加した地元の方の感想はどのようなものでしたか»

今回の訓練ではAEDと刺股の使い方を学びました。両方とも初めて手にしたという人がほとんどで、「名前を聞いたことや目にしたことはあったが、自分には難しくて使うことができないと思っていた。しかし教えてもらうと容易に扱うことができ、いざという時に役立ちそうだ」と多くの人に言ってもらえました。

警察署内で行い、警察や消防署などが参加する訓練に参加することは、いい経験になるという声も聞きます。これは警備員にとっても同じで、警察官や消防署員などと一緒に訓練することは刺激になるし、誇りに思うと話す隊員が多いですね。

«自衛隊が見学していました»

自衛隊抜きで防災訓練は考えられないので、私が自衛隊出身という縁を生かして見学してもらい、意見を聞いています。今年は自衛隊OBや即応自衛官の当社警備員が災害対応訓練を行いました。大地震が発生して、がれきの下敷きになった人を助け出しTシャツで担架を作り、救護所まで運ぶ流れを学びました。

私もそうだったように、自衛隊を退官して警備会社に入社する人は少なくありません。特に当社は社長の理解もあり、自衛隊OBが30人と全警備員の1割近くを占めます。自衛隊OBとしても、互いの共存共栄のため良好な関係を構築したいと考えています。

自衛隊からは、住民や多くの団体が参加する訓練で、即応自衛官やOBがきびきびとした動作を披露するのは、いいアピールになると評価してもらっています。

私個人としても自衛隊と警備業の橋渡しや、市民への広報活動をしたいとも考えています。自衛隊OBを警備会社に紹介しているほか、趣味の水彩画で戦車や航空機などを描いて画像SNSのインスタグラム(アカウント・i.m.hidey)に公開しています。警備員や仕事で関わった人などが閲覧して自衛隊に興味を持ったり、交流の場になってくれればいいと考えています。

«警備業界の教育や訓練について考えていることや提言はありますか»

現在の教育や訓練は、いつも同じような内容や形式的なものが多い気がします。想定外の出来事があっても即座に対応できるように、日ごろからさまざまな内容の実戦的な訓練をした方がいいのではないでしょうか。大きな災害やテロはいつ、どこで発生するか分かりません。発注主と警備員自らの命や安全を守るためはもちろん、現場周辺の市民を守るために必要だと思います。

当協議会の訓練には他の都内複数の警備業協議会が参加しています。訓練内容や技能などは隠すものではなく、多くの人に知ってもらいたいという考えから参加を呼び掛けました。今回の訓練で刺股の使い方を実演してくれたのは、新宿警備業協議会の会員です。警備業に携わる一人ひとりの技能や知恵、経験を共有して、業界全体のスキルアップができればいいと考えています。

警備業ヒューマン・インタビュー
――現場の声を聞く2018.9.11

高木治さん(オールマイティセキュリティサービス 代表取締役)

講師は切磋琢磨し成長

«東京都警備業協会の特別講習講師を務めて22年、大切にしてきたのはどのようなことですか»

講師の役割は、短期間で受講生の長所を伸ばしていくことです。私は、受講生が理解しやすいような講習の進め方が重要と考えます。学科も実技も、単に知識や技能を伝えるのではなく、受講生が理解しているか、身につけているかを常に意識します。

これは私が講師として駆け出しだった頃から、先輩方が行う数々の講習を見てきた中で、自分なりにたどり着いた教え方です。

東京警協では、警察庁長官・全国警備業協会会長の連名表彰を昨年受けた松井明夫講師(JSS)、私と同じく今年、連名表彰を受けた室岡恵三講師(セシム)をはじめ講師陣が一丸となり、受講生のレベルアップに向けて取り組んできました。

講師の教え方は、人それぞれ個性があります。自分の個性を認識した上で、より効果的な教え方を探求する姿勢が大切です。教える側が成長することで、特別講習の合格率向上に結びつくと思っています。

«講師が成長する上で何が必要でしょう»

講師陣がお互いに研さんして高め合う、切磋琢磨です。私は、後輩講師の改善すべき点は、すぐにはっきりと言うよう心掛けています。日頃から講師同士が親密にコミュニケーションを図れる雰囲気作りは大事です。

東京五輪・パラリンピックが近づく中、東京の安全を守る警備員のレベルをさらに高めていかなければなりません。深見大介主任講師(第一総合警備保障)や中堅・若手の講師陣とともに一層、切磋琢磨していきたいです。

«多くの受講生を教えてこられて特に印象的な出来事は»

私が街を歩いていると、交通誘導警備業務中の警備員が近づいてきて「その節は、ありがとうございました」とあいさつされました。以前に特別講習を受講して合格した人でした。こちらは覚えていなくても、受講生は講師の顔を覚えているものです。資格者となって現場で活躍している姿を見るのは非常に嬉しいです。

大事なのは資格を取得した警備員が、一層のスキルアップを図ることです。各社の教育体制が重要であり、「警備員指導教育責任者」が担う役割は大きいです。

警備業の教育は新任教育に始まって、現任教育、特別講習と奥が深いです。教える側と教わる側が、警備業法についてよく理解し、コンプライアンスを徹底して適正な業務を進めることが自社と業界の発展につながります。

«経営者として自社の警備員に何を求めていますか»

現場の安全を守る知識と技能に加え“言葉遣い、態度、礼節”を重視して教育を行います。警備員の言葉遣いが適切でなければ、クレームが生じます。警備員が清潔な制服を着てきちんとした態度で業務を行えば、警備料金アップの下地になります。そして礼節は、安全確保のために歩行者やドライバーに協力を求める上で不可欠です。

