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警備業ヒューマン・インタビュー
――2号警備特化2023.07.21

小林正樹さん(グリーン警備保障 代表取締役社長)

改善重ね、全国最大規模に

<<今年5月、グリーン警備保障の代表取締役社長に就任されました>>

創業者で私の叔父の小林一雄(現・相談役)が初代、その実弟で私の父・小林正和(現・代表取締役会長)が第2代、私は第3代として経営を担っています。

入社して16年間、現場の警備業務から始めてさまざまな職務を経験し、先代・先々代からは経営に関する多くのことを学んできました。今後は働き方改革やDX(デジタルトランスフォーメーション)化への対応など時代に沿った取り組みは進めますが、創業時から続く基本的な方針を変えるつもりはありません。

<<売上200億円超、従業員数5600人と、2号警備業務に特化した警備会社として全国最大規模に成長した秘訣は何でしょう>>

先々代や先代に「会社の規模を大きくしたい」との目標はなかったようです。ただ全社・各支社の業績を前年と比較し、伸びていない場合はその原因を追求して改善してきた積み重ねが、今日につながっているものと思います。

創業時から新卒採用を行わず、中途採用の警備員の中から内勤社員に抜擢し優秀な人材には役職を付け、本人の希望と実績から支社長に任命するというやり方を続けています。M&Aは行わず、あくまで自社の社員にチャンスを与えポストに就いてもらいます。

<<本社をはじめ拠点は首都圏に置いています>>

当社は創業してまもなく配電工事の交通誘導警備業務を受注し、その拠点として支社を創設していきました。1都4県内の各支社で営業活動を行って業容を拡大し、近隣の支社同士でマンパワーの応援体制を築くことでお客さまの需要に応えてきました。

「お客さまから打診があった仕事は何としても引き受ける、そして最後までやりきる」をモットーに業務を続けた結果、「グリーン警備保障は『警備員がいない』と断られることがない」と評判になり、数ある警備会社の中で真っ先に発注の打診を頂くようになりました。

営業活動は新規獲得には力を入れず、既契約先を定期訪問してフォローしながら顧客を紹介していただく形で広げています。

「東京2020」前は適正料金を確保しやすかったのですが、大会後は各社で警備員の余剰人員ができたことからダンピングが横行しました。今でもその傾向は続いていますが、このほど本社に営業本部を設置し、価格交渉に一層力を入れる意向です。

<<人手不足の対策は?>>

当社は他の警備会社以上に募集に費用をかけ、人材確保に努めてきました。昨年からは面接を省略し、応募があった時点で仮内定、来社時にすぐオリエンテーションと法定教育の初日として2時間受講してもらう体制をとっています。採用後に定着した人数で計算してみると、一人あたりの採用に約100万円を投資していることがわかりました。

<<毎年春に都内で1000人規模の警備員が一堂に会し、大規模な合同訓練を行っています>>

警備業務の技術的な部分を高めるよう教育に力を入れていますが、第一印象である「清潔感ある身だしなみ」が最も重要と考えています。警備服は2019年、白を基調にグリーンをあしらった新しいデザインに一新しました。汚れを目立ちやすくしたことで、ひんぱんに洗濯したり交換したりする意識を持たせています。通行人やドライバーなどへの「言葉遣い」も重要視しています。交通誘導の動作や声掛けなどは業務に慣れるに従って後から自然に付いてくるものだと思います。

昨年当社オリジナルの「オフィシャル・ハンドブック」を作成し、全警備員に携帯してもらっています。東京2020で警備JV(共同企業体)が携帯した手帳サイズのマニュアルにヒントを得て、社内ルールや基本動作、マナー・モラルの事例、検定資格取得者の配置が必要な指定路線名などをわかりやすく解説したものです。業務のあとや休憩時間などに見返して役立ててもらいたいと思います。

<<業界ではDX化が進んでいます>>

当社では昨年、総務部内にスキルを持った専門部署を作り、ロードマップを作成してDX化に取り組んでいます。昨年は上下番報告や勤務指示をスマホ操作で行い警備員の手配や工数集計などを管理する「管制自動化システム」をはじめ「PCの資産管理・情報漏えい防止システム」「給与前払いシステム」などを導入しました。

今年は「給与明細の電子化」「現任教育のオンライン化」などで一層の効率化を実現させます。

警備業ヒューマン・インタビュー
――「事業継承」2023.07.11

内山達也さん(東和セキュリティ 代表取締役)

