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警備業ヒューマン・インタビュー
――長官会長連名表彰2023.09.21
浅妻豊さん(全日警サービス長野 代表取締役社長)
「災害警備」から地位向上へ
<<災害協定に取り組み、警察庁長官・全国警備業協会会長連名の「警備業功労者表彰」を6月に受賞されました>>
身に余る大きな賞を頂いて、警備業に携わる責任をより重く感じています。
私は、長野県警備業協会の理事を務めて16年になります。社業では「全日警サービス長野」(長野市)の代表を務めて10年目です。警備業が地域社会の負託に応えることを念頭に、長野警協と自治体との災害協定締結などに関係者の方々と取り組んできました。
<<協定はどのように進めたのですか>>
東日本大震災の後に、警備業が防災で担う役割を行政の担当者と話し合う機会が増えました。長野市の危機管理防災監から「被災地では警察、消防、自衛隊に加えて、安全安心を守る警備業の存在が重要になります」との言葉があり、調査研究を行いました。
車両の誘導、避難所や物資備蓄庫の警備など、被災者の方々に寄り添って安全を確保するため、ボランティアではなく有償の警備業務として協会会員が受注する必要があると考え、関係者と協議しました。2013年から16年にかけて長野警協は、長野・松本・飯田・佐久・小諸・上田の各市との間で災害時の「業務協定」を結んだのです。
長野市との締結から6年後の2019年10月、台風で千曲川の堤防が決壊し甚大な浸水被害が発生しました。長野市から出動要請を受け、会員各社の警備員延べ800人以上が、廃棄物の集積場6か所で災害ごみを搬入する車両の交通誘導警備と現場管理を昼夜2か月余り行いました。協定実施事務局に全日警サービス長野が指定され、私は現地災害対策本部長を務めました。
<<災害出動で重要なのはどのようなことでしたか>>
警備員の迅速な動員と、現場の安全確保です。長野市と取り決めた警備料金を記載した「出動依頼文」を会員にメールやFAXで送りましたが、各社の対応には“温度差”があり、警備員は必要な人数が集まりませんでした。
そこで長野警協・竹花長雅会長が「行政の負託に応えることは警備業の発展に結び付きます」という内容のメッセージを会員に送り、私は災対本部長として各社に状況を説明したところ、より多くの会員から協力を得ることができたのです。
大量の廃棄物が集まる場所で業務を行う警備員に防塵マスクとゴーグルを配りました。二次災害に巻き込まれないよう呼び掛けるとともに、警備現場と関係各所を結ぶ無線ネットワークを構築し緊密な情報共有を図りました。
協会として協定に基づく出動に取り組んだ経験は貴重な糧となるものです。当社では警備員教育に、災害時の警備体験を踏まえた講義や実技指導を取り入れています。
昨今はドローンのカメラで上空から撮影し被災状況を把握するなど、技術の活用が広がっています。当社は、各営業所にドローンのテスト機を置いて、社員が国家資格の操縦ライセンスを取得するよう進めています。
より多くの会員・関係者が連携を深め、警備員の技能を磨いて地域の防災に重要な役割を担うことは、警備員の地位向上につながると考えます。
<<地位向上は警備業の課題となっています>>
私は建設会社の営業職などを経て22年前に当社に入社しました。全日警・長野支社長を務めた私の叔父が当社を設立した縁で、経営に携わることになったのです。
現場を経験しようと施設警備、交通誘導警備、雑踏警備の各業務に従事する中で、警備員に対する社会的な評価が十分でないこと、公共工事設計労務単価で軽作業員より単価が安いことなどに悔しさを感じました。社員の処遇改善を進めて勤労意欲を高め、資格取得などのスキルアップを図り、顧客と社会の評価を今まで以上に高めようと取り組んできたのです。
当社は事業目的として「ピース・オブ・マインド=心の平和、安らぎ」を掲げています。お客さまの安全、安らぎを保つには、そのために働く警備員が安らぎを感じる職場環境が不可欠です。当社は「健康経営優良法人」の認定を2020年から4年続けて受けています。インフルエンザ予防接種の費用負担や健康カウンセリング、退職金制度の整備、三大疾病保険の加入やリゾート施設の無料宿泊なども行って社員と家族から喜ばれています。
当社で最年長の警備員は80歳です。難病を抱える人、身体や精神に障害を持つ人、軽度の知的障害を持つ人も社員となって会社に貢献してくれています。
