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「知」に備えあれば憂いなし

河内 孝の複眼時評

河内 孝 プロフィール
慶応大法学部卒。毎日新聞社に入社、政治部、ワシントン特派員、外信部長、社長室長、常務取締役などを経て退社。現在、東京福祉大学特任教授、国際厚生事業団理事。著書に「血の政治―青嵐会という物語」、「新聞社、破たんしたビジネスモデル」、「自衛する老後」(いずれも新潮社)など。

平成30年、政局展望2018.2.11

-憲法改正、安倍3選はどうなる-

通常国会が始まった。会期は6月20日までの150日間。今年は、憲法改正論議の行方と自民党総裁選挙を軸に政局が動く。特に憲法改正の展開次第では、戦後政治史に特筆される1年間となるに違いない。成り行きを展望してみよう。

いくつかの政治日程と変動要素が今年の政局を左右することになる。まず、憲法改正論議については、1つの前提と3つの選択肢が想定される。第1は、自民党が3月25日の党大会までに憲法改正草案をまとめられるかどうかだ。その内容が首相の対公明党配慮から生まれた9条1項(戦争放棄)、2項(戦力不保持)を残したまま第3項を新設して自衛隊の存在を認める――という加憲案でまとまるのか、石破茂元政調会長などの主張する2項削除案になるのかが焦点。

次に、この案をもとに予算成立後、大幅会期延長に踏み切り「改憲国会」とし集中審議を経て衆参3分の2の多数により改憲発議に至るのか。それとも秋の臨時国会に場を移すのか、来年の通常国会に持ち越されるのか――3つのコースが考えられる。この結果によって「国会発議後60〜180日以内」とされる国民投票の日程が決まってくる。これが19年春の統一地方選挙、あるいは4月末の天皇退位、5月天皇即位、改元、夏の参議院選挙といった日程とどう絡み合い調整されてゆくのかも注目点だ。

また、自民党総裁選挙(9月実施)については安倍首相の3選が既定路線のように言われているが、既に出馬表明している石破氏、野田聖子総務大臣に加え岸田文雄政調会長が安倍3選支持に回るのか、出馬するのかが焦点となる。もっとも少数意見ではあるが、首相周辺には、禅譲期待の岸田氏が喜びそうな声もある。「19年春には天皇退位で女性宮家の検討は待ったなし、議論の進め方次第では、首相の支持基盤である保守派との対立は避けられない。アベノミクスも上手く回らない中、財政再建は遠のく一方。しかし、増税は避けられずその反動はきつい。むしろ18年中に余力を残して身を退くのがベター」。

カギ握る公明党と自民党参議院

では、これらの変動要素を旋回させるドライビング・フォースは何か。平昌冬季五輪後に朝鮮半島で軍事対決が起きれば政局の動きは凍結される。それがなければカギは、公明党と、参議院自民党が握るだろう。昨年の2つの選挙結果を左右したのは公明党だった。7月の都議選得票から分析すると、前回通り自公共闘が実現していれば自民党は、少なくとも11議席を上積みできた。逆に都民ファ―ストは、公明の協力なしなら10議席減。自民は、公明の23議席を合わせ最大勢力が維持できた計算だ。

一方、昨年の衆議院選挙結果を見ると、自民党当選者の内、249人もが公明党の選挙協力を得ている。中でも比例区の復活当選者42人は、各選挙区約2万票といわれる公明票なしに当選は難しかった。国会の3分の2勢力の実態は、こういうものだ。

一方、参議院自民党がカギを握る理由は何か。まず、19年に改選される議員は内閣支持率の推移に敏感で改憲に突っ走る安倍首相に警戒的だ。特に30人近い系列議員を束ね「参議院のドン」と目される吉田博美参議院幹事長の去就が注目。同グループは26日、額賀福四郎派閥会長の退任を求めた。竹下亘議員への禅譲含みで旧経世会の復興を目指しているともいわれる。安倍首相に是々非々で臨む党内第三派閥の動向は、波乱要素となる。

改憲になお慎重論の強い公明党。各種世論調査で、「改憲必要なし」が多数を占める中、判断を迫られる自民党参議院。二つの伏流水が、今年の政局を動かす。