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警備業ヒューマン・インタビュー
――経営改革2020.10.11

三角栄二郎さん(KSP 代表取締役社長)

社員の「参加意識」高める

《昨年11月に社長に就任して1年が経ちます》

経営者は社員や社会に対して大きな責任を持つと覚悟はしていましたが、予想もできなかった苦労がありました。私は社長就任に当たり社員の物心両面での幸福の実現や社業発展、永久に存続できる組織・体制づくりを目標に掲げました。それらを実現するための経営改革を考えていた矢先に、コロナ禍が起きたのです。「売り上げがなくなるのではないか。社員の生活を守ることができるのか」、「警備員や内勤者が新型コロナに感染しないためにはどうするべきか」などといった悩みで苦しい日々が続きました。

一方、新型コロナの影響は続いていますが仕事が全て消えることはなかった。以前から抱いていた警備業は安全と安心という社会生活に欠かせないものを提供するため、需要の増減はあってもなくなるものではないという考えが確信に変わりました。コロナの感染拡大で事務所が閉鎖された場合の業務フローの作成や内勤者へのリモートワーク導入といった備えや対策を行いつつ、社長就任時に掲げた目標を達成できるように、さまざまな取り組みを始めています。

《それは具体的にどのような内容でしょうか》

これまでは経営層が事業方針の決定や受注のための営業活動を行い、社員はそれに従って行動していました。これからは一人ひとりが当事者意識を持って会社の成長のために自ら考えて行動することが大切と思います。そのための策の一つとして営業戦略推進室を新設しました。毎週月曜日に全支社がウェブ会議に出席して情報を交換しています。これまでごく一部の者しか持っていなかった受注につながる情報や人脈を多くの社員で共有することで、社員の参加意識が高まるとともに多様な意見の中から新たな営業策が見つかるなどの効果を上げています。

《“甲子園球児”の体験が生かされていますか》

秀明高校(埼玉県川越市)2年生の夏に甲子園に出場できました。打順は6番、守備位置はファーストでした。野球部員はわずか24人だったため、例えば打撃練習の際には全員がバッティングピッチャーから球拾い、道具の片付けなど多くの役割をしっかりと果たす必要がありました。全てにおいてそのように向き合った結果、県予選で初戦から決勝までの7試合全て逆転勝ちという結果でした。事業でも全員が団結して力を尽くせば、資本力や営業力に優れた大手企業とも互角に渡り合うことができると考えています。

《団結力を高めるためには営業社員に限らず全ての社員の意識向上が必要ですね》

9月に私と全社員の間で誓約書を交わしました。内容は「経営者は社員とその家族の満足を優先する。社員は団結して会社の利益のために働く。会社の利益のために、これまでのやり方に異論を唱える者は評価する」というものです。そのためのチェックシートも作りました。本人とグループ長、役員に各項目をAからCまでで評してもらい、昇給や賞与、昇格にしっかり反映させます。

社員が力を発揮するためには、正しい職務配置が必要です。私は入社して数年後に、警備の仕事に対する情熱が薄れた時期がありました。しかし2002年のサッカーワールドカップのイベント警備で責任者として指揮を執った時に、野球の監督になったようなつもりで「君は誘導が上手だからこの現場。君は声がよく通るからここ」といったように配置しました。すると初めは自信がないと言っていた隊員が適材適所に配置されたことで次第に自信を付け、警備も無事終了したことで自分なりの警備業のイメージが出来ました。その時に適正な配置の重要性を実感するとともに、私が経営者になった時も人を育てて全員で目標を達成しようと考えました。

《名刺のデザインや社名の意味も変えました》

これまで企業ロゴマークやコーポレートカラーにルールがなく、支社やグループ企業ごとに異なっていました。形からも社員が一致団結する必要があると考え、デザイナーに依頼して統一したデザインにしました。

9月から社名のKSPの意味を「Knowledgeable in Security and Protection」から「Keeping up your Safety and Protection」に変更しました。新たなものは「your」で他人の身体や財産を守る警備業の役割を強調しました。意訳も以前の「安全を守るプロ集団」から「安全を護るプロ集団」と変えて、警護や保護をイメージさせています。企業理念も以前のものよりもシンプルな内容にして、社員が普段からどのように考えて行動すれば良いのかを分かりやすく示しました。

警備業ヒューマン・インタビュー
――防犯功労表彰2020.10.01

赤津誠司さん(三洋警備保障)