警備員が日頃から、現場のユーザー関係者と十分な打ち合わせをするなどしてコミュニケーションを深めれば、労災事故を防いで警備の質を高めます。例えば建設現場で交通誘導警備を行う警備員が、何時頃にどんな種類の工事車両が来る予定かなど、現場の情報を把握していることは大切です。

«交通誘導の警備員は特に人手不足が続いています»

対策として必要なのは、給与アップと社会保険加入、有給休暇など福利厚生の充実を図ることに尽きます。給与を上げれば、若い人の応募は確実に増えると実感しています。

当社は、警備料金が上がってから給与を引き上げるのではなく、先に給与アップを行います。警備員が現場でユーザー関係者に「給料が上がりました」と話せば、料金アップの交渉を行う予告となって「それなら料金を上げなければならないな」と理解してくれるユーザーがいます。交渉の席では安全を守るプロという自負を持った姿勢が大事だと思います。

また、新任教育の途中で辞めてしまわないように、昼食を無料で用意し、便利な手提げの“警備バッグ”をプレゼントします。これまで色々なアイデアを試行錯誤しましたが、定着に有効なことだけを続けています。

処遇改善を継続しながら教育に力を入れてスキルアップを図る積み重ねが、会社の成長に結びつくと考えています。

警備業ヒューマン・インタビュー
――現場の声を聞く2018.9.01

服部久男さん(日動警備横浜代表取締役社長)

「支部活動」で情報を共有

«神奈川県警備業協会の横浜西支部長として、8月23日に『3支部合同』で研修会を開きました。趣旨は、どのようなものですか»

神奈川警協は10支部に分かれて活動し、各支部で研修会を開いています。業界の課題克服と会員の社業発展に向けて、研修は欠かせません。

今回、当支部は横浜北支部、横浜東支部と合同で開催し、「人とAIが補完しあって行う警備」「警備ロボット開発の現状と将来」をテーマに2人の講師を招きました。労働人口が減少に向かう中、特に人手不足が深刻な交通誘導警備では、AI活用に関心が高まります。時代の先端を行く技術に触れて警備業の将来を考えることを目的にテーマを決めました。

今後、横浜北、横浜東の両支部がそれぞれ別のテーマで企画し、合同研修会は今回を含めて年度内に計3回の開催を予定しています。

合同で行うメリットは、3支部の会員が内容の異なる3回の研修会に参加できることです。参加人数が増えるので、意見交換などで会員同士の交流も広がります。

«協会支部の活動で大切にしていることは»

1つは「会員の情報共有」です。神奈川警協の取り組みや警備業を取り巻く現況をはじめ、有益な情報を会員に伝えることが支部の役割と考えています。

また、地域貢献として安全安心な街づくりに向けた防犯活動に力を入れています。有志の会員により毎月2回ほど、青色パトロールカーで巡回したり、全会員に声掛けして、防犯キャンペーンにも参加します。警察署との連携を深め、地元の方と交流の輪が広がります。

こうした活動を通じ、次世代の支部役員となる人たちを育成していくことも重要と考えています。

«支部活動に取り組むきっかけは»

私が警備業界に入ったのは遅く、還暦が近い時でした。日本マクドナルドに24年間勤務して店舗を管理するスーパーバイザーなどを務めた後、マクドナルドのフランチャイズ店を運営する会社を10年余り経営しました。その後、縁があって当社に入り、横浜支店長などを務めてきました。

遅れて入ったため戸惑いもありましたが、支部活動や、同業者の会合などに参加したところ、業界の先輩方が温かく歓迎してくれました。有益なアドバイスや励ましをいただき、警備業は同業者のつながりが大切であると実感し、支部活動に力を入れてきました。

恩返しとして新会員を歓迎しながら、36社の会員が「参加して良かった」と感じ、相互に良いつながりを持てるような活動を目指していきます。

«外食産業での経験で社業に生かしていることはありますか»

現場で働く人を常に大切にする「現場ファースト」の心構えです。店舗管理をしていた時、業績向上と顧客満足のためには、現場の声を丁寧に聞き、働く人の円滑な人間関係を心掛けることが重要だと強く実感しました。

毎週月曜日は早朝からユーザーの営業所や警備現場を回ります。警備員やユーザー関係者と対話を重ねて、労災事故の防止策を確認したり、寄せられたクレームへの対応など、やるべきことは多いです。経営者がこまめに現場に足を運び、警備員や関係者と意思の疎通を図れば、良好な人間関係につながり、事故やトラブルの予防になります。

«人手不足が続きますが、定着へ、どのような取り組みをしていますか»

警備員が働きやすい職場環境で、働きがいを感じることが定着に結びつくと思っています。施設警備も交通誘導警備も、一人ひとりの長所や適性を把握した上で、配置場所を決めることが大切です。また、当社の女性警備員は15人ですが、警備の現場経験が豊富な勤続22年の女性を内勤スタッフに配置して、担当業務の傍ら女性の相談窓口を務めてもらっています。

これは現場で起こるセクハラ問題などへの備えですが、単に女性同士というだけでなく、現場を知っている女性が窓口となって話を聞くことが重要と考えます。

«11月には創業30周年を迎えます»

30年来のお客さま、勤続30年の社員もいて、大きな節目です。この先10年後、20年後もお客様に支持されて発展し続けるためには、社員一人ひとりが『働く幸せ』を感じていることが必須と思っています。適正料金を確保して一層の処遇改善を進めながら、率直に意見を述べ合う風通しの良い社内の雰囲気づくりを大事にしていきたいです。