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警備業ヒューマン・インタビュー
――現場の声を聞く2019.01.21

清水直樹さん(セコム西関東本部川口支社)

全警協「模範警備員」シリーズ③

【全国警備業協会・会長表彰の理由】 埼玉県川口市で業務を終え帰社中に火災を発見、管制へ連絡して消防に通報してもらうとともに、現場に残っていた女性を避難させ命を救った。

素早い対応で火災延焼防ぐ

«火災を発見したのは顧客を訪問した帰りでした»

昨年4月24日、JR西川口駅前のホームセキュリティーご契約者宅での打ち合わせを終え帰社しようとすると、数十メートル先に煙が上がっているのが見えました。その場所に駆け付けると、3階建ての木造アパートの2階窓から炎が上がっていたのです。すぐに、コントロールセンターに通報し、消防車を呼んでもらいました。

建物の入り口で「誰かいますか」と叫ぶと、2階から助けを求める女性の声がしました。2階に駆け上がると、年配の女性がホースを使って、燃えている室内に放水中でした。女性は室内にペットの猫が取り残されていると言い、私も消火を手伝いましたが、とても消せそうにありません。このままでは危険だと判断して女性を避難させようとしましたが、「猫が取り残されている」と言って動いてくれません。

私は廊下の手すりにしがみつく女性を懸命に説得して移動させ、安全な場所まで一緒に避難しました。それから消防車が来るまでの間、アパートの各室に人がいないか確かめるとともに、周囲の住宅に火災が起きていることを知らせました。その最中に消防車が到着し、消火活動をして鎮火しました。火元の2階はほぼ全焼しましたが、1階と3階には燃え移らなかったようです。女性は救急搬送され、数週間入院したのち無事退院。そのほかに負傷者はいなかったと聞いています。

«炎が上がっているアパートに駆け込み、燃えている部屋の前で女性を説得するのは怖くはなかったですか»

もちろん怖かったです。日ごろ支社の社員たちには「緊急時には、まず自身の安全を確保してこそ、お客さまに対して安全・安心を提供できる」と言っているのですが、今回の経験で改めてその言葉の意味と大切さを実感しました。

私が避難させなければ女性は亡くなっていたかもしれません。火災現場に遭遇することは初めてでしたが、現場に警備会社の社員がいたのですから、やるべきことをやるべき手順でやったと思っています。

特に素早く対応できたことは良かったと思います。通報が遅れて炎が広がれば周囲の住宅に燃え移り、多くの人命が奪われていたかもしれません。燃えている2階から女性を連れ出すのが遅ければ、私も含めて2人とも命はなかったかもしれないと思うと、緊急時こそ落ち着いて素早く対応することは大切だと改めて思いました。

«素早く対応できた訳は?»

私は、支社の業務品質向上を担当しており、その一つとして、異常信号の受信から警備員が現場に到着するまでの時間短縮に力を入れています。現場に急行する社員が出発する時にはヘルメットを渡したり車をすぐ発進できるようにするなどもし、現場到着までの時間を少しでも短縮できるよう、全員が協力して取り組んでいます。

こうした全員の頑張りもあって、毎月発表される現場到着時間の支社別ランキングで川口支社は1位や2位となることが多く、2018年上半期でも1位でした。日ごろからスピードを意識して取り組んでいることが素早い対応につながったのだと思います。

«日常の業務が業務外の緊急時に生きたのですね»

セコムは、「社員に『誇り』を、お客さまに『信頼感』を、すべてのステークホルダーにセコムの『将来性』を感じてほしい」という思いを込めた「セコムグループ2030年ビジョン」を掲げています。このビジョンでは平時の備えから有事の対応、事後の復旧という切れ目のないサービスの提供を目指しており、私たち社員一人ひとりが、それを具現化する役割を担っています。こうした日常の取り組みや心構えがあるからこそ、今回の事案にも冷静に対応できたのだと思います。

また、業務品質を向上し、リスクを最小限に抑えるための取り組みを行う一方で、「絶対に安全」という慢心が最も怖いと認識しています。環境、状況の変化に対して、日ごろから自身の感覚を研ぎ澄ましておくことが、私たち安全のプロに必要なことだと思っています。だからこそ火災に気付けたのです。これからも、そうしたプロ意識に磨きをかけ誇りとしながら、日常接するお客さまや地域社会に貢献すべく努めていきたいと思います。