信用金庫から警備業へ

<<信用金庫勤務を経て「東和セキュリティ」(静岡県浜松市)の代表取締役を務めています>>

私は37年にわたり信用金庫に勤務し、主に融資畑を歩んで支店長を務めました。

5年前、60歳の定年が近づく中、当社の内山隆司オーナー(東海浜松会計事務所・代表)から、創業40年を前に後継者不足となっていた当社の事業継承について打診いただきました。内山オーナーは同姓ですが血縁関係はありません。

警備会社との取引経験はなく業務内容も知らなかったのですが、経営指導の仕事から経営を実践する仕事に興味を持ち転職を決意しました。

中小企業の後継者不足は社会の課題となっています。後継者の定まらない企業が良質な業務サービスを提供し続けるためには、合併や外部から経営者を招くことを進めるべきではないかと考えます。

<<信金支店長と警備会社代表、共通するものはありますか>>

限られた人材を、ほめて叱って励まして、どう動かしていくか。それは支店の業績に直結し、警備業も同様と感じます。

私が入社する前後の5年間は厳しい採用難で、警備員20人が高齢化などで退職したが補う新入社員はゼロという状況に直面しました。

創業40年で組織が硬直し創造性を失っていると感じ、新たな視点を入れようと異業種・損害保険会社の支社長経験者を総務に迎えました。取り組みのアイデアや各種助成金の申請、インターネットを活用した情報収集などで当社の“参謀役”となっています。

私は警備員指導教育責任者の資格を三重県で取りました。その講習会場で、資格取得に意欲を燃やす活気ある愛知や三重の若者たちと出会って、大いに刺激を受けたものです。こうした若年層の補強は企業を活性化させると考え、新卒採用に取り組んでいます。依然として状況は厳しいです。

<<採用活動での課題はどのようなことでしょう>>

高校との相談会で就職担当の先生と話すと「警備業は仕事の内容がよく分からないので、生徒に推薦するのが難しい」などの言葉がありました。こうした言葉は、警備業の置かれた現状を端的に表していると思います。

社会に不可欠な職業・警備員がもっと理解されて、処遇改善や職場環境の整備、イメージアップが進むなら、警備業を選ぶ若者は確実に増えるはずです。将来の経営幹部や独立起業を志す若者たちが集まって、警備業を理解したうえで互いの夢を熱く語り合える業界になるよう願っています。

採用活動は求人情報誌に限らず、さまざま方法を模索しチャレンジしています。昨年は、厚生労働省が中小企業の若者採用を支援する制度「ユースエール認定」を受けることができました。

これは労働局の審査を受け、離職率が低く年次有給休暇の取得率70%以上などで“雇用環境が優良”と認められた企業が認定されます。ハローワークでの重点PRや厚労省のサイトに企業情報が掲載されるなどのメリットがあるのです。

また、新卒入社した社員の奨学金返還を応援する「浜松市奨学金返還支援事業」の補助金認定も受けました。こうした認定取得を重ねて企業価値を高め、若い求職者にアピールしています。

<<静岡県警備業協会の活動に積極参加され、5月に「優秀会員」として会長表彰を受けました>>

協会の新たな取り組みで、地区ごとに会員が集まり業界の課題についてざっくばらんに話し合う「明日の警備 大討論会」が昨年度は3回開かれ、私は運営を担いました。中小の警備業者が、厳しい環境にあって直面する問題の解決や職場環境改善に取り組んでいることを業界内外に発信していくことは重要と考えています。

当社は管制業務の改善、効率化を図るため警備員の年齢や対応能力を考え、警備現場からの勤怠報告、翌日の業務内容確認などをごくごくシンプルなスマートフォン操作で行えるよう、当社オリジナルの使いやすいアプリを専門業者と打ち合わせて開発し、今秋に導入します。

私は、立ち止まり考えを巡らすとき実業家サミュエル・ウルマンの「青春」という詩の一節を読み返します。「年を重ねただけで人は老いない。理想を失う時に初めて老いがくる(岡田義夫・訳)」。