私の長女と次女は社会福祉関係の職業に就いており、障害を持つ社員との接し方は、2人の娘からアドバイスを受けて進めてきました。処遇改善やスキルアップ、健康づくりに取り組むと、管理職と警備員との間で会話が増えるようになります。社員間の良好なコミュニケーションは、業務サービスの向上に結び付くものです。
今後も協会活動・社業を通じ、警備業の地位向上を視野に取り組みを重ねていきます。
警備業ヒューマン・インタビュー
――商社から警備業へ2023.09.11
菅野秀一さん(特別警備保障 代表取締役社長)
“地域ナンバー1”目指す
<<東京に本社を置く会社役員から今春、地域密着型の警備会社の経営者に転身です>>
特別警備保障(以下、トッケイ)は、2016年にセントラル警備保障(CSP)の連結子会社となりました。CSP出身者として初の社長です。CSPには約9年在籍しました。それ以前は三井物産(以下、「物産」)のいわゆる商社マンでした。CSPでは、主に営業やM&Aを担当していて、トッケイにも何度か来たことがありました。
社長に就任して第一に感銘を受けたことは、地元・神奈川県平塚市との密着度合いが東京の会社とは各段に違うという点です。一般的に東京で全国展開している企業で地元に密着しているケースは少ないものです。トッケイのキメ細かさ、地元との密着度、顧客との距離感は衝撃でした。
<<経営者としてまず取り組みたいことは>>
私自身まだ多くを語るには時期尚早なので、経験を生かして業務の生産性を上げる工夫をして行きたいと思います。まずはパトロールでも営業でも、無駄な作業負担を減らしたいと思います。
例えば、システムを活用し、不要な報告を無くすことです。現場からの報告を上司が確認し、それを清書してさらに上の上司に報告するといった作業には、無駄を省く余地があります。現場からの報告を複数人が確認できれば作業の負担が省けます。
ペーパーレス化というより「処理の短縮」です。作業を省いても安全が担保できていると社長が判断すれば、前に進めます。こうした第三者的な視点でできることから始めていきたいです。
<<商社から警備会社に転職したきっかけは>>
「物産」はCSPの約3%株主で、過去にも複数の先輩が入っています。その流れで「物産」に「55歳くらいの若い営業マンを探している」と声が掛かりました。「物産」でCSPに出資している「情報産業部門」に所属していた私は、ちょうど55歳。某大手小売企業のeコマース事業を担当していました。インターネット業界で55歳は“高齢者”扱いです。だから「55歳くらいの若い」というフレーズが興味深く、面接を受けたのです。
CSPに入社した14年8月半ばから私は警備現場で研修を受けました。私に限らず「物産」やJRなどからCSPに配属されると、6か月前後、同様の研修を受けます。私は常駐警備や機械警備の現場で24時間勤務を経験したり、現金輸送の現場も見たりしました。
夜間のパトロールは一般市民からは見えない裏側の仕事で、従来は全く知りえなかった仕事です。短い期間でしたが、その後の営業活動にも非常に役立つ貴重な経験でした。
<<商社やCSPでの経験を持ちながら今後は地域密着型の警備会社を経営することになります>>
顧客ニーズに応えることがサービス業の基本ですが、トッケイではサービスを提供するエリアが決まっています。顧客とエリアが見えるということは、楽でもあり大変でもあります。今の私はまだそこまでではありませんが、社員たちは顧客ニーズを相当把握しています。ただ、ニーズが分かっていても、応えられるサービスがなければ進みません。これから社員と顧客との中でしっかりとニーズを捉え、マッチングさせていきたいです。
<<トッケイといえば「トッケイセキュリティ平塚総合体育館」です。施設命名権を取得から10年目を迎え、バスケットボールファンを中心に浸透しています>>
「純粋想起」と「助成想起」という言葉があります。「車と言えばトヨタ」と思い浮かぶことが「純粋想起」と言います。「トヨタって知ってますか?」と聞くのは「助成想起」です。「リストの中で知っている警備会社はどれですか?」と尋ねてトッケイと回答を得ることも「助成想起」になります。
つまり、平塚市民、神奈川県民に「警備会社と言えば?」と尋ねて「トッケイ」という答えが他社より多ければ、わが社も嬉しい限りです。少なくともトッケイが県内で純粋想起1位であってほしいですし、「地域ナンバーワン」のシェアにつながっていくものと考えています。
CSP在籍時に東亜警備保障(宇都宮市)の連結子会社化を担当した際、「これまでの社名を残してほしい」と言われましたが、すぐに純粋想起に優れた社名を変えるなどありえません。それほど地域密着型の警備会社の商号にはブランド価値があると思います。
