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警備業ヒューマン・インタビュー
――現場の声を聞く2018.1.21
竹林晴之さん (東海警備保障 取締役業務部長)
ネットで話題の警備隊、企画
――神奈川県鎌倉市の鶴岡八幡宮で初詣警備を行っている赤いコートを着た警備隊が、ネット上で話題を呼んでいます。
12月31日から1月8日、2月3日に、当社で特別に編成する警備隊「レッドコーツ」です。社員とは別に、大学生や他に仕事を持っている人たちのアルバイトで構成しています。
鶴岡八幡宮から22年前に「遠くでも目立ち、威厳ある制服を着用してほしい」という要望がありました。既製品ではその目的にかなうものがなかったため、前職が服飾デザイナーだった私は新しい制服の企画・デザインを任されました。
どうせ作るなら長く使える高品質な制服にしたいと思い、経営者の理解を得て妥協のない内容にしました。その甲斐あって、そのとき作ったものを今でも着ています。当初は男性用のみ製作し、10年程前に女性用を作りました。
――製作上でこだわった点は?
大晦日の寒さに耐えられる防寒性、参拝客が広報に従ってくれる威厳、万が一暴力をふるわれても最小限の被害で済む防御性を兼ね備えたデザインが必要でした。
厚手のしっかりした生地で裏張りを施し、防寒性は十分です。左胸にワッペンを付けるため、ボタンはダブルではなく右側のみとし、二重の肩パットにより細身の人でも体格よく見えます。胸部は二重構造で叩かれてもダメージが少なく、股間を蹴り上げてもコートが長いため途中で止まり、幅がある革ベルトでボディも守られています。
――着用して、どのような効果がありましたか。
最初は隊員から「これを着るのですか?」と驚かれました。しかしすぐに参拝者から写真を撮られるなど人気を集め、隊員からも好評となりました。最近はインスタグラムや海外のブログでも紹介されているようです。
今では鶴岡八幡宮の初詣の名物として浸透・定着し、他の警備会社に変更されることもなく営業的にも良い結果となっています。
何よりよかったと思うのは、毎年若い人たちが大勢参加してくれることです。今年も20代の若者が75人集まり、その4割は女性でした。
――竹林さんの服飾デザイナー経験が警備業で活きています。
私は「マーチングバンド」が趣味で、高校生のときはユーフォニューム(金管楽器の一種)を演奏して横浜市で行われる「ザよこはまパレード」に参加していました。楽器を演奏する時は、上半身を安定させるため特殊な歩行をしますがそれを取り入れ、境内の玉砂利でほこりをたてない歩き方を指導しています。
――募集はどのように?
専用のサイト(redcoats.net/)やチラシを使った口コミで集めています。12月31日から1月5日の間で3日以上勤務でき、12月下旬の研修に参加することが条件です。
大学生は就職後も初詣警備に参加してくれる人が増えており、長い人は裏方として20年以上協力してくれています。本業で十分な収入を得ていますが、「レッドコーツに参加しないと年が改まった気がしない」と言って隊員の教育やまとめ役を行っています。
――皆さんの本業は何ですか。
ライフセーバーのグループがいます。毎年協力してもらっていて、急病人が出たときは救急隊員が到着するまでの対処ができます。
外国語の教師もいて学生の人も合わせると、英語、中国語、韓国語、ロシア語など様々な言語に対応できます。来年は名札に国旗をつけて、外国人の参拝客に向けて案内することを考えています。
――更に注目を集めそうです。
当社のメイン業務は、施設警備とビルメンテナンスです。「レッドコーツ」は今後も別部隊として、若い人たちに警備の素晴らしさ、やりがいを体験してもらいたいと思っています。