自社や業界のあるべき姿、理想を追い続けるのは容易ではありませんが前向きな気持ち、チャレンジ精神こそ私の原動力です。

企業の資産となる警備員を育成し、企業価値をより高めた上で経営のバトンを後継者に手渡せるよう、取り組みを続けます。

警備業ヒューマン・インタビュー
――「営業マン」「ボクサー」2023.07.01

山口仁也さん(モビメントコスモ 営業部)

飛び込み訪問し、夜は練習

<<山口さんは警備服を販売する営業マンであり、プロボクシングの選手でもあります>>

私は現在23歳で、24歳未満のA級ボクサーが競う「スーパーフライ級日本ユースチャンピオン」です。ボクシングは小学6年生のときから始めて中学・高校・大学とアマチュアで続けてきました。

2022年6月にプロデビュー、23年3月に後楽園ホールでタイトルマッチを行い、2対0の判定勝ちで日本王者になりました。対戦相手はアマチュア時代に2回負けている選手だったので、勝ったときの喜びはひとしおでした。

ひたすら練習を積んだ結果が試合の勝敗としてはっきり示されるボクシングという競技は、自分の性分に合っていて好きなのです。試合で努力が報われた瞬間に湧き上がる歓喜は、何にも替え難いものがあります。

<<ボクシングと仕事を両立させています。一日のスケジュールは?>>

基本的に日々、同じルーティーンを繰り返しています。午前6時に起床し、10キロぐらいのロードワークで一日が始まります。9時に出社して午後6時まで仕事をします。仕事は電話でのアポイントや飛び込み訪問など、営業活動を始めたところです。午後7時から10時までは、東京都練馬区内の三迫ジムでシャドウボクシングやサンドバッグ・ミット打ちなどの練習です。

仕事は月曜から金曜、練習は月曜から土曜までやっています。土曜は特殊なメニューとなり、走り込みのほかストレッチやウェイトなどのフィジカルトレーニングも取り入れ、朝10時から午後1時、午後6時から9時まで2部に分けて練習します。日曜は体を休めています。

<<モビメントコスモを新卒の就職先に選んだ理由は何でしょう>>

ボクシングと仕事を両立できる「デュアルキャリア制度」を採用しているからです。当社の大橋直矢社長は、J2リーグのクラブ「水戸ホーリーホック」にボランチとして所属した元プロサッカー選手で、アスリートに理解が深いことも決め手になりました。

当社は働くアスリートのスポンサーを募集するマネジメント事業も行っています。スポンサーになってもらえる企業には選手と一緒に勝ち上がっていく「夢」を提供し、我々アスリートには現役引退後にスポーツに関わるポストを用意していただく事業です。

ボクシングの現役時代は決して長くありません。その後の人生はどのような仕事に就くか、当社で正社員として働きながら勉強させてもらっています。

<<取り扱い商品で夏季のおすすめは?>>

まず「オールメッシュ長袖シャツ」です。通気度が高い素材・ブラインドトリコット3.1を使用し爽やかで、透けにくく耐久性が高いことが特長です。

「水冷ベスト」は、モバイルバッテリーを使用し、ベスト内に張り巡らせた管を水が循環して体を冷やします。背中に凍ったペットボトルを収納することで、冷却効果がさらに向上します。

外気を取り込み気化熱で冷やす小型ファン付きベストやブルゾンは、裏地にチタンコーティングがしてあり、紫外線・赤外線を約90%カットし体力の消耗を軽減させます。いずれの商品も夏季の熱中症対策に効果があります。

<<営業活動を行う中で、警備業に感じることは何でしょう>>

もし警備員が現場に不在であれば、道路工事や建築工事の進捗が滞ってしまう「社会に必要不可欠な業種」としてリスペクトしています。

警備業は人手不足が大きな課題になっていますが、若い人にはぜひ就職先の選択肢に入れてほしい。そのために私が貢献できることは、着てみたくなる機能やデザインを備えた警備服や装備品を一人でも多くの警備員の方に身に付けていただき、一層働き甲斐を感じられる仕事にすることです。

<<今後の仕事とボクシングの目標を聞かせてください>>

営業の仕事を通じて人として成長し「この人から購入したい」と指名がかかるまで頑張りたいと思います。

ボクシングの方は、次戦が8月または10月の予定です。私は佐賀県の出身ですが、両親や親戚がいつも東京まで応援に来てくれます。皆の声援を力にして、次の試合もきっちりと勝ちたい。日本王者は通過点と思っており、4、5年後に世界タイトルを穫ることを目指しています。