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「知」に備えあれば憂いなし

河内 孝の複眼時評

河内 孝 プロフィール
慶応大法学部卒。毎日新聞社に入社、政治部、ワシントン特派員、外信部長、社長室長、常務取締役などを経て退社。現在、東京福祉大学特任教授、国際厚生事業団理事。著書に「血の政治―青嵐会という物語」、「新聞社、破たんしたビジネスモデル」、「自衛する老後」(いずれも新潮社)など。

女帝、最後の賭け?
ー解散の底流に岸田・小池の駆け引きー2024.03.21

来年度予算は3月末成立する。首相は4月10日から米国を訪問。16日には、今年の政局を占う衆院島根1区、長崎3区、東京15区の補欠選挙が告示(28日投開票)される。

長崎3区は次回から減区となるから補選で勝っても次の保証はない。今のところ自民党から候補者が出ず不戦敗の可能性大。島根1区は、長年の保守王国だが立憲民主候補の亀井亜紀子(58)候補の父、久興氏は自民党で閣僚経験もあり、保守層の支持も厚い。つまり東京15区の結果によっては自民全敗もあり得る。岸田内閣にとっては即、「レッドカード」の危機だ。

こんな時、3月8日の定例記者会見で小池都知事に質問が飛んだ。「知事が国政復帰のため東京15区から鞍替え出馬する可能性はありますか?」。「今まさに都政に邁進しております」といなしたが、小池知事に衆議院転出の話が出るには訳がある。

ひとつには告示日が迫るのに自民党の候補者選びが難航しているためだ。公選法違反で逮捕、有罪となった柿沢未途氏の後任を選ぶ補選だが同氏の前任自民議員も贈収賄で逮捕、起訴されている。裏金疑惑に揺れる中、公明が乗れる候補がいない。

小池知事は、これまで参院1期、衆院8期、環境相、自民党総務会長、防衛相を歴任。日本新党、新進党、自民党、都民ファーストと渡り歩いてきた。良くも悪くも“女帝”の名にふさわしい経歴だ。

都知事選は6月20日公示、7月7日投開票される。これを前に女帝があえて衆院補選に打って出る理由があるとすれば以下のシナリオだろう。衆院議員復帰↓保守系都市議員を糾合した新党党首就任→解散総選挙で第2党に躍進→自民との連立で女性初の首相を目指す――。

首相になるには国会議員、現実には衆議院議員が条件。選挙結果次第だが、社会党と組んで村山内閣を作った自民党のことだ。「ポスト岸田」の有力候補を欠く中、リリーフとして乗る可能性はある。

日本最初の女性首相を目指して

「小池劇場」という名の仕掛け、最初は都知事1期目の2017年、衆議院選挙に「希望の党」を立ち上げ都知事の立場で国政参与を目指した。この時は「選別問題」で挫折したが、あれから7年。戦術を練り直しているだろう。伏線もある。

昨年12月の江東区長選挙と今年2月の八王子市長選挙では、自民党都連会長の萩生田光一氏と密かに連携し、下馬評を覆し小池氏が支持する候補を当選させた。当選者は偶然か、いずれも元都職員だ。

裏金問題をめぐり党内、派内で孤立を深める萩生田氏も、「小池新党」に起死回生、命運を託すかもしれない。

補選をパスした場合は、小池劇場第2幕に移行する。現在考えられる解散は(1)4月予算成立直後(事実上の補選ダブル)(2)6月23日、通常国会閉幕時(事実上の都知事選ダブル)(3)9月、自民党総裁選後――だ。

野党が期待する4月選挙は、裏金疑惑冷めやらぬ内だから岸田首相は乗るまい。自民党総裁選挙後は、裏金逆風の鎮静化と選挙準備に時間をかけたい公明が期待する。しかしこれは「岸田首相の退陣、新首相での選挙」含みだから首相は受け入れられない。消去法で会期末解散の可能性が高まる。

6月解散は、小池知事に「都知事か衆院か」を迫ることになる。衆院を選択すれば(1)知事の後任はどうする(2)どの選挙区から出馬する(3)新党発足まで時間がない――など悩ましい問題に直面する。

しかし、消息通は「小池さんは、織り込み済みだよ」と言う。「新党を引っ張りながら粛々と都知事に三選すればよい。新党が躍進すれば衆議院に鞍替えするチャンスは、いつでもある。71歳という年齢を考えれば新党を作る機会は、これが最後だ」。

かつて郵政解散で東京10区に“刺客”として落下傘降下、当時の小泉首相に「女は度胸!」と唸らせた女帝。裏金、口移しチップ事件で弛み切った政局をどうかき回すのか。