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警備業ヒューマン・インタビュー
――青年部活動2024.06.21
宮田崇志さん(出羽警備 代表取締役社長)
「ガリット」前面に広報
<<秋田県警備業協会青年部会の第3代部会長に就任されました>>
当青年部会は、春と秋の全国交通安全運動に合わせた通学路の見守り活動、研修会などを重ねてきました。また、秋田県内の警備業入職者を1人でも多く増やそうと広報活動に取り組んでいます。
広告塔となるのは、1月にお披露目した協会マスコットキャラクター「ガリット」です。“がりっと”は秋田弁で“しっかりと、一生懸命に”という意味で「がりっとがんばれ!」などと使います。
<<ガリットはどのように生まれましたか>>
昨年夏、前部会長の千種学氏(ALSOK秋田)が効果的な広報活動に向けて協会マスコットの制作を発案され、理事会の承認を得てスタートしました。
子供たちやファミリー、幅広く親しまれるキャラクターにしようと青年部会員はデザインのアイデアを出し合い、「県内の警備員たちの使命感と秋田犬の忠実な性格が融合し、業界を明るい未来へ導く」などの設定を固めました。協会加盟会社から名前を募集し「ガリット」に決まったのです。
ガリットのイラストは加盟各社が名刺や企業パンフレットなどに印刷して活用できます。着ぐるみは、7月に地元テレビ局のイベントに参加して警備業界をアピールする予定です。
<<東北6県と北海道の青年部会は毎年「サミット」を行います>>
今年は10月に秋田市内で「青年部サミットin秋田」を開催します。昨年の北海道、一昨年の岩手のサミットと同様に実り多い会合にしようと準備を進めているところです。人材確保や適正料金などの課題に対し、他県の青年部メンバーと目的や危機感を共有して取り組むことで、視野も人脈も広がります。青年部活動の経験は企業経営に非常に役立つと思います。
<<社業では、今年で創業30周年の「出羽警備」(秋田市)代表取締役社長を務めています>>
当社は、初代社長の二木武志取締役会長が創業しました。私は就職氷河期世代であり、中途採用の有期契約の交通誘導警備員として入社したのです。
当初は転職を考えましたが、会社から勧められ特別講習を受講して警備業務の奥深さを知り、国家資格の交通誘導警備2級を取得し職業意識が高まりました。
社業と併行して特別講習講師の一員として活動させてもらい、多くの方々との出会いに恵まれて成長できたと思っています。
入社して12年ほどで代表に就きましたが、いずれ創業家から新しい代表が来るまでの間、当社を切り盛りすることが私の任務と心得ています。経営理念「三方よしの業務実現」に向けて、顧客満足度と従業員満足度をより高め、地域の安全安心への貢献に努めています。
<<「秋田県SDGsパートナー」登録企業です>>
県の公式サイトで社内の目標「人材育成、従業員の健康増進」を公開しています。
現在、従業員の7割は資格者です。「2030年までに有資格者の割合を9割以上にする」との目標を掲げ、教育に力を注いでいます。
社内に「健康増進部」を設け、教育研修の中で食事の栄養バランスを説明するなどして肥満改善、生活習慣病の予防を呼び掛けています。昨年、「秋田県版健康経営優良企業」に認定されました。
健康づくりのきっかけは8年前、管理職になった私はストレス解消で食べ過ぎ、体重が20キログラム増え100キログラムを超えました。動悸や息切れで“危険だ、自分を変えなければ”と筋トレに励むようになったのです。40歳を過ぎても筋肉は、鍛えるほど成長してくれます。
自分自身の健康を強く意識したことで、中高年が多くを占める従業員の健康状態について社内の衛生管理者から健康診断の二次検診の受診状況などを聞き危機感を抱いて以降、「誰かを守るために自身の精神と肉体を万全にする」という信念のもと社内の健康増進を図っています。
毎年の健康診断の結果が、社内基準で優良と認めれられた従業員は健康面でのロールモデルとなってもらうため「健康優良賞」として忘年会など社内行事の際に表彰します。昨年は21人を表彰しました。
運動の習慣づけに筋力トレーニングを推奨し、スポーツジムの会費を補助したところ好評です。当社健康増進部の活動は、X(旧ツイッター)で発信しています。
天台宗の高僧・荒了寛師の言葉「思った通りにはならないが、やった通りにはなる」を行動指針としてきました。青年部会長、特別講習講師、経営者として警備業の発展をめざして取り組みを進めます。
