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警備業ヒューマン・インタビュー
――新会長② 兵庫警協2022.07.21

中尾忠善さん(ナカチュー 代表取締役会長)

資格者育成に力注ぐ

<<創立50周年を迎えた兵庫県警備業協会の第13代会長に就任されました>>

会員は現在341社を数えます。新たな取り組みとして、会長、副会長4人、専務理事による「3役会議」の定期開催をスタートさせました。直近の議題は、警備業務検定の資格者育成推進、合格率アップです。より手厚い教育を目指し、特別講習の前に行う「事前講習」を現行の2日間から3日間に増やすことを検討しています。

会員にとって資格者の育成は肝要で、特に配置路線に対応するうえで不可欠です。特別講習講師のスケジュール、会場確保など課題はありますが教育事業として力を注いでまいります。

資格者を増やして警備業務の質を向上させることは顧客満足度を高め、適正料金の確保、経営基盤の強化に結び付くと考えます。

<<協会活動を通じて目指すのはどのようなことですか>>

「自主行動計画」による適正取引を推進し、警備業の地位向上を図ることです。料金問題をはじめ業界が抱える課題は、個々の企業努力だけで克服することは困難です。会員が連携を深め、協会一丸となって取り組むことが重要になります。

会員は県内9つの支部に分かれています。私は28年ほど前に西せいばん支部(姫路市など)の会員として協会活動に参加しました。

当時は警備料金が下降し厳しい環境の中、私たちは支部内に「交通部会」を立ち上げ、警備現場の安全パトロールを開始しました。警備現場を巡回し労災事故防止対策について点検するとともに警備員の服装、身だしなみチェックも行いました。

さらに“低価格競争に歯止めを掛けなければ”との思いから、交通部会内に「料金対策委員会」を設けて方策を話し合い、姫路市などに最低制限価格制度の導入に向けた陳情を重ねたのです。

その後、協会内に警備料金問題を研究する「労務費特別委員会」が新設されました。近年には県や各市などへ最低価格制度の設定を陳情、県建設業協会にも適正価格での発注を申し入れるなどして、成果につながっています。

支部活動は、協会活動の原点となるものです。合同研修会を開催するなどして支部間の交流が深まることは、協会全体の活性化に結び付くはずです。各支部の自発的な活動・交流を、協会として盛り上げていきたいと考えます。

<<社業では、交通誘導警備業務を手掛ける「ナカチュー」を創業され来年30周年を迎えます>>

私は保険代理店を10年余り経営していましたが、友人から警備業について聞き、関心を持ったことが契機となって起業しました。

創業時は、15人ほどの若い警備員に頑張ってもらおうと、妻が毎朝、弁当を15個作ってくれました。当時の活気は、社員が増えた後も引き継がれ、社風になっていると感じます。

当初から警備員の社会保険加入を進めたところ「安心して働き続けることができます」との声があり、定着促進につながりました。警備員のスキルを磨いて、高速道路の交通規制業務をメインとすることで成長してきました。

新卒者の採用に力を入れ、この4年で10人が入社しました。高校を卒業したばかりの若者が戦力になるまで相応の時間がかかりますが、いずれ職場の核となり長期的に活躍することを願っています。

<<交通誘導警備の課題克服に向けて必要なことは何でしょう>>

交通誘導警備には閑散期と繁忙期の問題があります。公共工事は4月から6月にかけて少ないため収入・雇用が不安定となり、夏以降は増えて3月まで人手不足、長時間労働が続く状況を改善しなければなりません。

年間を通じて安定的に公共工事を行う「施工時期の平準化」は、工事発注者の努力義務とされています。警備員の安定雇用のためには、各社による処遇改善の取り組みとともに、公共工事の平準化を業界として働き掛けていくことが重要と考えます。

<<警備業界は青年部活動が活発になっています>>

兵庫警協青年部会は設立8年目で、地域のイベントに参加し警備員の仕事についてPRする活動や人材確保の勉強会などを重ねてきました。当社の社長(子息の中尾圭太朗氏)も参加しています。

一般に若手経営者は、同業者と交流し情報共有を図ってスマートな会社運営をしていると感じます。青年部会は協会委員会の下部組織ではありませんので、若い感性とアイデアを活かし業界の将来を見据えた活動に期待しています。