警備業ヒューマン・インタビュー
――長崎警協新会長2023.09.01
冨野官さん(長崎綜合警備 代表取締役社長)
故郷で、警備業に尽くす
<<生まれ故郷の長崎県に、38年ぶりに戻られたそうですね>>
私は綜合警備保障に入社して以来、東京都内の本社に勤務していました。技術職に始まり、営業管理などの業務に携わってきましたが昨年、出向という形で長崎綜合警備に入社し代表取締役に就任したのです。そして今年5月に開催された長崎県警備業協会の定時総会で、12年間会長を務められた児玉正信氏に代わり、協会会長に就任しました。
今後は生まれ育った故郷で、警備業に尽くしていきたいと思います。
<<長崎県の暮らしはいかがですか。都内の生活とかなり環境が変わったのでは>>
私と妻、猫2匹で長崎市内に暮らしています。離れてみて初めて故郷の良さがよくわかりました。まず魚がうまい。出身地の松浦市はアジの水揚げ量が日本一で、アジフライにすると絶品です。
長崎県には日蘭交流など独自の歴史があり、それがさまざまな文化とつながっています。私自身、故郷に帰って初めてそれらに気が付いたということは、全国にもPRができていないということです。もっと広報を行って注目してもらうことで発展できるのではないでしょうか。
<<全国の都道府県協会の中で今年、ただ一人の新会長です>>
当協会は昨年設立50周年の節目を迎えて新たなスタートを切り、現在104社が加盟しています。「長崎県警備保障事業連絡会」として会員4社で立ち上げてから半世紀、おかげさまで大きく成長することができました。
コロナ禍が落ち着いて社会活動が活発になり、警備需要が増加しています。会員各社は質の高い警備業務を提供し、それに見合った適正な対価を確保して警備員をしっかり育てるサイクルを作って経営基盤を固めることが重要です。
警備員が配置できないと工事が進みません。エッセンシャルワーカーとして警備業の重要性を発注者の方々に訴え、理解を得るための根気強い努力が求められます。
<<協会の事業計画を教えてください>>
警備業は「教育産業」です。警備員教育事業として、認定職業訓練事業・特別講習・公安委員会からの委託講習の実施に尽力します。
交通安全や暴力団追放、テロ対策など、関係する各団体の活動に積極的に参加します。防災については県が主催する総合防災訓練が対馬市内で5月に行われ、県警察本部などと連携した道路啓開などの訓練に参加しました。
県の「安全安心まちづくりパートナーシップ事業」に登録していて、犯罪防止の広報活動に協力しており、「警備の日」には犯罪防止キャンペーンを街頭で行う予定です。広報活動の中心を担う青年部会には現在17社18人が所属しており、今後の活動のさらなる活性化に期待しています。
4年ぶりとなる経営者研修会は、新年祝賀会と併せて開くことを計画しており、知識を深め情報交換、相互の連携を図ります。
<<長崎綜合警備の代表取締役としての取り組みはありますか>>
「採用面の強化」に向けて2点の取り組みを進めています。
ハローワークを通じて募集をかけても人材確保が難しい現状があり、「社員の紹介制度」を4月からスタートさせています。入社希望者の紹介に対価を支払い、入社した者が1年経過した時点でさらに対価を支払う内容です。
始めて4か月目で7人の紹介があり、うち4人はすでに入社、残り3人も入社を予定しています。紹介制度であれば社員の知人ですから信頼がおけますし、さまざまな面で良い効果が出ています。
もう1点は、10月に「長崎綜合警備」から「ALSOK長崎」に社名変更することを決議しました。ブランドを打ち出すことでお客さまや社会から一層認知され、採用にも良い効果が生まれると期待しています。
処遇改善という面では、給与や階級の制度を10月からALSOK本社のそれに準ずるものに変更することを考えています。役職ポストを増やす取り組みは4月からスタートさせており、社員のモチベーションが上がってきたように感じます。
DX化の取り組みとしては、社内稟議や申請関係を10月に電子化します。人事管理システムも刷新し、同時期の運用開始を目指しています。
<<協会活動と社業で多忙な毎日です。息抜きはどのように?>>
私の趣味は昔からプロ野球観戦ですが、最近はウォーキングが日課です。自宅から会社までの約2キロは雨や猛暑の日以外は、歩いて通っています。海鳥の声を聴き、潮風を感じながら港沿いを歩く、絶好の散歩コースなのです。