警備業ヒューマン・インタビュー
――新会長 愛媛警協2024.06.11
阿部克彦さん(愛媛綜合警備保障 代表取締役社長)
地位向上と発展に尽くす
<<愛媛県警備業協会の第13代会長に就任されました>>
警備業界を取り巻く環境は、厳しいものがあります。労働人口の減少や少子高齢化に伴う人手不足、物価スライドを踏まえた警備料金への価格転嫁、警備業務へのAI導入、外国人の警備員雇用など課題山積です。私は田中克幸前会長の運営方針を踏襲しながら、会員各社の協力のもと県内警備業の社会的・経済的地位向上と発展に尽くしてまいります。
以前観た邦画の中で、還暦を過ぎた主人公が路上で偶然、交通誘導警備員をしている高校時代の同級生に再会するシーンがありました。そのとき主人公は「あの頃サッカー部で輝いていた彼がどうしてこんな仕事を…」とつぶやくのです。同級生は事業に失敗し警備員として日々の生計を立てている設定でした。
警備業は生活安全産業として社会になくてはならないエッセンシャルワーカーです。しかしそれが社会から十分に理解されているとは言い切れません。課題改善と広報活動を進め、一層のイメージアップを図る必要があります。
<<2021年から3年間、愛媛県警備業連盟理事長を務めました>>
当警備業協会の目的は、警備業の適正な運営を確保して警備業の健全な発展を図り、社会公共の安全に寄与することです。警備業連盟は政治活動を通してですが、協会と同じ目的の実現を目指しています。各都道府県とも協会と連盟が両輪となって連携し、目標達成に努力することが肝要です。
<<警備業連盟の理事長と同時に愛媛綜合警備保障の代表取締役社長にも就任しています>>
1969年に当社を創業した初代の渡邉茂社長から二宮義晴前社長までの6人と同様、私も愛媛県警察の出身です。私が社長就任時に社員に伝えたことは、県警時代に部下に話した内容と同様、3点あります。「前向きに仕事に取り組む」「数値目標へのこだわり」「常山の蛇勢」です。
前向きに仕事に取り組むためには、常にプラス思考で臨んで仕事を楽しみ、小さなチャンスを見逃さない姿勢が大切。会社に勤めて報酬を得ている以上、示された数値目標に向けて努力することは当然です。3つ目の「常山の蛇勢」とは孫子の言葉で、中国の常山という山に住む蛇のことです。首を打てば尾がからみ、尾を打てば首が噛みつくなど、互いに助け合うことで隙のない状態を作り出します。社員が支え合って全社一体となり、力強い会社組織を構築してもらいたい思いから伝えました。
<<県警時代には、多くの部署を歴任しました>>
1976年に県警察官に採用されてから、87年に警察庁四国管区警察局に派遣され、高松で2年間、92年に警察庁本庁出向で東京で3年間、捜査第一課で勤務しました。担当した大きな事件は、グリコ森永事件や朝日新聞社襲撃事件などの広域重要事件の捜査調整、オウム真理教の地下鉄サリン事件、警察庁長官狙撃事件などです。ちょうど重要事件が連続して発生した時期でした。
<<エピソードがあれば聞かせてください>>
捜査が実を結んだこともあれば残念ながら結果を出せなかった事件もあります。忘れられない経験の一つに2001年に松山市内で発生した「一番町郵便局強盗致傷事件」があります。
私は当時、松山東警察署の刑事一課長でした。郵便局からの非常通報を受けて現場に急行すると、犯人は局内で女性客を羽交い締めにし首にカッターナイフを突きつけ金を要求しています。局内に入って犯人と対峙しながら「恐怖で泣いている女性の救出が最優先」と思い、一旦外に出て「チャンスがあったら押さえますよ」と上司に許可をとりました。再び戻ると犯人と女性の間に距離ができています。「今しかない!」と犯人に飛びかかり、ナイフを持つ右手をつかんで背中にねじ上げ、取り押さえることができました。
<<阿部会長は柔道5段と聞きました>>
柔道技を使う余裕はなかったですね。柔道は中学1年生から始めて進学した高等専門学校でも打ち込み、全国高等専門学校体育大会では重量級で優勝することができました。愛媛県柔道協会からの表彰が県警師範の目にとまり「警察官になって本格的に柔道をやってみないか」と誘っていただいたことが警察官を拝命するきっかけになったのです。
柔道のおかげで警察官になり、元愛媛警協会長の二宮義晴氏と縁ができて愛媛綜合警備保障に入社し、愛媛警協会長にも就任させていただきました。人生を紡いだ巡り合わせに感謝しています。
