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警備業ヒューマン・インタビュー
――現場の声を聞く2018.11.11

堀内善弘さん(浜松帝国警備保障 代表取締役社長)

ロボットで英会話学習

«警備員教育に「英会話ロボット」を取り入れます»

当社は静岡県西部を中心に警備業務を行っています。ラグビーワールドカップ、東京五輪・パラリンピックが近づく中、警備員の英語対応は課題です。多くの外国人が就労する工場の警備で、外国語に対応できる隊員を要望されることもあります。そこで基本的な会話や、避難誘導など緊急時に必要な英語を教育に組み込みたいと考えて、英会話を学べるロボットを2台導入しました。

名前は「チャーピー」。鳥のぬいぐるみのような親しみやすい外見です。AIを搭載し、話しかける人の英語レベルを判断して、その人よりも少し高いレベルの単語や文法を使って言葉を返します。会話のキャッチボールを楽しみながら英会話が学べるのです。

紙のマニュアルを使って英語を丸暗記するのは、味気ないものです。やはり相手に話しかけて、反応があってこそ会話の喜びが広がると思っています。現在、社外の英語講師と打ち合わせをして、隊員が実用的な英会話を身に着けるカリキュラム作りを進めており、年明けから行う予定です。

 警備員が英会話を覚えることは業務に役立つだけでなく、イメージアップの効果もあると思います。英語が学べると知れば、警備の仕事に興味を持つ若者は増えるのではないでしょうか。

人手不足が厳しい中で、新しい試みを取り入れて警備員の魅力を発信していかなければなりません。地元の若者が東京などの大都市に出ることなく地域の企業を選ぶためにも、新たな魅力のアピールは重要だと考えます。地元のテレビ局に、警備会社が英会話ロボットを使って研修を行うと知らせたところ、取材を受けて情報番組の中で放送されました。

«ロボットをどのように活用しますか»

隊員が英会話を楽しいと感じることが出発点です。そこでチャーピーを当社の入り口近くに置いて、隊員はもちろん、来社する人も気軽に話しかけられるようにします。研修室に置くのではなく、日常的な活用を心掛けます。

当社の内勤者に、英語塾の元講師や語学が堪能な元パイロットがいます。ロボットをツールとして使いながら、会社全体で英会話に取り組む雰囲気づくりを図っていきたいと思います。

これは私が入社する前のことですが、当社は2002年のサッカーワールドカップでスタジアム関連の警備を行いました。警備員はブラジル人の観客のために駐車場で「満車です。来場ありがとうございます」などとポルトガル語で書いたプレートを掲げました。そのプレートは社内に保管してあり、当時の隊員から一生懸命に対応した様子を聞いたことで、私は語学教育を意識するようになったのです。

語学を身に着けることが大切だと思うのは、隊員が常に自信を持って業務に取り組んでほしいからです。外国語に苦手意識を持つことなく、あらゆる人に毅然と接して、しかも親切に対応できる警備員を育成しなければならないと思っています。語学をきっかけとして、日本とは異なる文化や習慣に対する理解を深めることは、グローバル化が進む中で必要だと感じます。

また、英会話のレッスンに加えて、接客マナーの研修も行うことで、業務の付加価値をより高めていきたい。

«教育で大切なことは何でしょう»

警備業の原点は“人づくり”にあると考えます。教える側に熱意がないと人を伸ばすことはできませんが、押し付けは逆効果です。教わる人が「知らなかったことをもっと学びたい」と好奇心を持って取り組めば、知識の吸収が早まります。

当社の隊員は原則として全員が「普通救命講習」を受け、消防本部の修了証を受け取ります。内勤の幹部が「応急手当普及員」の資格を取得しており、消防署に出向かなくても社内で講習を行えます。警備業務検定の取得も推奨し、特別講習の受講料は会社負担です。資格は、自分が成長できた証になります。