警備業ヒューマン・インタビュー
――新会長① 神奈川警協2022.07.11

岩野経人さん(国際連邦警備保障 代表取締役社長)

「資格者」の権威アピール

<<神奈川県警備業協会の第9代会長に就任されました。5月の総会の所信表明では、3つの目標を掲げました>>

「検定資格者の権威向上」「警備料金の引き上げ」「青年部の設立」の3項目です。

警備業は「教育産業」であり、警備業法に基づいて全ての警備員は新任教育20時間以上、その後も年度ごとに現任教育10時間以上を受講した上で勤務に就くことが義務付けられていますが、社会的にはほとんど知られていません。

検定資格についても同様で、業務ごとの専門技能や知識を身に付けた国家資格は“プロフェッショナル”の証です。会員各社で検定資格者の権威をもっとアピールしてほしいのです。そうすることで「業界の社会的地位向上」と「警備員自身のモチベーションアップ」を図ることができるからです。当社の警備員は、所持する検定資格を表示した腕章を付けてもらっています。

公共・民間を問わず一部の発注者に検定資格についての知識がない場合も残念ながらあるようです。例えば交通誘導警備の現場が公安委員会が定める指定路線と認識していない場合があるのです。検定資格者の労務単価で見積もりを提示したところ、理解を得るのに時間を要したという話も聞いています。

<<検定資格者を増やして警備の質を上げることで、2つ目の目標である「警備料金引き上げ」につながります>>

当警備業協会は昨年から、神奈川県警備業政治連盟、神奈川県警備業協同組合と3組織が連携して、神奈川県などへの陳情活動を行っています。当警備業協会の役員が、警備業政治連盟と警備業協同組合の役員を兼ねていることから3組織は横のつながりが強く、LINEを使った情報共有も行っています。神奈川県に向けては警備業への予算確保など課題解決に向けたさまざまな要請を行っています。

こうした陳情活動はこれまで警備業協会が単独で行ってきましたが、なかなか結果が出せませんでした。2019年に神奈川県警備業政治連盟が設立され、議員の方々に業界の現状や課題を伝えることで、ようやく自治体からの理解を得ることができつつあります。

会員各社の話を聞いても、以前に比べて適正な警備料金を確保できる状況になりつつあり、この流れをさらに進めていきたいと思います。

全国警備業協会による業界全体への後押しもありがたいですね。当協会では毎秋、全警協労務委員会副委員長の松尾浩三氏(岡山警協会長)を講師に招いて警備料金の積算方法などについての勉強会を行っており、会員から好評です。全警協の「適正取引推進等に向けた自主行動計画」も適正料金を得るための材料になっています。リーフレットにある具体的な事例解説や警察庁生活安全局長の言葉などが交渉の現場で大きな助けになります。

<<青年部についてはどのような計画でしょう>>

「40歳以下」の制限を設け、20代・30代の経営者・幹部で構成する青年部を、8月の理事会で承認を受けた上で設立する予定です。

青年部は協会委員会の下部組織ではなく、独立した自由に動ける環境に置きたいと思っています。柔軟な思考で今までになかった斬新なアイデアを提案してもらい、業界に新しい風を吹き込んでくれることを期待しています。

当社でも今年受注した海水浴場警備の制服について、20代の社員の意見を採用しました。白いTシャツにオレンジ色のビブス(メッシュ地のベスト)、ベージュ色のワークパンツ、メッシュ地のキャップという従来の慣習に促われない機能的なものです。

<<若手に期待する一方、総会の新会長あいさつでは、歴代の協会長を一人ずつ振り返り功績を讃えました。警備業に貢献された先人へのリスペクトを感じました>>

当社は父の岩野晶男が創設し、私は入社して来年で40年になります。その間、先輩の皆さまが県内の警備業発展のために尽力する姿を見てきました。

特にイベント警備については、県下の警備業協同組合が一致協力してお客さまやスタッフの方々に安全・安心を提供しています。県内の警備業者が一つにまとまる土壌は先輩方に築いていただいた財産であり、我々はその土壌を活かして業界をさらに発展させる責務を担っていると感じています。

3つの目標を達成して警備員という仕事の社会的・経済的地位を上げ“もっともっと稼げる業界”にしていきたいと思います。

警備業ヒューマン・インタビュー
――人脈生かし起業2022.07.01

池田純子さん(SRC 代表取締役社長)