警備業ヒューマン・インタビュー
――貸金庫サービス2024.06.01
平皓己さん(日本連合警備 専務取締役)
地域の課題に最適な提案
<<大分市内に完成した新社屋で2024年6月から貸金庫サービスをプレオープンします>>
金融機関の貸金庫と同様、顧客の財産を保管する個人・法人向けのサービスです。耐火構造で厳格な入退室管理の施設で安全に保管する環境を提供します。金庫を置くスペースがない、災害や盗難などのリスクに備えたいといった個人・法人顧客のニーズを想定しています。予約制ですが、預けた財産は365日・24時間出し入れできます。
また、オプションとして貸金庫保管物の保険、自宅―貸金庫間の貴重品運搬にも対応します。金庫のサイズは大・中・小の3種類。料金は初期に必要なカードキーの発行・登録手数料のほか、月額で小型が5000円、中型が8000円、大型が1万4000円ほどを予定しています。本オープンは7月からです。
<<警備業が貸金庫サービスを手掛けるメリットは何でしょうか>>
金融機関にとっての貸金庫は、口座を開設している顧客への付加サービス的な意味合いが強く、料金設定も比較的安い傾向です。
当社が取り組んでいる人工知能(AI)を用いた最新の防犯カメラなどの警備システムと、貴重品運搬を組み合わせた警備業ならではの警備態勢をもつ貸金庫を新たに提供します。貸金庫不足という地域の課題を新サービスで解決しつつ、住宅警備など個人客の新規開拓にもつながれば、警備会社としてメリットは大きいと考えます。保管も運搬も担うことにより、サービスへの信頼、ブランド価値を高められます。
また、施設警備と貴重品運搬警備を手掛けている警備会社であれば、他県でも取り組めるサービスですので、将来的にはパッケージ化し、各地に提供していきたいです。
<<新ビジネスの今後に期待が持てますね>>
貸金庫サービスの構想は5年ほど前には頭の中にはあったのですが、なかなか事業化まで踏み切れずにいました。新型コロナの流行に伴い、国や地方が中小企業向け支援策を打ち出し、当社も国の「事業再構築補助金」を受けたほか、大分県の「経営革新計画」にも承認され、ようやく事業化が前進しました。
人手不足など警備業が抱える課題をAIなど新しい技術を活用して解決できないかということは、コロナの流行前から考えていました。
例えば、温度分布を可視化するサーマルカメラやAIで温度管理を行う装置なども以前から知っていたので、最初の緊急事態宣言が出た20年4月より前から、検温して入退館を制御する警備手法を導入しました。ワクチンを保存する冷凍庫の温度管理をAIで行い、異常を確認したら警備員が駆け付けるサービスも、職域でのワクチン接種が始まった際に県内の大学とともにいち早く提供することができました。
アナログメーターをAI画像解析技術で読み取る仕組みを大分の温泉の湯温管理に活用してみてはと提案したことがあります。温泉設備機械による管理は設備投資が高額になるので、低コストで済む仕組みであることを強調しましたが、人間による管理には勝てませんでした。それほどの作業負担ではないということでした。
<<新事業やサービスを発想するとき、どのような経験が生かされているのでしょう>>
私が養子縁組しているため姓は異なりますが、当社の社長は私の母で、私は家業を継いだ格好ですが、大学卒業から16年までは広告代理店に勤めていました。そこで小手先のPRでモノを売るのではなく、顧客が抱えている課題の本質は何であるか、自分がその立場なら何をするかと考えながら、最適な提案をしていくというソリューションビジネスを学びました。警備会社に入社してもそのスタンスは持ち続けています。
また、幼少期をアメリカで過ごし、多様な価値観や気候風土に触れたことで視野を広げることができました。
<<「警備業のDX」が急がれています>>
AIなどの先端技術はあくまで道具であり、使うのは人間です。道具を活用し、付加価値をもたらせることができる組織や人間がこの先、真に必要とされるのではないでしょうか。時代の流れに順応し、質の高い安心を地域の方々に提供できない警備会社は、他の業界や会社に取って代わられる恐れがあると思います。貸金庫を提供するのが金融機関とは限らない一方、安全安心の選択肢も警備業とは限りません。
今後も「安心に品質を」モットーに、大分に貢献する企業を目指していきます。