AIやドローンなど新しい技術が加わって警備が進化する中で、新しいアイデアを交えながら“人づくり”に取り組みたいと考えています。

警備業ヒューマン・インタビュー
――現場の声を聞く2018.11.01

加仲正夫さん(日光警備保障 取締役)

「誇り」と「自覚」身に着けて

«警備業を目指す求職者向け就職支援講習で講師をしています»

東京都警備業協会(中山泰男会長)から派遣されて、10年前から東京しごと財団(笹沼正一理事長)が行う「55歳以上の方のための就職支援講習 警備スタッフコース」で教えています。年に2回、夏と秋にそれぞれ全7日間行うもので、参加者はハローワークで警備業界に興味を持ち、就職前にある程度の知識や心構えを知りたいと考えているシニア層です。

複数の講師がおり、私は施設警備と礼式の担当です。施設警備ではどのような業務を行うかや、センサーの種類・機能などを教えています。

«特に力を入れて講義していることは»

警備とはどのような仕事かということや、いかに重要な仕事であるかを分かってもらうことです。特に施設警備については、「警備の現場は貴金属や商品など『宝の山』に囲まれています。高価なものはもちろん、カップラーメン一つ盗んでも、勤務先に大きな迷惑をかけ、あなた自身にも取り返しのつかないことが起きます」と教えています。

自らを律して業務を遂行するための心構えとして、受講者には警備の「警」の字にはどのような意味があるのかを考えてもらっています。私の答えは「自らを戒め、誠実かつ謙虚に顧客に安全と安心を提供する」というものです。このような心構えで業務に当たれば、顧客から信頼され、勤務先からも評価されると思います。

«礼式や基本動作の重要性にも力を入れて教えていると聞きました»

礼式や基本動作がきちんとできれば、歩く姿や立哨の姿が美しくなります。制服についても、会社の礼服と考えて着こなしてほしいと言っています。これらは顧客からの評価につながることに加え、警備員自身が仕事に誇りと自覚を持って業務に当たることにつながると考えています。

警備員一人ひとりが仕事に誇りを持ち、きびきびとした動作や対応をすれば、社会に対する警備業のイメージアップにつながると思います。商業施設や雑踏の警備でそのような警備員を見た子どもや青年が、「警備員はかっこいいな。このようなお兄ちゃんになりたいな」と思えば、将来警備業界に入ってくれるかも知れません。実際に私の会社にも、そのような体験から入社する者がいます。

«東京しごと財団では「警備の仕事体験会」の講師もしています»

「体験会」は、警備の仕事に進むかまだ決めていないが、どのような仕事か聞いてみようと考えている55歳以上の人を対象にしたものです。1日という限られた時間なので、まず「警備員はなぜ必要なのか」ということをしっかり教えます。私が「国が2003年に警備業を犯罪防止の一翼を担う生活安全産業として位置付けた。つまり、警備員の質が上がれば治安維持につながる」と説明すると、参加者は皆驚き、警備業に興味を持ってくれます。

参加者が警備業に進むかどうかは分かりませんが、「警備員は社会の治安維持に大きく貢献している。それはつまり、あなたの住んでいる地域の安全安心な街づくりに寄与している」ということを分かってほしいと思って説明しています。

«せっかく講習や体験会に通い就職しても、短期間で辞める人も多いと聞きます。長く続けるために必要なことは何ですか»

私が50年近く警備の仕事を続けることができたのは、この仕事が好きだったことに加え、誇りを持っていたからです。どのような仕事でも続けていけば、そのうち壁に突き当たります。その時、自らに誇りと責任があれば必ず打破できると思います。また、仕事に誇りがあれば仕事をやらされているのではなく、自ら好んでやっているという気持ちになります。この「やらされている」と「やっている」の差は大きく、長く続けることができるかどうかに直結します。

セコム創業者の飯田亮さんの言葉に「仕事というのは、やめなければ本物になる。続ければ、必ずものになる」というものがあります。その通りです。続けていけば、必ず面白くなり「好んでやっている」という気持ちになります。そうして続けていけば、必ずその仕事はやりがいのあるものになり、質も上がります。