「地元」で警備業に復帰

<<警備業との出会いはどのようなものだったのですか>>

若い頃は俗にいう「やんちゃ娘」でした。高校を中退し20代後半で福岡に出てきて、事務職として警備会社に就職したのが警備業に携わることになったきっかけです。出身地の宮崎県延岡市にいた頃は警察が煙たい存在でしたので、後年一緒に仕事をする関係になるとは夢にも思いませんでした。

入社した警備会社で「もっと警備の仕事を勉強してみないか」と勧められ、営業も担当するようになります。さらに交通誘導警備2級など複数の資格も取得し、警備に関する業務全般に携わりました。

40歳手前で取引先だった関西の建築会社から、専属の警備会社を立ち上げないかとの提案を受けました。大阪府岸和田市で警備会社を設立しましたが、事情があり1年ほどで手を引くことになりました。

10年以上警備の仕事に携わってきたこともあり「一度、生活スタイルをリセットしたい」という気持ちがありました。以前から介護の仕事に興味があったため、兵庫県伊丹市で介護職に就きました。

警備業からの転身でしたが、貪欲に知識を吸収し勉強も重ねてケアマネージャーの資格を取り10年近く勤めました。

<<その後福岡に戻られたわけですが、どのような事情があったのですか>>

関西での生活が長くなりましたが、実家が九州ということもあって福岡にはたびたび足を運び、かつての友人との交流が続いていました。警備関係の知人も多く「警備の世界に戻ってもいいかな」という気持ちは残っていました。

高齢になった両親のことも気がかりで「いずれは九州に戻りたい」と考えていたところ、福岡の警備会社に勤務していた時に知り合った警備会社・パシフィックガードサービス(福岡市博多区)の松丸秀樹社長から「会社を畳むことになった。福岡に戻る気があるなら、新会社を設立して仕事を引き継いでくれないか」と依頼されました。親しくしていたことと関西で警備会社を経営した経験があることが、私に白羽の矢が立った理由でした。

福岡で警備の世界に戻りたい気持ちがありましたが、最初に勤めた警備会社に「警備のイロハ」を教えてもらった恩義があるため、他社で働く気はありませんでした。「警備で福岡に戻るなら起業したい」と考えていたところ、松丸さんのオファーがあったのです。2010年にSRCを設立し、松丸さんには会長に就いてもらいました。会社設立2年後には松丸さんと結婚し、人生も共に歩むことになりました。

<<福岡県警備業協会の女性部会“あやめ会”の副部会長も務めています>>

世間一般で警備業界は男の世界だと思われていますが、女性も頑張っていることをもっと知ってもらい、多くの女性に警備業に参入してほしいと願っています。他の都道府県協会の女性部会や警備会社の女性経営者と連携を強化し、女性が活躍できる環境づくりを全国レベルで進めていけるよう貢献していくつもりです。

<<警備業だけでなく農業に目を向けた活動も展開しています>>

独自の防護柵を使った害獣対策や農業施設の警備を行っていますが、最初から事業として意識していたわけではありませんでした。

主力の交通誘導警備は悪天候などで中止になることもあります。空いてしまった時間を有効活用できないかと考え、始めたのが倉庫内での青果物仕分けなど農作業の補助でした。警備業務がキャンセルになっても警備員は収入を得られますし、地域社会とのつながりも生まれます。

<<これから、どんな気持ちで警備業を続けていかれるのでしょうか>>

当社は営利を追求するだけでなく、良き企業市民でもありたいと考えています。地域社会への貢献活動として、駅や公園のトイレ掃除、耕作放棄地の草刈りなどを行っています。ボランティア活動として取り組んでいますが、一部は関係者の理解を得て有償化にも成功しました。

紆余曲折がありましたが人生の節目で人脈に助けられました。周囲の人に支えられ深刻に悩むこともなく、SRC設立後も総じて順風満帆でした。ただ、コロナ禍は今までの歩みを振り返り、自分を見つめ直す契機になりました。コロナで今までの常識の多くが変わり「社長の役割」について真剣に考えました。答えはまだ出ていませんが「前に進むためには何が必要か」を自分自身に問い続けていきたいと思います。