「世田谷区の安心」守る

《地域社会への貢献活動に力を注ぐトスネットのグループ企業として、東京・世田谷区内で犯罪抑止のボランティア活動を展開しています》

世田谷区内では、刑法犯認知件数は毎年減少傾向が続いている一方、特殊詐欺の被害が深刻で昨年の被害金額は約4億5500万円でした。それでも前年に比べて2億6300万円減少しました。警察と当社など地元企業が連携して行う駅前キャンペーン、啓発活動の積み重ねが大切と考えます。

駅前キャンペーンは、2年ほど前から年金支給日(偶数月15日)に合わせて区内を走る私鉄3社の各駅で行っています。制服の警備員2人と私、内勤社員数人が駅利用客などに「詐欺撲滅」のメッセージ入りポケットティッシュや啓発チラシを手渡し「東京23区の中で世田谷は特に被害が深刻です」と地域の実情も伝えて注意喚起します。警察署長、警察官、自治会、事業者と協力し街頭活動を重ねるなか、地元の方々との交流が深まって「この街の安全安心を守り抜く」という警備業者としての職業意識が一層高まるものです。

また、区役所や幼稚園、専門学校などの要望を受け、「刺股」の実技講習会を無償で開きます。私たち社員が講師を務め、施設に侵入した暴漢などに対処する方法を説明しています。使用する刺股はトスネットが開発した「トスガードあしどめくん」です。これは暴漢の腕や足にアーム部分が触れると手錠のように締まる仕組みで、暴漢の行動を制限し、その間に人々が避難することができます。従来の押さえつける刺股と違うので、女性も扱いやすいと好評です。

《コロナ禍を受けて、新たな犯罪抑止活動を行いましたか》

緊急事態宣言により休業を余儀なくされた下北沢の複数の商店街で、4月から5月にかけて「防犯巡回警備」を行いました。これはボランティアではなく商店街から適正な料金をいただきました。

下北沢は、複数の劇場やライブハウス、若者向けの店舗が並ぶ活気ある街です。休業期間中に警備会社として地元のためにできることは何か、と当社の佐藤雅彦社長と話し合いました。佐藤社長は地域貢献に強い思いがあり、「侵入盗や落書きなどを防ぐことが重要になる。今までにない形の巡回警備を行いたい」というアイデアを出しました。地元商店街の理事会に提案したところ、ぜひ巡回を行ってほしいと要望されたのです。

駅周辺の3つの商店街を警備員2人が昼夜、定期的に巡回して目を配りました。路地の奥などもくまなく巡回できるルートを定め、警備員は要所ごとに写真撮影し落書きや破損がないことを確認しました。地元の方からいただいた「警備員さんのおかげで安心できます」との言葉が励みになりました。

この巡回警備を通じて地元の方と交流がさらに広がり、「演劇の街・下北沢」を支える本多劇場グループが、公演の再開を目指してコロナ対策に取り組んでいることを知りました。そこで、来場者を検温する「サーマルカメラ」による感染予防策を提案したところ、8つの劇場の受付に当社が扱うカメラが設置され、公演が再開しました。街が活気を取り戻したことを嬉しく思っています。

《どのような思いから犯罪抑止活動に取り組まれてきましたか》

地域への愛着に加え、犯罪が憎い、絶対許すまいという気持ちが原動力になっています。

私は40歳を過ぎて警備業に入り、人の生命・身体・財産を守る責務の重み、警備という仕事の奥深さを実感しました。安全安心を守る業務に取り組む中で犯罪に対する“怒り”が一段と強まったと思います。

実際、詐欺被害にあったお年寄りは、老後の蓄えを失うだけでなく、だまされた自責の念に苦しみ、家族との関係が悪化するケースもあると聞きます。街頭活動を行う時は「1件でも詐欺被害を減らさなければ」と意気込んで一人ひとりに声掛けを行います。

また、理不尽な殺傷事件などをニュースで知ると「その場に警備員がいて、刺股などを適切に使用していれば痛ましい被害を食い止められたのではないか」と悔しさが込み上げます。怒りを行動に変えることが大切だと思います。

《地域貢献の積み重ねで警備業への信頼はさらに高まります》

救命講習会を建設会社や学校などで行いますが、単にAEDの使用手順を説明するのではなく、「職場などで突然、人が倒れた時にどう行動すべきか」との想定で胸骨圧迫を実演し、人命を守る行為の尊さを訴える講習会となるよう心掛けています。

私は役員になった今も、深夜の交通誘導警備など第一線に立ちます。地域貢献活動も引き続き先頭に立って取り組みを進めます。